Review

Foster The People: Sacred Hearts Club

2017 / Columbia / Sony Music Japan
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ポップとメンラコリー、娯楽と諦念が融合したシェルターとしての作品

26 July 2017 | By Hiroko Aizawa

 身の周りの出来事に対して無関心な人々への警鐘を込めた前作『スーパーモデル』から3年が経ち、世の中は、誰もが自分の周りで起きている出来事に対して関心を持たずには居られない様相へと変化してきている。そしてフォスター・ザ・ピープルというバンド自身も、大きなメンバー・チェンジを経た。これまでの作品同様、彼らの特徴である高揚感に溢れ、ポップでダンサブルなナンバーは健在。しかし、今作に関しては前作のようなメッセージ的要素よりも、シンプルに曲を楽しませることに徹しているように感じられる。曲のヴァリエーションはこれまでになく豊富で、ヒップホップやベース・ミュージックを軸としたものも増えており、そういった曲やインタールードを挟むことによって、アルバム全体に緩急が生まれ、曲単体というよりは、作品全体として聴かせるような構成になっている。それと同時に、全体を通して漂うメランコリックなメロディには、やはり現在の社会に対する怒りや諦念が感じられるのも特徴だ。「Loyal Like Sid And Nancy」では、現在のアメリカの難民を受け入れない閉鎖的な姿勢や過剰な資本主義を曲名の通り、シド&ナンシーの絵に描いたような破滅やかつてのローマ帝国になぞらえてストレートな批判を呈しているのも事実。そうした隠しきれない怒りを表現しつつも、『セイクリッド・ハーツ・クラブ』というタイトルにも見られるように、純粋な心を持った人々が安らげるひとつの場所を提供する、シェルターのような作品だ。(相澤宏子)

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