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「パンデミックにアニマル・コレクティヴの在り方を変えさせたくはない」
約6年ぶりの新作『Time Skiffs』
パンダ・ベアが語るポップ・ミュージックとの距離、揺るぎない自負

04 February 2022 | By Shino Okamura

かつてのブルックリン勢は今厳しい。あちこちでそんな話が囁かれているが……まったく嘆かわしいことだ。内輪受け的な(あるいはおタク的な)ムードや、決して高いとは言えない演奏スキル(バンド・アンサンブル)ゆえに、どうしてもチャイルディッシュに解釈されてしまう……このアニマル・コレクティヴなどはまさにそんな扱いの前に、確かにとりわけこの10年ほどの間、逆風の評価に立たされ続けてきた。けれど、創意工夫を凝らしたアイディア溢れるサウンドと、洒脱で時にはファンタジックでさえあるリリックとが合流した万華鏡のような音世界を得意とする彼らの妄想力溢れるミュージシャンシップが、実はユーモアが最も必要とされるポップ・ミュージックの、決して順風満帆とは言えなかった2000年代に飄々と風穴を開けてきたことを我々は知っている。その風穴がインディー・ロック、ブラック・ミュージック、クラブ・ミュージックとの境目をジワジワと広げたことも。そうしたハイブリッドなポップ・アマルガムの在り方にワクワクしたのは一体誰だ? 

アニマル・コレクティヴが我々の前に登場してからもう20年以上が経過している。彼らの存在が広く知られるきっかけとなったアルバム『Feels』から17年、《Domino》移籍第一弾作『Strawberry Jam』から15年、そして全米13位を記録し過去最高のセールスも獲得した『Merriweather Post Pavilion』からももう13年が経った。だが、メンバー個別の充実した活動が見えないところでこのバンドの進化を大きく後押ししてきたのがこの10年だ。約6年ぶりとなるニュー・アルバム『Time Skiffs』は全9曲を収録。これまでの彼らの作品の中では珍しくコンパクトで曲数も絞られている。もちろん、1曲が6~7分程度のものも多くあるが、音数や音色で彩ることよりかなり音そのものを重く引き締め、一つの方向性へとフォーカスさせている作品のようにも受け取れるし、例えば常に高めに設定されていたパンダ・ベアのドラムはこれまでになく重みと厚みを讃えていて、ダブやレゲエを好む彼の本領がここにきて発揮されていることも聴き逃してはなるまい。現在はポルトガルに暮らすパンダ・ベアことノア・レノックスに話を訊いた。
(インタビュー・文/岡村詩野 通訳/原口美穂)

Interview with Panda Bear

──2020年はアルバム・デビューから実に20年の節目でした。そこで、新作の話に入る前に、まずは簡単にこの20年ほどを振り返っていただきたいのですが、様々な紆余曲折を経たあなたがたの進化、飛躍は、そのままポピュラー・ミュージックのこの20年の紆余曲折を経た歴史に重ねることもできるように感じます。アニマル・コレクティヴの20年もの歴史と、ポピュラー・ミュージックのこの20年との間で、合流したポイントはどのあたりだと思っていますか?

Panda Bear(以下、P):確かにポップ・ミュージックは変化したよね。ここ20年だけでなく、70年代くらいからずっと変わってきたと思う。ジェームス・ブラウンあたりからものすごく幅広い人々に受け入れられる音楽になって、“ポピュラー”になったんじゃないかな。当時のポップ・ミュージックは、メロディー・ミュージックというよりはリズム・ミュージックで、ビートが重要視されていた。今現在もその傾向があると思う。今はヒップホップやR&Bがポピュラー音楽界で主要になっているからね。だから、僕にとってポピュラー・ミュージックというのは、ビートに駆り立てられ、リズムにフォーカスが置かれた音楽なんだ。MCやラップだってリズミックだし。そこに僕らが合流したというか、距離が近くなったのはいつかな……僕らはメインストリームに100%達したことはないけど、多分『Merriweather Post Pavilion』(2009年)が一番そこに近づいた作品だと思う。完全にではないけど、ポピュラー・ミュージックと共通点はあったと思うね。その次は、もしかしたら『Sung Tongs』(2005年)かな。当時のポップ・ミュージックでは、フォークっぽい、ギターサウンドが流行っていたから。でも、それは意識したものではなく、自分たちが製作時に興味を持っていることが自然と繁栄されたもの。コーチェラのメインステージに立てたのは、『Merriweather Post Pavilion』の成果だったと思う。でもその時のステージで新曲を結構演奏したんだけど、それはあまり好意的に受け入れられた感じがしなかったんだ。まあ、それがアニマル・コレクティヴなんだけどね。コマーシャル的により良いのか良くないとかは関係なく、自分たちが進みたい方向に進む。それが僕たちのあり方だから。

──あなた方が登場した頃は、メンバーの名前もロクに明かされず、姿形もよくわからない、言わばアノニマスな存在でした。しかし、次第にあなたやエイヴィー・テアがそれぞれ個性的なソロ作を発表するようになり、特にあなたは本当に多くの作品をリリースし、プロデュースやリミックスなども手がけるようになりました。今や、アノニマスだった頃が信じられないほど、あなたという存在は「個」が明確なアーティストです。そしてもちろんアニマル・コレクティヴはそうした「個」の集まりであることが実感できるようなバンドになりました。こうした変化、進化によってもたらされたもので、今のアニマル・コレクティヴに最も大きなフィードバックとなっているのはどういうものだったりしますか?

P:いやあ、それは特にないかな。僕らにとって、まずメンバー一人一人が個々に音楽を作って、それを持ち寄って音楽を作るというのは最初から変わらないから。バンドがスタートした時はアノニマスな見え方もあったかもしれないけど、個々のアイデンティティというのはバンドにとってずっと重要な役割を果たしているんだ。このバンドが長く続いている理由もそこにあると思う。メンバーが個々とバンドを行き来しているからこそ、バンドを長続きできているんじゃないかな。ずっと同じことをやり続けるのではなく、行き来することで新鮮な気持ちが保たれるから。僕以外のメンバーがどう思うかはわからないけど、僕個人は、自分がソロの活動で学んだことをバンドに持って行き、逆にバンド活動で学んだことをソロ活動に持っていくことを楽しんでいる。個々が重要視されているからこそ、アニマル・コレクティヴのメロディやサウンドが面白さを保ち続けることができてるんだと思うね。僕らそれぞれが異なることに興味を持ち、影響され、それを時々皆で共有する。それが僕たちをダイナミックでエキサイティングで楽しいバンドにしてくれているんじゃないかな。

──あなた自身、ここ数年、非常に多くのソロ・ワークを手がけています。Spotifyのあなた自身によるソロ・ワークを集めたプレイリスト《Panda Bear 2000 – Now》を聴いているとあまりに音がパースペクティヴで鮮やかで心地よい目眩を起こしそうになります。ソランジュやティーブス、ソニック・ブームやエンジェル・ダストのリミックスもありました。こうした自身のソロ・ワークに何かテーマ、キャッチコピーをつけるとすれば、どういうものになりますか? あなたが創作する音の「個」は、自身で言語化するとどのようになりますでしょうか?

P:僕のソロの作品は、いつも歌、特に合唱の要素が入っている。僕自身がハーモニーやヴォーカルが何層にも重なったサウンドが好きだから。あとはリヴァーブも僕のソロ作品で共通している要素だと思う。広くて何もないスペースにいるような感覚になるサウンドというか。それから、もう一つはリズムかな。料理に例えるなら、それらが僕のソロ・ワークにおける肉やポテトといったメインの材料。そこに他の調味料を加えて味に変化をつけているをつけている。毎回同じ味じゃ飽きてしまうからね。

──さて、アニマル・コレクティヴとしての話に移りましょう。昨年、コロナ禍においてEP『Bridge To Quiet』をリリースしています。7分台~10分台くらいの曲が4曲、いずれも非常に精緻でエクスペリメンタルでサイケデリックですが、これはそもそもどのような作品として制作されたものだったのでしょうか? また、このEPで、あなたはどのような役割を果たしていたのですか?

 

P:これは聞くメンバーによって回答が変わると思うけど、僕自身にとっては、ドラムにフォーカスを置いたサウンドを作ることがメインだった。ドラムは前にも叩いたことはあるけど、あの作品では、違ったアプローチでドラムを試してみたかったんだ。あの当時の僕は、沢山のドラマーに影響を受けていたから。有名どころでいうと、クライド・スタブルフィールドとか、ジェイムス・ブラウンのドラマーとか、レゲエ音楽のドラマーたちとか。だから、『Bridge To Quiet』に収録されている曲においては、僕はそういった様々なドラムを自分でも試してみたかったんだ。あのEPは、僕らが今回の『Time Skiffs』のために練習やリハーサルをしている状態をレコーディングしたものが元になっている。だから、あのEPと今回のアルバムはスタート地点は同じようなもの。その過程での僕の目的は、ドラム・サウンドとテクニックを実験することだった。これまでのやり方とはガラッとアプローチを変え、僕なりのドラムのサウンドに変化させたんだ。あと、僕の記憶では、今までの作品で誰かがベースとギターだけを曲の中で演奏したものはなかったと思う。でも、今回のアルバムではデイヴ(エイヴィー・テア)がそれをやっていて、ジョッシュ(ディーケン)はギターを全く弾かず、キーボードだけを弾いている。つまり今回は、皆が自分なりに自分が担当するものの新しいやり方を追求した。その過程が『Bridge To Quiet』で、その結果が『Time Skiffs』なんだ。

──2021年頭にリリースされた、『Crestone』のスコア/サントラのリリースも重要な1作です。コロラドの孤独な環境でマリファナを育てながら音楽を作るサウンドクラウドラッパーたちを追ったドキュメンタリーでしたが、これはメンバーのディーケンが監督のマーニー・エレン・ハーツラーと懇意にしていたことがきっかけのようですね。

P:それはブライアン(ジオロジスト)とジョッシュだけが関わった作品だから、僕にはわからないな。でも、すごくクールな作品だよね。僕は作業に参加していないから詳しくはわからないけど、彼らが作品の制作を始めたのは、多分2年半前くらいじゃないかな。彼らが監督と友達で、それがきっかけだったと思う。

──つまり、EP『Bridge To Quiet』と『Crestone』から今回の新作に至る流れを整理すると、『Bridge To Quiet』の時点から既にアルバムの音作り、曲作りは始まっていて、様々なコラボに立ち寄りながら新作へと繋がったということですね。

P:そうだね。EPとアルバムは、確かに同じような場所と時間で始まった。『Bridge To Quiet』は僕らがただ部屋の中で演奏しているものを録音したローファイのレコーディングしたものに少し手を加えたもので、完全に即興とは言わないけれど、アルバムよりはもっと直感に従ったものになっている。それに対して『Time Skiffs』の曲は、それらのアイディアを元にしっかりと時間をかけて音を作り、アレンジを考えてできた曲が収録されているんだ。EPは、このやり方、この方向でいったらどうなるかという実験で出来上がった音。アルバムは、それが分かった上で作られた曲、といった感じだね。だから……そう、曲作り自体は2018年頃からになるかな。結構前なんだ。

──では、アルバム自体のレコーディングを始めたのは?

P:2020年の夏だったと思う。全てがリモートだったんだ。アルバムのために出来た曲はもっと沢山あったんだけど、その中から僕たちがリモートで作業できると思った作品が『Time Skiffs』に収録されている。そのために、リズムがより一貫しているものを選んだんだ。制作は、僕らのうちの一人がリズムトラックを作ったりクリックに合わせてプレイして、他のメンバーがその上に演奏を重ねていく、といった流れだった。だから、アルバムに採用された曲は、メンバー同士が離れていても完成させレコーディングさせることが可能だと僕らが判断した曲のセレクションになんだ。

──コロナの影響はどの程度受けたと言えますか?

P:時間が普段よりもかかったことくらいかな。それだけだと思う。そんなに大変だとは感じなかった。逆に、2年の間で3、4回しか集まらなかったんだけど、会う前に個々で十分に作業をしていたから、会って演奏する時に何をすべきか、演奏する音がどんなサウンドになるかが把握出来ていたのはよかったと思う。会う前に十分に時間がとれていたから、会う時にはしっかりと準備が出来ていたからね。ただ、制作前にどういう会話をしていたかは覚えてないんだ。メンバーそれぞれがその時に何に関心があるかという会話はしたんだろうけど。大抵の場合、皆それぞれ自分が関心があるテーマを持ってきて、6~7つくらいアイディアが集まる。で、作業をしていくうちにそれが2~3個に段々絞られていくんだ。でも、それが今回それが何だったかが本当に記憶にないんだよね。今回は、そのアイディアを皆自分の中でいつもよりもキープしていたのかもしれない。でもさっき話したように、ドラムのアイディアは僕が持っていたものだった。それは、僕が個人的に描いていたヴィジョンだったね……うん、僕がメインでアイディア出しをしたのはやっぱりドラムだな。少しソングライティングとオーバーダブをやったりもしたけど、それはあまり大きな仕事ではなかったと思うよ。ディーケンはキーボードとボーカル、ジオロジストはサンプルとパーカッション。エイヴィーはベースとボーカルとソングライティングって感じ。

──先行曲でもある「Prester John」はあなたとエイヴィーがそれぞれ作った異なる2つの曲を合わせる形でできたものだそうですね。確かにあなたらしいリズム……ダブの要素が前半を牽引し、エイヴィーらしいアシッド・フォーク~サイケ指向が後半で存在感を発揮している非常に興味深い構成の曲です。他にも合体、融合、導流させていきながら完成させた曲はあるのでしょうか?

P:「Prester John」は、もともとはその2曲を組み合わせる予定ではなかったんだけど、組み合わせたらすごく相性がよく、お互いの存在を高め合うことがわかって繋げることにしたんだ。でも、その作り方で出来たのはその曲だけ。他の曲は、メンバーのうちの誰かがラフなデモと歌詞を持ってきて、そこから発展させていく感じだった。ただ、歌詞は最後の方には結構変わったな。曲自体も作る過程で進化していくものだしね。今回も、まるで曲が生きているような感じだった。だから、曲を書き終えたという感覚がなかなか得られたかったんだ。常に自ら形を変えて成長していくような感じがして。実際に演奏してみるとまた違うものに感じられたりもしたしね。

──歌詞の変化……?

P:いや、だからってコロナによって……とかっていうのはなくってね。僕たちは、自分たち自身が楽しめる作品を作ること。意識しなくても、自分たちが楽しみ続けていることで、必然的にメンバー同士やバンドとリスナーの皆が一つになることができていると思う。だから、その火を絶やさず燃やし続けたいんだ。作らないといけないものを作るというよりは、その作品を作ることを楽しむことが重要だと思う。それによって、リスナーの皆も作品を聴いて楽しむことが出来るんじゃないかな。皆に楽しんでもらうこと以外は、特にパンデミックだからこういう作品を作った方がいいんじゃないかという命題のようなものはなかったと思う。パンデミックにアニマル・コレクティヴの在り方を変えさせたくはないしね。歌詞の変化そのものも、そういう意味では今回に限ったことじゃないかな。

 

──そもそもあなたがたの曲は一つのリズムで大きなグルーヴを作るのではなく、非常に細かくリズムをチョップしていくことで独自の重層的なウネリを醸し出していくとうスタイルが基本ですが、今回のアルバムは思いの外シンプルな作法のようにも聞こえます。

P:そう、実は今回のセットアップは、昔ながらのバンドのセットアップだったんだ。でも、実はそれこそが僕らのバンドがこれまでにやったことのないアプローチだったんだと思う。サウンド自体がトラディショナルになったかはわからないけど、今回のセットアップ自体はこれまでと比べて“ノーマル”だった。もちろんそれはいい意味でね。そうなった理由は……これが説明できたらいいんだけど自然の流れでこうなったとしか言えないんだよね。

──今回のアルバム・タイトル『Time Skiffs』ですが、Skiffはオールなどで漕ぐ小舟を意味する言葉ですね。Timeがつくことで、大きな時間の流れの前には小舟はただ身を任せるしかない、というようにも読み取れます。つまり、自然な流れで昔ながらのバンドのセットアップで“ノーマル”な形になった、というような解釈に繋がりそうな。

P:ああ、アルバムの曲、一曲一曲が小さなボートなんだ。その船が、自分たちを他の場所に連れて行ってくれる。僕自身、自分のマインドを他の領域へ連れていってくれる音楽が好きなんだ。どこかへ誘われているような感覚になれる音楽がね。このアルバムの曲も、船で旅をさせてくれるような曲という意味を込めてこのタイトルにしたんだよ。Time=時間という言葉をつけたのは、今の時間を超えたどこかに連れていってくれるという意味。現時点を離れて、どこかを彷徨わせてくれるような感じを探ったんだ。

──個人的に今作で最も気になるのはアルバム中最も長尺の「Cherokee」です。チェロキーといえば、ネイティヴ・アメリカンの一部族を思い出しますが、この曲は何をモチーフにしたものなのでしょうか。歌詞にはトム・ハンクスなんて名前も出て来ますし、スウィング調のちょっと小粋な曲調も印象的です。

P:これは、デイヴが住んでいる近くのエリアの名前なんだ。僕が書いた曲じゃないから多くは語れないんだけど、僕はこの曲が大好き。まさに、一つの曲で、様々な場所に連れていってくれるというか、この曲がどこかに連れていってくれるだろう? どこか知らない場所へね。リズムもクールだと思う。あと、僕がしっくりくるドラムをのせれるようになるまで少し苦労した曲でもあるんだ。僕は自分ができないと思ったことが挑戦していくうちにできるようになっていき、最終的にはそれができるようになるだけでなく自然にできるようになる感覚が好きなんだけど、この曲は、その達成感を感じられた曲の一つでもある。そういう意味でもすごく好きな曲だよ。

──かつてあなたは「誰かが古い音楽を発掘して、それを周囲でシェアする。いつでも誰かが新しい音楽との出会いの“震源地”になるんだ」というようなことを話してくれました。まだその頃は音楽をデータで聴くということも一般的ではなかった時代です。今やサブスクで自在にザッピングする時代ですが、そうしたリスニング環境の変化がアニマル・コレクティヴという存在をどのように変えてきたと言えますか? 

P:僕らは昔からずっとアルバムを主流に音楽を聴いていたからなあ……今の時代のようにシングルで曲をとらえる感覚はもうどうやったって得られないよ。逆に、若い人にとっては逆にアルバムが自然に感じられないんだろうし、Spotifyでアルバムを聴くにしても、シャッフルで聴けばそれはまた違う聴きかたになる。自分たちが培ってきた音楽の聴き方と、若い世代の音楽の楽しみ方は全然違うと思うし、それのどちらが良いとか悪いとかいうのはないと思う。でも僕たちがアルバムの世代ということは変わらないし、そこに見出す価値も変わらない。僕らの感覚を変えるには、サブスクの登場は遅すぎたと思うね。僕らのアルバムへの価値観はもう出来上がってしまっているから。だから、リスニングの環境変化でアニマル・コレクティヴが変わったとは思わないよ。サブスクがなかった頃は、簡単に音楽が手に入らなかった。だからとりあえず買ってみて聴いていたし、最初はあまり気に入らなくても、せっかく買ったし他に選択肢もないからその音楽を聴き続けることでその作品の魅力に気づくことができ、段々と好きになっていくなんて経験もあったよね。そして、それが周囲の友人たちに伝わっていく、と。それが、今は気に入らなけばすぐ次の音楽にスキップすることができる。せっかく出会った曲の魅力に2週間後に気づくという感覚を得ることは、今の世代はなかなかないのかもしれないね。

──では、あなた自身がこの1年ほどの間に“見つけた”、まだほとんど発掘されていない(知られていない)音楽で、この新作に反映されている音楽、アーティスト、作品などをおしえてください。

P:僕は今ポルトガルに住んでいるんだけど、友達のMaria Reisっていうアーティストはクールな音楽を作っているよ。僕がアルバムを作っている時に彼女が自分のアルバムを送ってくれて、すごく気に入ったんだ。でも、今回の新作に反映まではされていないかな。反映されている音楽だと……改めての発見になるけど、ドラマーのクライド・スタブルフィールド、スティーリー・ダン、ミーターズ、バーナード・パーディ、もちろんレゲエもね!

<了>

 

Text By Shino Okamura

Interpretation By Miho Haraguchi


Animal Collective

Time Skiffs

LABEL : Domino / Beatink
RELEASE DATE : 2022.02.04


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