Review

Various Artists: Allopoietic factor

2018 / φonon / SKATING PEARS
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聴く者に謎と興奮をもたらす“異種活動報告書”

06 July 2018 | By Shinpei Horita

EP-4の佐藤薫によるインディー・レーベル《SKATING PEARS》から、新たにサブ・レーベル《φonon》(フォノン)が誕生したのが今年2月。第一弾としてリリースされたEP-4[fn.Ψ]とRadio Ensembles Aiidaの2タイトルが静かな話題を集めたのも記憶に新しいが、このほど第二弾として次なる2作品が発表された。その1枚がオムニバル・アルバム『Allopoietic factor』である(もう1作品は東京在住の森田潤による『LʼARTE DEI RUMORI DI MORTE』)。

レーベル初のコンピレーションでもある本作は、EP-4本隊にもキーボーディストとして参加、現在はEP-4[fn.Ψ]における佐藤薫の重要なパートナーとなっている家口成樹(PARA、kruispunt他)の選曲/編纂によるユニークな内容。ラインナップとしては《φonon》のレーベル・カラーにも沿ったエレクトリック、アンビエント、ノイズ系の音楽家たちが中心。普段、こうしてまとまって聴くチャンスがなかなかないだけに気づかれにくいが、間違いなく現在、最も面白い音楽家たちの一角がここに集まっていると言っていい。

とは言ってもこの作品は、新人アーティストや新世代の音楽家の発掘を目的にしたものではない。結成自体が比較的最近のユニットなどが中心ではあるものの、テンテンコとZVIZMOを組む伊東篤宏や、4TLTDとして新たに活動の場を展開するRUBYORLA、そしてもちろんレーベル首謀者のEP-4[fn.ψ]の佐藤薫ら、長いキャリアを持つ面々も参加している。だが、そこに世代の乖離はまるでない。むしろ、テクノ、クラブ・ミュージック、実験音楽の狭間を行き来するようなストレンジな音楽性で貫かれており、このオムニバス・アルバムにミステリアスな雰囲気をもたらしている。

さらに、ここには関西在住の音楽家が多く揃っている(ZVIZMOとRadio ensembles Aiidaは関東)。そもそも家口自身が京都を中心に活動している音楽家。大学時代から花電車やdrillmanなどで活動し、今や歌もののアーティストのバックアップやプロデュースまでつとめるそんな彼が、その目と耳で触れ信頼できる音楽家たちを集めたからこそ説得力抜群だ。例えば大阪の《難波ベアーズ》《environment 0g》《hopken》、日野浩志郎(goat)主宰のカセット・レーベル《birdfriend》神戸の《汎芽舎レコード》《space eauuu》京都の《UrBANGUILD》《外》《ヒト族レコード》といった関西のアンダーグラウンド音楽シーンのカギとなる場所とももちろん無関係ではない。ZVIZMOやRadio ensembles Aiidaといった関東勢も密接に関わるこれら関西の現場を感じさせる作品でもあるという事実……。

タイトルにある“Allopoietic”とは、“異種の産出”やそのシステムを説明する際に用いられる“アロポイエーシス”からだと思われるが、そうなると本作は異種混合を表出させた作品であるとも言える。そしてそれが、ぼんやりしたものなどではなく、“factor”=要因の一つとして、厳然と今ココで鳴らしているという人の姿と場所がはっきりと感じさせるものとなっているのが特徴だ。『Allopoietic factor』は世代やジャンルで括るもしくはそういったものを作り出すためのコンピレーションではなく、様々なプロジェクトやバンドに参加し多くの現場をその目で見てきた家口によって記された、様々な境界の狭間で蠢く異種たちの存在を観察し世に公開する報告書なのである。(堀田慎平)

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