Review

Le Makeup: はじまり

2026 / AWDR/LR2
Back

どこから来たか、ではない、何をしているか、でもない

20 June 2026 | By Haruka Sato

順を追って、間を飛ばさずに、曖昧にしないで、歌われる。ひとつひとつの出来事が連続していると確かめるように、風や空や海、僕、君が関係し合っていると確かめるように。やや前のめりで速度感のあるアルペジオ的なハーモニーは、そうして今をつなぎ合わせ、過去と未来の広がりをもった時間を巻き込んだ渦となり、たとえば海を見るときそこに生命の大きな大きな時間を見せるのだ。そこで、今ある景色も1000年前にここにあった景色も、僕らも、知らない人も動物も植物も、分解され一音ごとに刻々と変化する響きのように関わり合っていて、だからこそ君によって存在する僕を発見する。そのときあらゆる出来事が分有される。「あなたみたいに」(2024年)で巡らせていた思いや願いは部分的にすでにそうだったのであり、僕らの目に映るのは誰にも見れないものであり、違うかたちで誰かが見ているものでもある。

自分たちの範囲を定めて優先する姿勢は、自分たちより前に生きていた人々を、自分たちが死んだ後に生きる人々を、今生きている自分たち以外の人々の生を軽視する。自分たち以外の経験、思考、感情を考えの範疇から外し、個々人の生とそれらが重なり絡み合い自分が生きる場が形作られてきたことを無視し、つまり時間を都合よく切り分ける。そのように細切れにされそのまま留め置かれた時間を、この曲は拾い上げ、つなぎ合わせ、再び動的にする。

言葉で現実をそのまま写し取ることはできず、そうしようとすれば現実は静止してしまうし、だからこそどう見たいかどう考えたいかを描けてしまう。そうやって戸惑ったことを、美しいと思ったことを、私たちは忘れる。しかし確かにあったということは渦の中で揺蕩っていて、そうした数多の生の中に私の生がある。(佐藤遥)


関連記事
【INTERVIEW】
大阪の南、太陽の西、傷跡は隠したまま
Le Makeup『予感』 ロング・インタヴュー
https://turntokyo.com/features/le-makeup-yokan-interview/

【INTERVIEW】
自分と世界、その圧倒的な違いを感じる瞬間を音楽に
Le Makeupが『Odorata』で歌う“せめぎあい”
https://turntokyo.com/features/le-makeup-odorata-interview/

【INTERVIEW】
「どっちつかずなところが自分たらしめている」
Le Makeupが境界線上から放つ音、言葉、微熱
https://turntokyo.com/features/le-makeup-interview/

【REVIEW】
Le Makeup『微熱』
https://turntokyo.com/reviews/binetsu/

More Reviews

THIS MUSIC MAY CONTAIN HOPE.

RAYE

1 2 3 89