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HOGO地球: CHEESE HOLIDAY

2025 / potton records
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でっち上げたような夢も、口から出まかせでもいい

04 June 2025 | By Yasuyuki Ono

何かが起きると、いたるところから実証的データと数的データをもとにしたファクト・チェックが巻き起こり、そこから零れ落ちたものは認識の外に放り出されてしまう。まるで存在すること自体が許されないように。そんな“正しさ”が支配する世界のなかで、音楽聴取におけるサブスクリプション・サービスとYoutubeの浸透は、アルゴリズムと再生数の論理が浸透した世界、すなわち富める者は富み続け、ライブラリの片隅にいるものはその範疇に留まるという極端な世界をもたらした。そのような“正しさ”や“常識”が支配する世界の中で、その既存の論理を斜めにずらすような、“いかがわしさ”や“得体のしれなさ”を保った音楽にしか出せない輝きをいつも求めてきた。トリプルファイヤー、田中ヤコブ、ザ・クロマニヨンズ、onett、例えるならそんな音楽を。

東京周辺で活動する二人組バンド、HOGO地球もそのようなポップ・ミュージックが持つ“いかがわしさ”を体現したような存在だ。彼らの最新作である本作では、ビッグ・スターやシューズのようなスウィート・メロディーをまとった、ペイヴメントやザ・ピロウズを思わせる肩の力を抜いたオルタナ、ギター・ロックが、意味を脱臼させたナンセンスなリリックを乗せて、目の前を次々と通り過ぎていく。どの楽曲も一分から二分間のショート・チューンで構成されていることも特徴的で、それが彼らの音楽から感じる“軽やかさ”を支えている。さらには、台風クラブ「台風銀座」を想起するスカ・カッティングが気持ちいい「勉強が足りてない」や、会話音声の挿入やエキゾチックなテイストを盛込んだモンド・ポップ・テイストの「5時まで男」、ザ・ハイロウズ「ミサイルマン」のように弾け飛ぶパンク・ナンバー「プライム」と楽曲の色彩も豊かで、13分という作品の総時間以上に充たされたミニ・アルバムになっている。

かつて小学生の頃に夢中で見た『藤岡弘、探検隊』の、どう見てもスタッフが仮装した未確認生命体や、発泡スチロールで作られたとしか思えない軽快に転がる巨大岩石のような、『奇跡体験アンビリバボー』で流れた、その夜はテレビのあるリビングから寝床へ向かう1m80cmの道でさえ怖くなる心霊写真や怪奇現象のような、うさんくさく、いかがわしいくせに心のどこかにいつも残っている、そんな“楽しい”音楽をいつも探している。「俺はエジソンのひ孫/ライト兄弟の秘蔵っ子」(「エジソンのひ孫」)、「替えのパンツ忘れたよ/浜名湖ドライブ」(浜名湖ドライブ)。意味を、理解を置き去りにして駆け抜ける、2分間のロックンロール。無条件肯定。大大大正解です。(尾野泰幸)

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