ジュリア・ジャックリンが語る、最新作『The Gem』、アーティストとして創作活動にどのように向き合うか
シンガー・ソングライターのジュリア・ジャックリンが、シドニーからメルボルンに拠点を移して、《The Gem》という小さなバーに通い出したのが2017年。2016年にデビュー・アルバム『Don’t Let The Kids Win』を発表したのち、聴こえてくる反響に彼女が少しずつ誇らしさを感じ始めた頃になる。それから、『Crushing』(2019年)、『PRE PLEASURE』(2022年)とアルバムを発表。2010年代以降のオーストラリアのインディー・ロック、シンガー・ソングライター・シーンを代表するコートニー・バーネット、パース出身のステラ・ドネリーらと名を並べるアーティストに成長していったのは、既にご存知だろう。
最新作『The Gem』はジャックリンが《4AD》と契約してから、初のアルバムになる。《The Gem》の上にある《Rat Shack Studios》にてレコーディングを行い、スタジオのオーナーで友人でもあるロバート・ムイニョスを共同プロデュースに迎えた。親密な雰囲気が込められた本作のサウンドには、“成熟”という表現がよく似合う。「Get Away From Me (I Think I’ll Love You Soon)」のシンプルなコード進行に変化を与える2つのギター・コード、彼女の言葉より感情で示すヴォーカルなどなど、全編を通して素朴でありつつ技術が練られている。
インタヴュー中に、年齢を重ねてという表現を何度か出していたジュリア・ジャックリンが、新作『The Gem』について、アーティストとして創作活動にどのように向き合っているのか語ってくれた。
(質問作成・文/吉澤奈々 通訳/青木絵美 写真/James Robinson)
Interview with Julia Jacklin
──《The Gem》は2024年にフェイ・ウェブスターとコラボレーションをした「Good Guy」のMVで録音・撮影場所になっていました。あなたがこのバーを見つけておよそ10年になりますが、《The Gem》のどういうところが魅力だと思いますか。
Julia Jacklin(以下、J):本当にいい地元のバーって感じ。小さくて親密な雰囲気で、いつもすごくいいバンドが出てるから、週のほとんどの夜、ふらっと行けばメルボルンの素晴らしいローカル・ミュージックが観られる。バーテンダーも別にものすごく愛想がいいわけじゃないんだけど(笑)、私はそこが好きで。余計なことはしないけど、ちゃんと優しい。それに、今回こうなったのも本当に不思議な偶然なんだよね。最初からそこでアルバムを録ろうと思ってたわけじゃなくて、今回一緒にアルバムを作った友人のロブが、たまたま数か月前にそこにスタジオを作ってた。それを知ったのも、フェイ・ウェブスターの曲をやったときで。だから、いろんな偶然が重なった場所って感じがする。自分があの場所を選んだというより、向こうに選ばれたみたいな。
──ロバート・ムイニョスとは、2018年に同じくオーストラリア出身で60年代のコーラス・グループ、ザ・シーカーズのカヴァー「I’ll Never Find Another You」でタッグを組んでいました。今作の共同プロデュース・ミキシングを彼に依頼したのは、どういった手腕を期待してのことだったのでしょう。
J:ロブとはその曲で一緒にやって、その後フェイの曲でも一緒に仕事をしたんだけど、彼ってすごく自信がある人なんだよね。でも同時に、自分が提案したことを私が気に入らなくても、普通に受け入れられる。これって意外となかなか両立しない資質だと思う。スタジオで相手に自信がないと、アーティスト側がすごく疲れることもあって。アイデアを出すこと自体に不安があったり、アーティストに気に入られなかったらどうしようって心配してしまう人もいるから。でもロブはすごく率直で、自信を持って提案してくれるし、ダメだったらすぐ次に進める。そういう性格なんだよね。2回一緒にやった時点で、「あ、この人とアルバムを作るのがいいかも」って思った。レコードを作ること自体、ただでさえものすごく疲れるし、そこに相手をずっと安心させてあげたり、相手のエゴを傷つけないように気を遣ったりすることまで加わると、ちょっと時間がもったいないでしょう? ロブは本当に裏表がなく、はっきりした人だから、そういう感情面で余計な労力を使わずに、音楽に集中できたんだと思う。
──アルバムからのファースト・シングル「Get Away From Me (I Think I’ll Love You Soon)」はあなたが魅了されたメルボルンの音楽シーンにオマージュを捧げたとありました。魅了されたメルボルンの音楽シーンとは具体的にどういうところを指していますか。
J:オーストラリアらしいサウンドって何なのかを定義するのは、結構難しいんだよね。私たちはアメリカやイギリスの音楽をすごく意識してるし、オーストラリア人であることに対して、文化的にちょっと自意識があるというか。だから「じゃあオーストラリアの音って何?」って考えると、意外とわからなかったりする。自分の中で唯一すぐに思い浮かぶのが、80年代のあの独特なジャングリーなギター・ロック。メルボルンにすごく結びついたサウンドで、特にザ・チャーチとかザ・ゴー・ビトウィーンズとか。この曲には、ただそういう音が必要だったんだと思う。自然にしっくりきたというか。今までああいう音楽を自分で作ったこともなかったから、自分が今暮らしてる場所にちょっと敬意を表せたような感じで、それもよかった。
──この「Get Away From Me (I Think I’ll Love You Soon)」は『Crushing』より以前に取っておいた曲だとありました。シンプルなギター進行など、当初からどのくらいの変化を得て完成に至りましたか。
J:もともとはラトルスナックっていう、自分が参加してたバンドのために書いた曲なんだ。そのバンドは結局2回しかライヴをやらなくて、私はドラム担当だったから、最初は自分で歌ってすらいなかった。男性ヴォーカルだったから、当時はかなり違う感じに聴こえてたと思う。でもコード進行自体は最初からかなりシンプルだった。というか、私の曲ってだいたいコード進行がシンプルなんだよね。たぶん私、コードを6つくらいしか知らないから(笑)。だから大抵、その中のいくつかを使ってるっていうだけ。
──今作は当初の2週間からこれまでで最も長い期間の1年をかけて制作・録音が行われましたが、この大きな理由を話せる範囲で構わないので教えていただけますか。
J:一番大きかったのは、その時期になれば自分も準備ができてるだろうと思って、先にレコーディングの予定を入れてたんだけど、実際そこまで来てみたら全然そんな状態じゃなかったってことかな。2024年は私にとってすごく大きな年で、プライベートでもいろんな変化があったし、長年一緒にやってきたマネージメントとも仕事を終えて、レーベルとの契約も切れた。それで音楽業界の中で、なんだか自分がどこにもつながってないような感覚があったんだよね。たぶんそんな中で、「周りにチームがいなくても、自分ひとりでちゃんとできる」って証明したくて、急いでこのレコードを作ろうとしてたんだと思う。でも実際に必要だったのは、もう少しこの業界から離れて休むことだった。それに気づいたのが、最初の2週間が終わってからだったんだよね。まだアルバムを作る準備ができてなかった。その2週間で録ったものも、最終的なアルバムには結構残ってるんだけど、何か高揚感とか軽やかさみたいなものが足りなかった。リラックスして制作を楽しむんじゃなくて、自分の中から無理やり絞り出そうとしてたからだと思う。だから、自分に何かを無理強いしたからって、いつでもできるわけじゃないんだなっていう、いい勉強になった。昔はもうちょっと自分自身をコントロールできると思ってたんだけど、どうもそうでもなかったみたい(笑)。単純に、もう少し時間が必要だったんだよね。
──『PRE PLEASURE』発表時のインタヴューで、ドラムマシーンの導入について「ただ純粋に楽しんで作りたかった」と話してくれました。今作でもドラムキットを取り入れたのは何かの心境を反映していますか。
J:実はこのアルバムではドラムマシーンは使ってなくて、全部生ドラムなの。ただ、それをスピードアップしたり、細かく切ったりしていて。それがすごく楽しかった。前作で一緒にやったプロデューサーは、ドラムマシーンやシンセ、コンピューターを使って音楽を作るのがすごく得意だったんだけど、私もロブもそういうスキルは持ってなくて。でも『PRE PLEASURE』でも試したように、ドラムマシーンやプログラムされたドラムを使うと自由になれる感じがあって、ずっと好きではあった。今回は、ドラムマシーンやコンピューターに頼らずに、私とロブだけでどこまでできるか試してみる、ちょっとした遊びみたいな感じだったかな。ロブもそれまでこういうことはやったことがなかったし。特に、「Real Life」と「Brand New」の2曲は、最初のヴァージョンでは全然違うサウンドだったから、何か違うことをやってみようとしてたんだと思う。プログラムされたドラムみたいに聴こえる曲は、スタジオで本当にただ遊びながら、自分たちの限られた技術で何ができるか試していた日に生まれたものなんだよね。
──ちなみに制作の前後によく聴いていたアルバムで、マドンナ『Music』やノーリッシュド・バイ・タイムの新作『The Passionate Ones』を上げていましたが、この作品のどんなところが好きですか?
J:マドンナの『Music』については、今回のアルバムに、よくない状況から抜け出していくような曲が結構あって。『Music』に入っている「What It Feels Like for a Girl」は、自分が大きな変化の時期にいたときに、すごく力をくれた曲。本当に何度も聴いていて、それがきっかけでアルバム全体も聴くようになった。あの作品って、すごく遊び心があるし、実験的なんだよね。アコースティック・ギターとエレクトロニックな要素の混ぜ方も、今聴いてもまだすごく新鮮に聴こえる。楽しさや喜びがあるんだけど、同時にすごく心を動かされるところもあって。今回は、自分の音楽にもっと喜びみたいなものを入れたかったし、歌詞よりもリズムやメロディに意識を向けたかったんです。人を感動させるのは歌詞だって考えがちだけど、体が何かを感じるような音楽も、同じくらい感情に作用すると思うから。マドンナの『Music』から受け取ったのは、そういうところかな。
ノーリッシュド・バイ・タイムを知ったのは、実はこのアルバムを作り終えた後だったんだ。それでも不思議なことに、この作品に影響を与えてる気がしていて。うまく説明できないけど、もっと精神的な部分でというか。むしろアルバムを作り終えた後の段階ですごく助けになってる。アルバムという一つの作品を形にしたり、この仕事をやっていくための勇気を持ったりする部分で。この仕事って、自分自身と自分の作品をちゃんと信じてないと、それを売ったり、プロモーションしたりできないでしょう? ノーリッシュド・バイ・タイムの作品って、「この人は本当に自分が作りたいものを作ってるんだ」っていうのがすごく伝わってくるんです。自分にすごく正直で、それが私にはすごく刺激になった。自分が本当に作りたいものを作ることが大事なんだって、何度も思い出させてくれるというか。そういう意味では、ちょっとした道しるべみたいな存在なのかもしれない。それで大成功するかどうかは別として、自分に正直でいたほうがいいと思う。そのほうが、結局音楽もよくなるから。あのアルバムには、この音楽をちゃんと世の中に出していこうっていう勇気をもらったと思う。
──今回ヴォーカルで意識したことは何でしょうか。具体的に拘ったところを教えていただきたいです。個人的ではありますが、力強さと繊細さを同居させる場面を多く感じました。
J:そう言ってもらえるとうれしい。今回ヴォーカルについてかなり考えていたのは、ヴォーカルって、録音するのがすごく難しいものだなってこと。よく「ライヴでこんなに歌が上手いとは思わなかった」って言われるんだけど、それを聞くたびに面白いなと思う。レコーディングでももちろん自分なりに精一杯歌ってるつもりだから(笑)。でも、ヴォーカルってその人の良さを録音で捉えるのがすごく難しいんだと思う。たぶん、歌が上手いことが伝わらないときって、レコードで完璧に歌おうとしすぎてることもあるんじゃないかな。むしろ完璧じゃないほうが、その人の良さが伝わることもある。テクニックよりも感情とか表現に意識を向けたほうが。これは昔から自分がちょっと苦労してきたところで、私はクラシックの歌唱をやっていたから、かなり小さい頃から、表現よりも完璧であることを求められてきた。だからソロのシンガー・ソングライターとして活動してきたこの10年は、そこで身につけたものを少しずつ手放していく時間でもあったと思う。でも同時に、そのトレーニングにはすごく感謝している。おかげで声はかなり強いし、この10年間で声が出なくなったのもたぶん一度くらい。それでもなんとか歌えたし(笑)。10年間クラシックを習ったことには本当に感謝してる。ただ、クラシックでは曲に自分の個性を出すと、注意されたりする。私は子供だったから怒られたくなくて、それがかなり体に染みついちゃったんだと思う。だから今回は、完璧に歌うことや、音程がすべて正確かどうかを気にしすぎないようにしてた。ヴォーカルのテイクを選ぶときも、「どれが一番きれいに聴こえるか」じゃなくて、「どれが一番自分に何かを感じさせるか」で選ぶようにしていた。
──6分以上にわたる「Walk on Me」は後半にかけて「Ah~~」という声によって展開していきます。なぜ必ずしも歌詞ではない試みを取り入れようと思いましたか。
J:今回のアルバムでは、言葉だけでできることには限界があるってことをずっと考えてた。年齢を重ねるにつれて、感情を伝えるうえでの言葉の限界をすごく思い知らされるようになったんだよね。若い頃は、正しい言葉を選びさえすれば、きっとみんな分かり合えるって思ってた。正しいことを、正しい順番で言えば、ちゃんと伝わるはずだって。でも20代のかなりの時間を、自分のことを分かってもらおうとして、必要以上に説明することに使ってた気がする。「あともう一つ、完璧な一文が言えれば伝わる」ってずっと思ってたんだけど、実際は蜃気楼みたいなもので、近づくたびに消えていく。それに、ソングライターとして一番自意識が強くなるのって、みんなからものすごく赤裸々な歌詞を期待されてると感じるときなんだよね。でも今は、書き手としてそこに以前ほど興味がなくなってきたのかもしれない。どれだけ話し続けても、どれだけ説明しても、それで楽になるわけじゃない感情や経験ってあるし、それが必ずしも自分を行きたい場所まで連れていってくれるわけでもない。この曲は、自分の人生の中でもかなり重い出来事についての曲で、だからもう、ほとんど叫び出したかったんだと思う。その経験を言葉で説明するのと同じくらい、声にして吐き出すことが大事に感じた。だからあの曲で思いきり声を張り上げるのは、すごく楽しかった。
──歌詞に関して身近な生活圏内の描写がありつつ、“Angel” や“God” と対比のある言葉が並んでいます。これは今作を物語る上で思索的に選ばれたのでしょうか。
J:正直、意図的にやってるわけじゃないと思う。これは曲を書くときだけじゃなくて、たぶん普段からそうなんだけど、私はすごく小さなことと、大きな視点のあいだを常に行き来してるんだよね。それがソングライターとしての自分の強みでもあると思う。細かいことにものすごく集中できる一方で、そこから一気に視点を引いて全体を見ることもできる。年齢を重ねるにつれて、それは前より上手くなった気がする。ただ、その「視点を引く」感覚を言葉にするのって難しくて、そういうときに宗教的な言葉を使うことが多いんだと思う。人間として生きてると、毎日起こる細かいこととか、常に自分を引っ張ってくる小さなことに圧倒されることがあるでしょう? 曲を書くことって、そういう人間としての経験から少し距離を取って、もっと大きな視点で見ようとする作業でもあると思う。だから自然と、天使とか神とか空とか、自分たちの上に存在しているように感じるものに、頭が向かうんだと思う。
──バイオに「愛したいし、愛されたい。でも同時に、自由でもいたい。その二つの間にある葛藤が、ずっと私の人生の中心にある問いだった」とありましたが、「Angel Vision」の“how to feel free, with someone watching over me head back to the start”という歌詞は、境界線という点で「Head Alone」とも重なるように思えます。今こうした恋愛や個人的な境界線において、どういう風に捉えていますか。
J:面白い意見だね。どちらの曲もいくつかの出来事が混ざってるんだけど、「Angel Vision」には特にひとり、強く念頭に置いていた人がいて、「Head Alone」のあるヴァースもその人について書いてる。でも今言われるまで、そのつながりには自分でも気づいてなかった。面白いね。バイオにあの言葉を入れておいてよかったと思う。というのも、あれを読むと、そこから自分がどれだけ変わったかに気づけるから。このアルバムを作ったことも、ああいう考え方から抜け出すのにすごく役立った。この2年間は、自分の人生に誰を入れるかをかなり意識してきたんだよね。特に音楽に関しては。音楽は私にとってすごく神聖なもので、子供の頃からずっと好きだったし、本来は音楽業界とはまったく別のところに存在してる。でも業界の中で人からどう扱われるかとか、自分が置かれる状況とか、この仕事にありがちな曖昧な境界線によって、音楽との関係まで変わってしまうことがある。それってすごく悲しいことだと思う。だから今は、自分の音楽の領域に誰を入れるのかを本当に慎重に選んでる。業界で関わる人もそうだし、レコーディング・スタジオやツアーで一緒に過ごす人たちもそう。それで分かったのは、人とのつながりの中でも、ちゃんと自由でいられるんだって分かった。ここで言う愛って、友達への愛だったり、バンド・メンバーや仕事仲間への愛だったりするんだけど、その人たちが本当に自分を愛してくれて、好きでいてくれて、尊重してくれて、自分らしくいることも、失敗することも、無理をせずそのときの自分でいることも受け入れてくれるなら、誰かを愛することと、自由でいることは両立できるんだって分かった。だから今は、このことについてかなり違うふうに考えてる。以前ほど混乱してないし、間違った場所に愛を求めることも少なくなった。それって、かなり人生を変えることだったと思う。
──これまでインスピレーションを受けたアーティストに、エミリー・ハリス、ドリー・パートン、キャスリーン・ハンナ、フィオナ・アップル、ブリトニー・スピアーズなど様々上げてきました。けれども、ロールモデルを説明することはなかったように思います。今後こういうシンガー・ソングライター活動をしていきたいと考えていることはありますか。
J:ロールモデルという意味でよく考えるのは、アメリカのシンガー・ソングライター、アイリス・ディメントかな。意外と彼女のことをよく知らない人も多くて。昔エミルー・ハリスと歌っていたし、ジョン・プラインとの曲で知ってる人もいるかもしれない。今はもう60代だと思うんだけど、ずっとコンスタントに、本当に素晴らしいレコードを作り続けてる。ものすごく優れたソングライターで、とにかくずっと音楽を続けてきた人なんだよね。すごく注目を集めた時期もあれば、それが落ち着いた時期もあるけど、そんなことに関係なくツアーを続けて、いい作品を出して、人ともコラボレーションし続けてる。最近もビッグ・シーフが新作を演奏したライヴに出ていて、ギリアン・ウェルチやルシンダ・ウィリアムスと一緒に出演してた。彼女のことをよく考えるのは、まず作品のクオリティが本当に高いから。それに、彼女は音楽の中でかなり政治的なことも歌うんだけど、そのやり方にもすごく安心させられるんだよね。自分も少しずつ年齢を重ねてるけど、それでも自分より上の世代に、いいお手本になる人がいてほしいって思うから。彼女が今も世の中で何が起きてるのかをちゃんと見ていて、それを気にかけていることが、すごく心強いんだよね。しかも説教くさくならずに曲にできるし、とにかく言葉を書く力がある人なんだと思う。この仕事をしてると、ときどき圧倒されることがあって。若さがなくなって、以前と同じような文化的な注目を集められなくなったときに、じゃあどうすればいいんだろうって考えることがある。でもアイリスを見ると、今もずっと続けてるし、ちゃんと愛されてる。アミル・アンド・ザ・スニッファーズのエイミーも彼女のことを話してたし、本当にソングライターから尊敬されてる人なんだよね。ものすごく有名というわけじゃなくても。だから間違いなく、私にとって大きなロールモデルのひとりだと思う。
<了>
Text By Nana Yoshizawa
Photo By James Robinson
Interpretation By Emi Aoki
Translation By Emi Aoki
Julia Jacklin
『The Gem』
LABEL : 4AD / Beat Records
RELEASE DATE : 2026.09.25
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