Review

MGMT: Little Dark Age

2018 / Columbia / Sony Music Japan
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より複雑さを増したMGMT流ポップの帰還

15 February 2018 | By Hiroko Aizawa

「え?これ80年代の曲じゃないよね?」と思わず言いたくなるようなエレポップ調のキラキラしたシンセ・サウンドで幕を開けるMGMTの5年ぶりの作品。「ポップでサイケなMGMTが戻ってきた!」と一瞬思ったのだが、続く「リトル・ダーク・エイジ」や「ホエン・ユー・ダイ」等は、アッパーな曲調ながらもダークなメロディで歪な雰囲気を纏っている。

2007年のデビュー作『オラキュラー・スペクタキュラー』で「キッズ」、「エレクトリック・フィール」、「タイム・トゥ・プリテンド」という圧倒的なキラー・チューンを産み出してしまったがために、バンドに変化は付き物のはずだが、実験性を強めマニアックな音を追求していった彼らにリスナーも追いつけず、「こんなのMGMTじゃない」と受け入れがたい存在になってしまっていた。そして彼ら自身も、周囲が期待するようなポップな曲はもう書けないと悟ったかのように活動休止期間に入り、このままフェードアウトかな…と存在も忘れかけていた頃に届いた今作である。

しかし、今作は単なるサイケでポップなMGMTの帰還ではない。ポップなサウンドよりも、そこに乗ったメランコリーなメロディや、チルウェイヴ的な曲を覆う気怠さと耽美が合わさった雰囲気の方が印象的であるし、そこにSF映画のサウンド・トラックを彷彿させるような昔ながらのシンセ・サウンドが融合したような曲もあり、かつてのMGMTにはない複雑な構成になっている。

ラスト曲の「ハンド・イット・オーヴァー」は、ずばりトランプ政権誕生についての歌だそうで、「その冗談は使い古されて、王様が登場した」、「賢い人たちは早く去ってしまう」など痛烈な言葉も登場する。こんなご時世だからこそ産み出された、単純に明るく楽しければ良い、で終わらないMGMTの新しいポップの形がここにある。とは言え、特に政治的な含蓄がある作品という訳ではなく、友人に宛てた他愛もない日常的な内容の曲もある。大ヒットと停滞の双方を経験し、デビュー当時同じ括りで語られていたヴァンパイア・ウィークエンドが知的に音楽性を追求し飛躍していくのを尻目に、大きく変わりつつある世間を大袈裟に悲観することも楽観することもなく、冷静で力むことのない姿勢で音楽を作ることにシフトし始めた。(相澤宏子)

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