Review

sakimori: 後景

2026 / SIMPO RECORDS / SECOND ROYAL RECORDS
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君と音楽の話がしたい

11 September 2026 | By Nana Yoshizawa

sakimoriを初めて聴いた時の感情は「聴かせるバンドだなあ」だった。同時に、バスや電車から外の景色をぼうっと眺めているような感覚になった。若葉の鮮やかな郊外を後にして、ビルで雲が切り刻まれた都会へ行く。ティーンエイジ・ファンクラブ、初期のおとぎ話、ミツメ、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート……いくつかのバンドを思い出させるほどに、京都を拠点に活動するインディー・ロック・バンドのファースト・アルバム『後景』はセンチメンタルを感じさせる。

ヴォーカル&ギターの田淵琴之助が「HovvdyもparannoulもAlvvaysも2021年に出してるアルバムが1番好き」と話していたのも、本作とわずかに重なるようだ。3作品とも、明るさを落とした影のあるアルバムであり奥行きのある音作りだと感じる。Hovvdy『True Love』の共同プロデュースは、アンドリュー・サーロ(ビッグ・シーフ、ニック・ハキム、Dijon)。Alvvays『Blue Rev』をショーン・エヴェレット(アラバマ・シェイクス、ウォー・オン・ドラッグス他)が手掛けている。前者は、リファレンスの影響源だけでなく、アーティストの興味や好みを理解した上でプロダクションやその人にとって重要であれば、商業的に通用するプロダクションへと適応させてきた。後者に至っては、可憐なドリーム・ポップの前作『Antisocialites』から青年期へ移行するように、複雑な感情をシューゲイザーやニューウェイヴの要素と併せたことで、バンドの可能性を押し広げた。

本作もまた、バンドと一体で録音/ミックスを手掛けた《music studio SIMPO》の小泉大輔によって、色彩豊かな音響へと引き上げられている。ハイファイを意識した音作りは、冒頭「バンド・オン・ザ・ラン」ですでに顕著だ。薄汚れたギター・サウンドにクリーンなアルペジオ、後ろの方に配置されたコーラス。一音一音がすっきりとしたパンニングに感じられて心地良い。インストゥルメンタル曲「curve」では、地響きのように低いドラムを軸にして、音像がぼやけたギターと金属音がノスタルジーを描く。くすみがかったサウンドは、シガー・ロスやDusterらの音響アプローチを思い出させる。加えて、アップテンポの「ぐるぐる」はギターリフだけでも2000年代のUSインディー・ロック(ペインズ?)を想起せずにはいられない。それに騒がしいガレージ・ロックへ展開するのも、ロック好きのリスナーとしては単純に嬉しいのだ。

一方で、バンドサウンドが拡張するのが「朝 (Album Mix)」だろう。ギター、ベース、ドラムのユニゾンによる厚みは、バンドだからこそ作り出せると言わんばかりのノイズやうねりがある。その中に浮かぶのは、脆さのある歌声。バンドサウンドから個が見える瞬間だ。そして巧みにも「バンド・オン・ザ・ラン」の終盤にかけて、同じ展開を繰り広げているとしたら。希望と孤独を描くような強い対比。これがTURNのインタヴューで田淵が語った、“インナーワールド”を指していると思う。

『後景』は音楽を聴く楽しさを感じさせてくれる作品だ。それはsakimoriのメンバーが、好きなアーティストやバンド名を例に上げながら曲作りを行うように、人と人のコミュニケーションを促してくれる。情報をシェアし合うというよりも、もっとただ純粋に音楽の話がしたい。時を戻しながら、過去の音楽や未来について想いを馳せる。そんなインディーのDIY精神と好奇心に満ちているアルバムと言えるだろう。(吉澤奈々)


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【INTERVIEW】
sakimori
個人の極北でバンドとしてインナーワールドを鳴らすために──
京都で結成された4人組 sakimoriについて
https://turntokyo.com/features/interview-sakimori/


sakimori 1st Album「後景」release tour


2026年9月13日(日)
会場:京都・西院SUBMARINE
出演:sakimori、sickufo、KASHIKOI ULYSSES
2026年9月18日(金)
会場:愛知・名古屋KDハポン
出演:sakimori、ophill、Menow、のうへる
2026年9月20日(日)
会場:東京・下北沢THREE
出演:sakimori、パターソン、clematis、and more

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