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Hazel English: Just Give In / Never Going Home

2017 / Marathon Artists / Tugboat Records
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ドリーミー・サウンドの中でノスタルジーを演じる、絶妙なシンガーソングライターの登場

12 July 2017 | By Nami Igusa

 知らないはずなのに懐かしい。低音から高音まで柔らかでスムースなメロディラインと歌声。カーペンターズだ。ヘイゼル・イングリッシュは、インディー・ポップに“古き良き”ポップスの輝きを再現できる新たな才能だろう。

 カリフォルニア発のモダン・デザインが所謂“アメリカ的なライフスタイル”を築いた時代を思わせる、レトロなファッションを徹底する彼女は、実はオーストラリア出身。けれど現在住んでいるアメリカ西海岸の典型的なイメージを強烈に植えつける。そう、彼女はデイ・ウェーブのプロデュースによるきめ細やかなドリーミー・サウンドに身を置きながら、カリフォルニア・ガールを見事に演じ切っている。それと同じように、彼女は自らを“インディー・ポップ”と断言しながら、一方で親世代のアバやビー・ジーズへの敬愛も隠さないメロディラインを書き切っているのだ。それは裏を返せば、自身が音楽に投影しているそれらにとって、本来は自分は当事者ではないという事実に自覚的だということ。でなければ、こんなに開き直れない。

古き良き西海岸のカリカチュアと70年代的なポップ・センスが結びつき、カーペンターズを思い起こすのに一役買っているとすれば、それが彼女の大きな武器。ふわりとしたサウンドの中にも間口の広さを感じさせる、絶妙なシンガーソングライターの誕生だ。(井草七海)

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■ヘイゼル・イングリッシュ OFFICIAL SITE
http://hazelenglish.com/

■タグボートレコードHP内 アーティスト情報
http://www.tugboatrecords.jp/6192

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