サーペントウィズフィートに訊いた、新作『GRIP』やヘルスケア、自己表現のアドバイス
サーペントウィズフィートの新作『GRIP』が素晴らしい。彼こと、ジョサイア・ワイズの音楽を二つの方向から定義してみると、一つにはビョークやアルカへの共感やリスペクトを感じさせる、エクスペリメンタルなエレクトリック・ビート。もう一つには、オーセンティックさとオルタナティヴさを兼ね備えたR&Bサウンドが挙げられるだろう。ジョサイアはかねがね、ブランディをフェイバリット・シンガーに挙げ、ほかにも90年代のヒップホップ・ソウルからの影響を口にしている。その一方でもちろんフランク・オーシャンやソランジュといった同世代のアーティストへの愛着の表明も欠かさない。
そうしたこれまでの彼のキャリアを経て、私たちが新作に抱いてしまう期待を、さらに上回ってきたのが『GRIP』というわけ。目が醒めるような衝撃やら目新しさがあるわけではないかもしれないが、期待はすべて受け止めてくれた。彼の音楽には今回も、サーペントらしさがきっちり刻まれている。もっと耳をすませば、音はよりエッジーに、歌声はより近くやさしく。これまでの作品の方向性をさらに進化させたものだと気づくだろう。
私が本作に抱いた興奮は、質問の中にも宿しているつもりなので多くは書かない。けれどこのインタヴューでは新作以上に、ジョサイアのパーソナルな部分にも少しながら踏み込もうとした。クィア・クラブからの影響、セルフケア、センシュアルな話題について会話するための方法。個人的な悩み相談も含めてさまざま話してくれたので、ジョサイア・ワイズという個人に迫る、またはサーペントウィズフィートの音楽の楽しみ方を広げる一助ともなれば幸いである。
(質問・文/髙橋翔哉 通訳/竹澤彩子 協力/岡村詩野)
Interview with Josiah Wise
──あなたの新しいルックは、ブルーを基調にしたダークなイメージの、目やファッションがとても刺激的でクールですね! 今回のルックにおけるリファレンスはあるのでしょうか?
Josiah Wise(以下、J):ありがとう、そんな風に言ってもらえるなんて。何しろ素晴らしいチームが後ろ盾についてるんでね。ヴィジュアル的なコンセプトを作るにあたってフォトグラファーと何時間も、今回のアルバムの中で何を描いていきたいのか密に話し合いを重ねて。アートワークに関して、僕一人がお褒めの言葉を頂戴するのはあまりにも気が引ける(笑)。それにスタイリストの尽力も大きくてね。チーム一丸となってイマジネーションを膨らませて研ぎ澄ませていったという。そこで出てきたイメージとしては、獰猛にして官能的でダイレクトに直接訴えかけるものを、と……まあ、とにかく思い描いてるものだけはたくさんあったんだ(笑)。まさにチームの協力によって生み出した作品なわけさ。
──ダークな要素だけでなく、ファンタジーやスピリチュアルのような雰囲気も感じます。現実や、地に足のついた生活から離れていきたい欲求はありますか?
J:そこまで極端に振り切れることもなく……自分的には、イマジネーションとも健康的な距離感を保ってるつもりだけど(笑)。浮世離れしてるかどうかはわからないけど、イマジネーションも自分にとっては日常生活の一部であって。それをできるだけ自分の音楽のほうにも還元するようにしてる。日々驚きの連続であって……神秘とか目に見えないものの存在を実感するような出来事に溢れていると思うから。
──2023年が終わり2024年になりましたが、去年よく聴いた音楽やアルバムを教えてください。
J:たくさんの素晴らしい作品が2023年にもリリースされたのはたしかで、とはいえ、今自分が去年何を聴いてたのかなって考えてるところで……SZAのアルバムをよく聴いてたけど、2022年に出たアルバムだからな……あとはヴィクトリア・モネかな、『JAGUAR II』が出たのはたしか昨年だよね。あとはBrent Faiyazとか。うん、だから、SZA、ヴィクトリア・モネ、Brent Faiyazの三者の作品を挙げるかな。
──それらの音楽に対して、新作『GRIP』はどのような位置づけの作品といえますか?
J:今言った3人の何が好きかって、ストーリーテリングの可能性の限界を押し広げているところ。そもそも3人とも優れたソングライターでもある、しかも感情の奥深くの底辺の部分を突いてくる。それが気まぐれな形だったり喜びに溢れてたり内省的だったり、不意打ちでものすごくユニークな角度から訪れる。そしてそこから最終的に導き出された結論もまた独自にしてユニークで……自分の作品からも願わくはそれに近い空気を感じ取ってもらえたら……何かしら独自の視点やストーリーテリングの可能性を感じてもらえたらいいなと。あの3人のレベルに自分が少しでも近い距離にいることを願いつつ。
──前作『Deacon』は落ち着いていてスウィートな作品でしたが、『GRIP』は「Rum/Throwback」や「Hummin’」のようにハードなサウンドが印象的ですし、歌詞もどこか鋭くて直接的です。本作の方向性はどのように狙っていましたか?
J:とにかくフィジカルなアルバムにしたかったんだ。腹の底に直接ガツンと響いてくるような……リズム感があって同時にガッシリと繋がってるような動的なアルバムにしたかった。『Deacon』はたしかに君が言う通り落ち着いててチルな感じであり……もちろん今回のアルバムもチルだったり落ち着いた瞬間に対しても開かれてるんだけど、そこに前回よりもサウンドとヴォリュームをプラスしたかったんだ。
今回のアルバムは親密感であり密着感や触れるときの感触についてのアルバムで……それは自分が今までに経験した感触を元にしているんだけど、それが繰り広げられるシーンはまちまちであって。公共の場でじゃれ合うカップルもいれば人目のつかないところでお互いに触れ合うカップルもいる。そうした場面についてサウンドトラックを作ってみたかったんだ。家の中でもパーティでもヴァケーション先のホテルにしろ、肌と肌が触れ合う様々なロケーションやシチュエーションを映し出していこう、というのが一応、自分の中で思い描いていたコンセプトではあるんだ。
──『GRIP』の中でも、特に「Damn Gloves」のジャージー・クラブ的なビートは意外でした! 本作の制作にはクィア・パーティーの影響を受けたと伺っています。具体的にはどんなところにインスパイアされましたか?
J:やっぱり、それに出会ったことで自分自身が生まれ変わったという経験を通っているもので。自分と似たようなバックグラウンドを持つ人達に囲まれることで自分自身が変容していったので。それは自分と同じような経験をしている人なら必ずシェアできる。言葉を尽くして説明しなくても通じ合える……それってすごく美しいことじゃないか。さらに共感し合うだけじゃなくて、それについて議論し合うこともできる。そこに至るまでの壁が最初から取っ払われてるわけだから。ある種、独特の空間が生み出されている。そこにクラブの空間でスピーカーから流れる音楽の妙が加わって、それもまた特別な空間に寄与している……そうしたもの全体に包み込まれているような感覚で。ヒット・チャートにある曲が順々に流れてくるのとは別次元のもので。もちろん流行りのポップ・ミュージックだって素晴らしいし、また別の良さがあるけどね。ただ、自分が普通に好きだなあって思う音楽は世間的にはそこまでウケが良いわけじゃないらしい、と思ってたところに、そのクラブなり空間にいる人間はみんな自分と同じでその曲がすごく好きで……その美しさであり喜びというか。
──あなたの出身地のボルティモアも、クラブ・ミュージックが盛んですよね。ボルティモア時代にもクラブへはよく足を運んでいた?
J:いや、地元のクラブ・ミュージックシーンに属してたっていう意識はとくにないけど、それでも自分と同じ世代の若者はみんな普通にクラブ・ミュージックに触れてるって感じだったから。普通に身近に溢れてるものという感覚で……ラジオでかかってくる曲もそうだし、CDやミックステープを作って共有し合うとか。少なくとも自分が地元で過ごしてた時期はそうだった。学校でも家の近所でも身近にそういう音が溢れてたし。自分もそれと同じように思春期の遊びの延長線上みたいなノリで、自分なりのクラブ音楽なるものを作ってスクールバスで流したりしてね。自分の思春期に常にそこに存在していた大切な一部みたいなものだよね。
──アルバムの中だと「Spades」が僕のお気に入りの曲です! 昔からの友人への愛情を綴ったようなこの楽曲について、制作の背景をお聞きしたいです。
J:いやもう、まさにほぼ初恋みたいな人みたいな存在との大切な思い出みたいな……それまでもずっと昔からお互いに知ってる関係で、友達同士だったのが徐々に恋愛関係に発展していったとか、あるいはすぐに付き合うようになったのかは別にして……ただ、どんなに大切な存在でも距離ができてしまうことが人生には往々にしてあるわけで、進学や就職をきっかけに別の街に引っ越したりとかね。それでもあるときに再会して、そのときいまだに自分の中にその人への愛情が自分の中に残ってることを実感する、みたいな。自分だけじゃなくて、自分の家族ですら相手やその家族のことを折に触れて思い出して「あーそう言えば、あの子今どうしてるのかなあ?」って言うような関係性というか。しかも、向こうの家族も自分に対して同じ気持ちを抱いてて……そこを掘り下げてるんだよ。それって、ものすごく美しいことなわけじゃないか。会わなくなってもう何年も経つし、今ではお互い別々の道を歩んでるとしても、それでも心の奥深くで繋がり合っている。時間が経っても、いまだに大切に思いやってるというね。その美しい気持ちについて。
──サーペントの音楽を聴いていると思うのは、人間の「声」にできる表現にはまだ限界がないってことです。最近の音楽だとアノーニやサンファ、あなたと同じくLAにいるガブリエルズもそうですし…。現代音楽やエクスペリメンタルの分野でも「声」の表現は開拓されていますよね。今挙げたようなアーティストや分野の表現にはシンパシーを感じますか?
J:ああもう、自分はアノーニの大ファンなので。サンファの大ファンでもあるし……もう、本当にね、大好きなアーティスト達だよ。そう、自分自身……おそらく自分自身の限界に挑むのが好きなんだろうね。自分の限界の範囲を少しだけ広げてみることで、向こう側に何があるのか覗いてみたい。今回のプロジェクトでやろうとしてたことがまさにそれで……それは自分が一貫して追求してるテーマであり、自分がそもそもこういうことをやってる意義なんだろうと……あえてリスクを取ること、自分の知らない世界に飛び込んで、跳躍すること……そのとき風が自分の味方をして、思いもかけない素敵な場所に運んでくれることを祈って。
──そもそも自分の声の可能性を追求するようになったきっかけは?
J:それに関しては、多くの先人達がすでにいくつもの壁を打ち破ってくれてたので……つまり、それ以前には存在してなかったはずの景色に最初から立たせてもらってる状態に自分達はあるわけで。彼らが次世代のアーティストに対してこの先に続く可能性の青写真を提供してくれてるようなものだから……それで言うなら、自分はボビー・マクファーリンやビョークについて思わずにはいられない。自分は本当にビョークの大ファンなので。あるいはレイラ・ハサウェイやブランディについて思いを馳せずにはいられない……本当にたくさんの先人達が人間の声の可能性を何度も塗り替えてきてくれたから……。
いざ自分が音楽を作るってことになったら、彼らが与えてくれたお題に対して、自分なりの回答を出さなくちゃって、長年彼らのファンをやってきたおかげで、脳味噌がそういう風にプログラミングされちゃってるわけさ(笑)。さっき言ったことと同じ理屈から、自分もそうしたことにチャレンジしてみたいと、彼らと同じように可能性の扉を開いていきたいと、最初から自分の中にそういう欲求があることに気づいてたし、それこそ今言ったボビー・マクファーリン、ビョーク、ブランディ、レイラ・ハサウェイって優れたお手本をたくさん見てきたわけだから。
──あなたが作る、楽器や声をやわらかく重ねたようなサウンドには、アンビエントっぽさを感じます。あなたがシンパシーを感じると過去の取材で話していたフランク・オーシャンやソランジュ、それから以前コラボしていたクラムス・カジノもそうだと思います。そういう空間を使った音作りの根底には、どんな音楽からの影響があるのでしょう?
J:そうなんだよ、自分はソランジュの大ファンでもあるし。フランク・オーシャンの大ファンでもあって。どちらもアイコン的存在だし、ストーリーを伝えると同時にサウンドのタペストリーを描いていくという能力が逸脱していて。 そう、それはもう確実に、2人から絶大な影響を受けてるよ。
──やっぱり空間を使った音作りというのは、ただサウンドを作り出すだけじゃなくてストーリーテリングと直結してるものなんでしょうか?
J:そうだね、どちらも自分にとっては大事なもので。今回のアルバムに関してはある特定のストーリーを伝えているわけではないとしても、それでもセンセーションとか自分が追いかけている感情を通して何かしらのストーリーを伝えようとしてるのかと……。 個人的な好みとして、激しく打ちつけるようなドラムを求めてたというか、それこそ鼓動を打つような衝撃を求めていてね。それと官能的であると同時に風通しが良いような瞬間や、1時台のクラブのあの感じ、リズムやら動きが起こってて混んでてものすごい熱気でね。その空気感を捉えたかった。だから、ストーリーテリングとサウンドの探求を同時にしようとしてる。
──あなたが2018年に『Soil』を出したころからか、R&Bやソウルには、どこかスピリチュアルだったりチルっぽい方向に向かっているような気がします。普段、音楽を聴いてチルする習慣はありますか?
J:もちろん、普通にあるよ。チル目的で他の人の音楽を聴いたり普段から……今ので質問の答えになってるのかわからないけど。
──音楽に求めるものは盛り上がるためだったりチルだったり、それぞれ違うかと思いますが。チルとかそっち系を求めて音楽を聴くことはありますか?
J:それで言うと、ときどき他の人の曲を聴きながら一体どうやったらこんな発想を思いつくんだろう?って目からウロコになることが多々あるんだよ。それが自分の想像力の可能性までも押し広げてくれる。なるほど、そういう考え方もアリなのか、と。
──健康的でいるために実践していることがあれば教えてください。
J:とりあえずジム通いをしてるし、ハイキングも好きなので。身体を動かすのが好きなんだ。趣味のワークアウトとハイキングが健康のためにしてることになるかな。
──スピリチュアルや精神面での健康を保つためにしてることはありますか?
J:ああ、なるほど。良い質問だね。静かな時間を持つようにはしてる……それこそ自然の中に身を置いたりして。それは本当に自分の心の健康を保つのに役立ってるよ。ただ自然の静けさの中に身を置くことで自分の心を落ち着かせるようにはしてる。本当にね、自分の心と体を整えるためにすごく役に立ってるよ。
──あなたのようにパーソナリティをオープンにして表現していると、時には、あなたの言う「expansiveな」人びとのアイコンや代弁者として期待されることもあると思います。そういう役割を引き受ける意志は、ご自身の中にもあるのでしょうか?
J:いや、そんなのおこがましいというか、自分はそんな大それたものだとはこれっぽっちも思ってなくて。それにふさわしいアイコン的な人達が他にたくさんいるわけじゃないか。それこそさっき話にも出たフランク・オーシャンにしろ、リル・ナズ・Xにしろ、 ソランジュなんかにしろね。そうした人達こそまさに今言ったような代弁者であると思うし……自分がそういう役割を引き受けてるとは思わないけど、ただ、どうなんだろう……自分が目指してるところとしては、限界まで自分をさらしてやろうじゃないかと。うん、そういう覚悟で表現に臨んではいる。
──アイコンというと大げさかもしれませんが、ご自身の表現を通して、そうした人々に勇気を与えたいという気持ちはありますか?
J:それはもう、全面的に背中を押したい気持ちであるし。自分がやってる音楽なり姿なりを通して、その人自身の全体像というか、本来持っている可能性に気づいてもらえたらと……自分がやってることは、ただその人の持っている投影しているだけに過ぎなくて、誰だって無数の可能性を内に秘めている……つまり、完全に切り離された世界の中でこれをやってるわけじゃないから。自分がこうやって表現できてるってことは、その先にいる誰かの可能性にも繋がってる……。
自分の人生で直接関わりがなくても、同じ空間なり立場なりを共有し合ってる人達の姿を遠巻きながら見てきて、自分がこうやって自分自身を表現できているのは、コミュニティの存在があってこそなので……それがあるからこそ自分が今やってる表現であり、そこから生まれるコミュニケーションが成り立ってるわけで。ならば、こちらも自分の中にあるものすべてをさらけ出してやろうじゃないかと……自分だけの狭い世界の外には、もっと大きな全体像が存在していて、その一員として自分なりにどういう貢献ができるんだろう? という、まさにそういうところだよね。
──サーペントの歌詞にはエロスが重要な要素だと思います。『GRIP』の楽曲でも「Damn Gloves」をはじめ、欲望や愛情をありのまま歌っていますね。日本ではそうしたテーマについて会話することには消極的です。そこで、官能性を含めた自分の内面をうまく表現するためのアドバイスがあればいただきたいです。
J:なるほど……まず、今のような質問を投げかけてくれて感謝だよ。今の質問を聞いて、そのへんの日本の温度感みたいなものを初めて耳にした、みたいな感じだから……そんな日本に対するアドバイスと? ……そうか(笑)、いや、自分はそれに関してアドバイスなんて言える立場では全然ないんだけど、そうだな……他人からどう見られてるかよりも、自分は自分についてどう思ってるのかのほうが大事ってことだよね。
さっきも言ったように、自分は日本に住んでいるわけでもないし、そのへんの体感がどうなのかわからないから何とも言えないんだけど。それでも日本の人達に限らずこれは伝えたいなと思うのは、自分の考えてることのほうが他人の目よりもよっぽど重要だってこと。だからこそ、本当の自分自身に目覚めなくちゃ。本当にね……ただ自分のことを大事にして、ありのままの自分に正直にあること……で、何が自分にとっての真実かってことは人それぞれによって違うわけだから、答えは一つじゃない。
──自分の中にあるエロスとか欲望とかセクシュアリティを受け入れるっていう部分に関してはどうですか?
J:それに関しては、仲間を見つけることじゃないかな……自分と同じ気持ちを抱えてる同類と巡り会うこと。自分一人じゃないと思えるとき、それが自分の支えとなりパワーとなってくれる。それが5人となり100人となったときにもっと大きな力となる。自分は何者でもないけど、ただ自分として存在してるだけでその力があるから。自分からまわりに発信することによって。自分が友達に「自分は男の人と付き合ってるよ」って言ったら、「あ、そうなの、実は自分も」って、そこから広がる。しかも、そんな自分みたいなのが世の中にはうじゃうじゃいるんだから(笑)。それだけ心強い味方がいるってことさ。
──最後にもう一つだけ。今の話の続きですが、あなたには明確なロールモデルがいるようには思えないほどすべてにおいてオリジネーターな存在だと思います。そんなあなたの心の支えになるような先人達がいるとしたら教えてもらえますか?
J:うわあ、そんな風に言ってもらえるなんて、光栄だなあ。ロールモデルはたくさんいるし、たくさんのインスピレーションをもらってるよ。それこそ、さっきからちょいちょい名前を出してるビョークなんてね! 自分にとってはものすごく大きな存在なんだ。あるいはバスタ・ライムスにミッシー・エリオットなんかにしろね……うん、今言われて最初に思い浮かんだのは、その3人だね……ああ、それにジャネット・ジャクソンも! 音楽的にもファッション的にもあらゆる面において、彼女の存在自体が大胆な主張として成立してる。
自分は今言った人達の音楽を聴きながら育ってきたようなものだから。それこそ当時のバスタ・ライムスやミッシー・エリオットのPVを観返すと凄いんだよね! R&Bとは何か、ヒップホップとは何か、ポップ・ミュージックとは何かの概念にガンガンに挑みまくってる。衣装からしてジャージ姿で登場したかと思えば、宇宙人みたいな恰好で現れたり(笑)、子供の頃からそれを観てきたってことは自分にが音楽活動をする上ではそれが自分のデフォルトになっちゃってるんだよ! 普通にスーツ姿でステージに立って歌うだけじゃ全然物足りない。彼らのせいでそういう風にプログラミングされちゃってるわけだよ(笑)。
<了>
Text By Shoya Takahashi
Photo By Denzel Golatt
Interpretation By Ayako Takezawa
serpentwithfeet
『GRIP』
LABEL : Secretly Canadian / BIG NOTHING
RELEASE DATE : 2024.2.16
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