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「クラブで本当にプレイできる曲だけを入れる」
tofubeatsが語る『Angels on the Dancefloor』、J-CLUB、フレンチ・エレクトロ、そして“大丈夫”という言葉

29 May 2026 | By Shoya Takahashi

フロアで鳴らしてきた音楽を、作品としてどう届けるのか。tofubeatsの新作EP『Angels on the Dancefloor』は、ゲスト・ヴォーカルを迎えた楽曲やリミックスを除けば、DJとして実際にプレイして機能することを確かめてきた曲たちだ。『TBEP』、『NOBODY』からつづくJ-CLUBのモードを引き継ぎながら、2000年代のハウスやフレンチ・エレクトロの感触を、自身の愛着と身体感覚でもう一度鳴らすような作品でもある。

そして、このクラブ・ミュージックとしての実用性は決して無機質なものではない。切り刻まれた声ネタからテーマやイメージが立ち上がることもあるし、柴田聡子を迎えた「大丈夫」には、シカゴ・ハウスから連綿と受け継がれた、強がりとも励ましともとれる温かな響きが宿っている。KIRARAやMicolas Mangiaのリミックスを通じて韓国の電子音楽シーンとの共振を図ったり、フロアで同じ曲を聴きながら踊っている人たちを天使のように感じたり。さまざまな角度から、クラブ・ミュージックの中で“大丈夫”になっていくことについて、tofubeatsに聞いた。

(取材・文/髙橋翔哉 写真/船津晃一朗 協力/岡村詩野)

取材日(5/16)に岡山《YEBISU YA PRO》にて開催された『unBALANCED』にて

INDEX
クラブで本当にプレイできる曲だけを
J-CLUB、K-CLUB、フレンチ・エレクトロ
声ネタ、街路樹、“大丈夫”という言葉
“ドタバタ”をどこまで残すか
自分の好きを受け取ってくれる、フロアの“天使”たち


Interview with tofubeats

クラブで本当にプレイできる曲だけを

──今回の新作EP『Angels on the Dancefloor』は、近年のtofubeatsさんのモードに引き続き“J-CLUB”というキーワードがありながらも、ビートやヴォイス・サンプルの使い方がかなりせわしなく、強制的に気分を上げられるような音楽だと思いました。この作品はどういう必要性から出てきたものなのでしょうか?

tofubeats:『TBEP』っていうコロナ前に出したEPぐらいから、DJで自分がかけるような楽曲をちゃんと作品として出したいな、というのがあって。ハウスのDJはこれまでやってたけど、tofubeats名義の作品としては届けてないなって。そういうところから『TBEP』に着手したんですけど、コロナ禍があって『REFLECTION』のようなアルバムを挟み、『NOBODY』でもう一回『TBEP』で“やり残した宿題”としてやろう、みたいな感じで始めました。

今回収録してる楽曲って、完全に未公開だった楽曲はゲスト・ヴォーカルに参加していただいている2曲とリミックスぐらいで、ほかの曲はぜんぶDJで実際にかけてた曲なんですよね。そういう実用に耐えうる曲を選抜して出したかったっていうのがあって。“J-CLUB”というコンセプトは『TBEP』のときにもあったんですけど、それをより確実にしたかったというか。

──『TBEP』から『NOBODY』に続き、今回またEPでのリリースということで、EPというフォーマットにはどんな意味があると考えますか?

tofubeats:本当に実際に現場で使って、実用的だなと自分が思ったものしか入れてないんです。ほかにもデモは結構あったんですけどそれも外して、シンプルにEPのサイズ感に納めるというのがスタートとしてありました。これまでの作品みたいにコンセプト発信というよりかは、どっちかというと実用的な側面が強いので、サイズ感的にあんまり大振りにしないほうがいいかなと。『NOBODY』もそうだったんですけど、今回も自分が歌ってる曲が1曲も入ってないし。

そういうところもあるので、今後ももしかしたらこういうクラブ・ミュージックっぽいものはEPサイズでやるかもしれないです。こっちも本流ではあるんですけど、フルサイズのアルバムとEPサイズと2つの軸で走ってるようなバランス感が、自分的に落ち着いてきたんで、今回もこういうJ-CLUBっぽいものはEPでいこうとなった感じですね。


J-CLUB、K-CLUB、フレンチ・エレクトロ

──今回のEPはJ-CLUB的な質感がありますが、そのほかに『Angels on the Dancefloor』はどの時代やジャンルに紐づくものだと捉えていますか?

tofubeats:今回は90年代とか2000年代みたいな、直球のピアノ・ハウスみたいな感じとか、一部ブリープっぽいものとか。「let me tell u」は今風のテンポ感ですけど、全体的にはフレンチ・エレクトロの焼き直しであったりとか、自分が好きだった時代のものを正直にやろうと思ってて。リヴァイヴァルではないけど、好きだったものをいま普通にやることを控えないっていう。あんまり現行のシーンへの目配せみたいなことは、そこまでしてないというのが正直なところですね。

──ここ数年、ジャスティスの『Hyperdrama』やチャーリーxcxの『BRAT』、ブログハウス(bloghouse)やフレンチ・エレクトロのリヴァイヴァルなど、2000年代的な派手で攻撃的なダンス・ミュージックの意匠がふたたび注目されているように思います。その動きについてはどう見ていますか?

tofubeats:3年ぐらい前から周辺のDJたちがみんなジャスティスをUSBに入れ直したみたいな話をしてて。「フレンチ・エレクトロ・リヴァイヴァルがくるぞ」みたいなのは、2、3年前から全員が言ってたんですけど、結局ドカンと『BRAT』に落ち着いたみたいなイメージがあって。

これは単純に世代論的な部分もあると思います。僕ら、いま35ぐらいで、《PC Music》のA.G.クックと完全にタメなんです。僕ら世代が10代のときに一番光り輝いていたものが、フレンチ・エレクトロですから、世代的にリヴァイヴァルど真ん中感があるかなって。僕らの世代が、自分の最初に好きだったものを遺憾なく発揮しようとしたら、絶対にそこに入ってくる要素のひとつかなっていうのはまずある。プラス、いまのブログハウス・リヴァイヴァルみたいなところとか、意匠的にはY2Kですよね。だってフレンチ・エレクトロやエレクトロクラッシュって、Y2Kの大きな要素のひとつだと思うんですよ。モダンなものが結構モダンモダンしてるところで、ポストモダンじゃないですけど、そういうちょっとダサいまではいかないけど、ちょいダサい、あのときの意匠みたいなのがもう一回引っ張り出されてきていると思いますね。ゴスっぽいものが多くなってきた中で、カラフルなものに対する引き戻しがあるのは、納得感あるかなっていう。

──そういうものが求められている節はあると思います。もしかしたら一時的なものなのかもしれませんが、ビットクラッシュされた享楽主義的な感覚は、世界的にも日本国内でも感じます。

tofubeats:今回の収録曲の「let me tell u」にはMVがあって。横田信一郎さんのドキュメンタリーなんですよ。DJメディの「Signature」ってわかります? トーマ・バンガルテル(Thomas Bangalter)のエディットにミックスしてるやつのMVが、フランスの走り屋のドキュメンタリーじゃないですか。横田さんは、走り屋が使うような長いシフト・レバーとか改造ハンドルを作る会社を本業でやられてる方で。トーマ・バンガルテルのDJメディみたいなMVとかできるんじゃない?ってことで、横田さんのドキュメンタリーになった。今回、ヴィジュアル面でもフレンチ・エレクトロ・リヴァイヴァルのオマージュみたいな部分が実はあるんですよ。

──リミックスで参加しているKIRARAさんも、ソロ作品で2000年代のマッシブなダンス・ミュージックの影響を感じるアーティストだと思います。表題曲のリミックスを依頼するにあたって、KIRARAさんに自分の曲をどう変えてもらうことを期待していたのでしょうか?

tofubeats:これちょっと前提知識が要るんですけど、日本でいうJ-CLUBみたいな2000年代のクラブ・ミュージックって、韓国ではそれを“渋谷系”っていうタームがあるのってご存じですか?

──それは知りませんでした。

tofubeats:韓国で“Shibuya-kei”ってローマ字で書くタームがあるんですけど。それはどういうものかというと、韓国で渋谷系というときって、フリッパーズ・ギターじゃなくて、コーネリアスなんですよ。フリッパーズ・ギターとか90年代のものが韓国には入ってきてなくて、2000年代から入ってきたものが渋谷系って呼ばれてて。日本でいうJ-CLUBっていうのは、ニアリー・イコール、韓国でいう渋谷系なんですよ。そういう話があるので、KIRARAにはいわゆる渋谷系みたいなものを踏襲したものにしてほしいっていうことと、あとは今回はJ-CLUBがテーマやから、KIRARAの思うK-CLUBを作ってみてよ、みたいな感じでお願いしましたね。

──韓国の電子音楽シーンとの接続のようなものがあれば聞かせてください。

tofubeats:渋谷系って言葉が韓国でもある程度伝わるぐらいなので、影響を受けてるものは一緒な部分もありますし。あと、韓国は電子音楽のシーンが乏しいってKIRARAは言っていて。KIRARAってハングルで“電子音楽”って書いてるTシャツを着ていつもライヴやってるんですけど、それは、それを背負ってる人がKIRARAしかいないことの証左というか。音楽を作る人はみんなK-POPのプロデューサーになるか、DJになるかみたいなヒエラルキーになってて、ソロ・アーティストとして活動するという選択肢が韓国にはないっていうことを、KIRARAは言ってたんですね。

その一方で日本ではエレクトロニックのソロ・アーティストで、DJをやって、ライヴをやってみたいな活動形態の人って、たくさんいるじゃないですか。電気グルーヴとかもそうですし。韓国では、そういうアーティストが本当にいないんだって話を何回かしていて、それに衝撃を受けたところがあって。でもKIRARAのライヴ観てて、俺はちょっとCherryboy Functionさんのライヴを思い出したんですよ。これはもっと日本の人に接続できるのでは、ということを考えて、今回リミックスをオファーさせてもらったっていう感じですね。そんなこと言ってたら、制作中にフジロック決まってびっくりしましたけど。

──ちなみにKIRARAさんとの出会いはどういうものだったのでしょうか?

tofubeats:去年出演した、仁川のAsian Pop Festivalですね。そこで韓国のエレクトロニック・アーティストと一緒になるわけですけど、それがエレクトロクラッシュみたいな音楽をマジでやってるFat Hamster and KANG Newっていう男女2人組と、KIRARAと、あとIDIOTAPEっていう3人組のグループが一緒のステージで。全員エレクトロニックではあるが、やっぱりちょっとロックっぽいところがあって。そういうところで、ほかにエレクトロニックな人っている?みたいな話をしたりして、関係ができていった感じですね。


声ネタ、街路樹、“大丈夫”という言葉

──今回のEPはゲスト・ヴォーカルが入っている楽曲以外でも、「let me tell u」など、声ネタが切り刻まれたり歪められたりと声の使いかたが面白いと思いました。声ネタを使うときの意識について聞かせてください。

tofubeats:「let me tell u」は、ずっと“let me tell u”って声が入ってない状態でできてた曲で、最後のほうに声を入れたんです。あと今回、声ネタに関しては意外と自分の声を使ってるところが実は多くて。「Be With You」は、自分がBPM80ぐらいで録った“be with you〜”っていうハモリみたいなものが原型になっていて、それを切り刻んでハウスにしてる。「Angels on the Dancefloor」とかは“dancefloor”っていう声ネタを切り刻んで作っていくなかで、“angels on the dancefloor”にしたいなと思って、そのコンセプトができてから“angels”って声を足していったりとか。思いつきみたいな感じで声ネタを使っていって、それによって逆にコンセプトが更新されていくことが結構あっておもしろかったですね。今回はインストだから意味を固める必要がないので、自由に作りつつも、ちょっとだけ入ってるネタとかからイメージを膨らませたりみたいなのが、どの曲でもあった感じです。

──フル・アルバムではコンセプトを先に決めていることが多いですよね。クラブ・ミュージック的なEPを作るときは、あとからコンセプトが立ち上がることが多い?

tofubeats:そうですね。今回は使える曲を入れて作るところから始めたので。EPのためのメモ帳があるんですけど、そこにも「クラブで本当にプレイできる楽曲のみを入れる」って4行目ぐらいに書いてるんで(笑)。“J-CLUB”と、“クラブで本当にプレイできる曲を入れる”っていう大コンセプトがあって、クラブでプレイできなさそうな曲は外す、みたいな。あと今回、インストの5曲目までの曲ができた段階でジャケットを作ってもらったんですけど、この街路樹みたいなジャケの絵のラフが上がってきてから「大丈夫」という曲ができたのは、こちらが出したイメージが跳ね返ってきて進んでいった、いいケースでしたね。

──その「大丈夫」には柴田聡子さんが参加しています。柴田さんは自分でも文章を書く“ことばの人”ですし、声にもとても記名性があるシンガーです。この曲を柴田さんに依頼することになった経緯について教えてください。

tofubeats:柴田さんに曲を頼みたいっていうのは昔から、それこそ9年前ぐらいに『関ジャム』で紹介したころから、ずっと思ってたんです。ライヴもお客さんとして、奥さんも大ファンなので行ったりしてて。いつか頼みたいと思ってたんですけど合う曲がなかなかできなくて、今回ようやくできた曲でもありました。

──ジャケットのイメージとの関係についてもう少し聞かせてほしいです。

tofubeats:このジャケのラフが出てきたときに、この街路樹のイメージが柴田さんに合うんじゃないかとなんとなく思って。柴田さんに頼むっていうことと、街路樹っぽい言葉を歌詞に入れること、その2点を決めてスタートしたんですよね。結局、街路樹という言葉は入ってなくて、散歩道っていう言葉で入ってるんですけど。なので、これだったら歌ってもらえるかなというよりは、柴田さんに頼む前提で進んでて、受けてもらえなかったらどうしたんやろうって思いますね(笑)。

──「大丈夫」という言葉は、『NOBODY』収録「YOU-N-ME」にも出てきました。柔らかいようで強い言葉でもあり、メンタルヘルスにも接続できる言葉です。大丈夫ではないけど「できます」「間に合います」と言ってしまうような、自分に言い聞かせる言葉でもある。この「大丈夫」という言葉は、どのような響きをもつ言葉だと思いますか?

tofubeats:正直、本来はあまり歌詞で使いたい言葉ではないです。聴いた結果元気になってもらえることはありがたいんですけど、こっちが「元気だして」みたいなことを歌うタイプじゃないし、歌詞のなかでやりたいと思ってない。

使うときに注意しなきゃいけない言葉だとは思うんです。この曲も、「YOU-N-ME」で出てくる“大丈夫”も、聴いてる人に対して言ってる“大丈夫”じゃなくて、自分に「もう大丈夫」って言い聞かせてる曲ではある。でも、そう言い聞かせてる人を見ることで自分も大丈夫って思えるときもあるし、この曲をレコーディングするときに、せっかくなら寄り添いがある曲がいいなと思って自分は作ってる。「大丈夫じゃないよね」みたいなふうに自分が言うのもちがうし。ぜんぜん大丈夫じゃない人が強がって“大丈夫”って言ってるふうにも取れるし、自分のなかで「大丈夫だからいけるよね」みたいに言ってるようにも取れる歌詞になるようにしようと思ってて。もっとポジティヴに終わるパターンの歌詞もあったんですけど、このぐらいに調整してこうなったって感じではあるんです。

あと全然関係ないですけど、シカゴ・ハウスで俺がめっちゃ好きな曲で「It’s Alright」っていう曲がありまして。Sterling Voidっていうアーティストの、Marshall Jeffersonの超アンセムがあるんです。「It’s Alright」ってシカゴ・ハウス的なタームだなと思っていて。『FANTASY CLUB』もそうなんですけど、結局そこらへんの音楽がやっぱ好きなんで。“大丈夫”っていう言葉を使うときには、そういうところから言葉を借用してきてる部分もありますね。同じテーマで自分が曲をつくったらどうなるかみたいな。「Angels on the Dancefloor」もそうですけど、自分は“angels”っていうものをなんだと思ってるのか、普通に興味あるんですよね。

──“大丈夫”というと、インプレッションズの「It’s Alright」や、古内東子「大丈夫」なども思い出しました。ハウスの“alright”とは別に、日本のR&Bや歌謡曲の文脈での“大丈夫”という言葉についてはどうでしょうか?

tofubeats:古内さんもありましたね。1997年ですよね、小学生だったので全然後追いですけど(笑)、〈申し訳ないと〉をやっていたのでこのあたりは必修科目です。嶋野百恵さんは最近カミノ・ザ・ファンク「Southern Port -泉州 Bay Groove- feat.嶋野百恵」のリミックスで1曲やらせてもらいましたが、古内さんとはご縁がなくてお会いしたこともないんですよね。


“ドタバタ”をどこまで残すか

──「Angels on the Dancefloor」や「let me tell u」はハウス的な四つ打ちのキックが気持ちいい曲ですが、一方で「Don’t Stop」はもっと前のめりで、こちらの気分や体調を待ってくれずに体だけが先に進んでいく曲に感じました。

tofubeats:「Don’t Stop」だけは純然たるクラブツールとして作った曲で、強制的に出音がいかつい。なので他人のこととか考えてないっていうか、元気ないときにこれを聴いたらしんどいじゃないですか(笑)。でもそういう純然たるDJツールみたいな曲なんで、曲名もすごい適当になっちゃっていて。「Don’t〜」が2曲続いていますからね(笑)。これ嫌なんですけど、こうなっちゃいましたね。

──この曲のビートは2000年代のフレンチ・エレクトロやエレクトロクラッシュ的な肉体性にも接続できますね。

tofubeats:自分がクラブ行きだしたころって、ふつうにジャスティスとかクラブでかかってましたし、自分もかけてたし、そういうときの感じを、いろいろ経たあとの自分でやってみたいな、っていう。

──「let me tell u」の声の刻みかたは、オーヴァーモノ(Overmono)のような現行クラブ・ミュージックの声ネタにも近いと思いました。最近のクラブトラックで、声の使い方を含め、面白かったものはありますか?

tofubeats:声の使い方が面白かったもの……そんなに出てこないんですけど、でも今っぽい声ネタの使い方みたいなものは確かにありますよね。ちょっとスタッターっぽいっていうか、なんていうんですかね。爽やかなっていうか、バカみたいな言い方であれなんですけど。全体的に現代のクラブ・ミュージックに言えることとして、滑らかだなと思うことが多いです。バウアー(Baauer)とか、オーヴァーモノとか、フレッド・アゲイン(Fred again..)もそうなんですけど、派手にみえるけど実は滑らかみたいなイメージがあって。リニアな感じのノリっていうか。

自分は「Don’t Stop」みたいなドタバタしてるものが好きなんですよ。でも、自分が好きなドタバタをDJでもライヴでも100パーセントでやってたら、いくらなんでも現代にフィットしなさすぎると。そこは自分の調整のツマミっていうか、このドタバタ具合をどのぐらいにするか、みたいなことは考えますね。

──tofubeatsさんの好きな“ドタバタ”した音楽には、どんなものが挙げられますか?

tofubeats:シカゴ・ハウスって全部そうだと思ってて。いわゆる初期のハウス・ミュージックであったり、ラテン・フリースタイルとか、ブレイクダンスの音楽ってあるじゃないですか。あと初期バイレファンキとか。いまのバイレファンキも好きですけどね。そういう音楽が持っている独特の、ドタバタ感って言い方はよくないかもしれませんけど、ジタバタした感じというか。ボタンを手押しでやってます、みたいな感じの音楽はやっぱ好きなんですよね。

ただ一方で現代において、たとえば《ZEROTOKYO》でDJをやるときに、ある程度リニアなノリが出せないと成立しないっていうことも分かってるので、そこのバランス感が大事なのかなって。

──『Angels on the Dancefloor』のインスト曲には、次々に短いスパンで刺激がくる感じがします。いまのリスナーの耳や傾向について、制作側として意識することはありますか?

tofubeats:今回のインスト群が、インストにしてはパッパッと展開していくっていうのは、入門者みたいな人に聴いてもらえたらいいなって意味でこうしていることが多い気がします。自分のやってることにはクラブ・ミュージックへのゲートウェイ的な部分があって、声ネタとかも、インストのこういう音楽を聴いてなかった人とコミュニケーションする手段のひとつかなと思っていて。最近のリスナーだけが急に短いものでないと耐えられなくなったっていう印象が、正直そこまでなくて。プレイヤー側も速くなっちゃってると思うんですよ、YouTubeを見たりとかして、ゆっくりアルバムを聴けなくなってるのは作ってるほうもそうなはずで。

──エクストリームな音楽も、リスナーからの要請だけでなく、作り手の欲求や技術的な背景があることも多いですし。

tofubeats:いつの時代も若い人がエクストリームなものが好きなのは当たり前ともいえるし、僕らのときにはブレイクコアがそれにあたった。それが今はそういう音楽になっているわけですが、逆にいうと、そういう音楽なのにリニアやなって思うんですよね。

たとえばスクリレックスとフォー・テット(Four Tet)とフレッド・アゲインとかを見てても、一見派手なんですけど、結構ノリはリニアじゃね?って思うんですよね。いま進んでいるエクストリームさっていうのは、耳触りとしては実はそこまでめちゃくちゃなものではない。サウンドデザインとしては、ノイズ・ミュージックのほうがエクストリームなわけじゃないですか。そこらへんの速度感とかエクストリームさみたいなものを出す部分が、時代によって更新されてるんだなっていうのは感じますね。

──『Angels on the Dancefloor』には、エクストリームさや突飛さのようなものはあると思いますか?

tofubeats:個人的にはポップスのチャートに乗ってもいいようなEPなので、そこまで突飛なことしてないなっていう。本当にクラブでかけられる、ストレートに自分がいいと思ったものを入れた感じの作品ですね。今回はAIみたいなタームもなければ、マジで奇を衒ってないかもしれないです。


自分の好きを受け取ってくれる、フロアの“天使”たち

──前作『NOBODY』から今作まで、作品としては2年ぶりに見える一方で、そのあいだに提供曲や劇伴など、かなり多くの仕事をされていると思います。J-POPの現場や劇伴で自分のシグネチャーを出しすぎないでやることは、今回の『Angels on the Dancefloor』にどうフィードバックされていますか?

tofubeats:やっぱりいろんな仕事をさせていただくので、自分の中にないものを引き出そうとすることによって、本当に自分がやりたいことをしっかり考えられると思っていて。自分の色が出すぎると良くない仕事をやってるときにこそ、自分らしさとか、こういうことを自分はやりたいのかな、みたいなものに気づけたりする。最近やってた『正反対な君と僕』とか、『北極百貨店のコンシェルジュさん』とかもそうですけど、ああいったお仕事は全部オリジナル作品にもいいフィードバックがあると思っています。あとは自分へのイメージとか、「他人からこう思われてるんだ」みたいなことがわかったりして面白いかなっていうのもありますね。

──『正反対な君と僕』のサントラは、インストなのにメロディーが立っているというか、tofubeatsさんらしい乙女ハウス的な女性ヴォーカルが聴こえてきそうなメロディアスな楽曲が多いと感じました。

tofubeats:サントラの仕事って本来、メロディーを求められないことが多いんですけど、『正反対な君と僕』に関してはこういうテイストで進めさせてもらえて。いい感じに曲やメロディーを使っていただけて嬉しかったですね。

──柴田聡子さんやPAS TASTAのようなアーティスト、あるいはヒップホップの現場との関わりもあるなかで、音楽の景色が変わったと思うことはありますか?

tofubeats:そういう新しい流れが出てきているところを見ていて、逆に自分は本来好きだったものをやるのが強みかなと思いまして。いわゆるボカロPっぽい動きも自分はそこまでできないですし、打ち込みでもっとフリーフォームにやっていくタイプでもないっていうか。本当はなにが好きかといえば、J-CLUBとか、J-POPだったり、ハウス・ミュージックみたいなものが自分の根底にはあって。でも一方で、そういうものに影響を受け育ってしまったという“呪い”みたいなものがあるわけですよ。これを消化していくのが自分の務めだなと感じています。

ここ最近はそれこそヒップホップの人と仕事をすることが本当に多くて、《POP YOURS》に出させてもらったりとか、STUTSさんもそうですし、一緒にやってきた人が武道館でやったりするのを間近で見ている。ヒップホップもめっちゃ好きなんですけど、自分はダンス・ミュージックがやりたいんだというのが分かってきて、自分が好きだった日本のダンス・ミュージックの流れに、なにか刻み込めるものがあったらいいなって、いま頑張ってますね。

──それこそヒップホップからtofubeatsさんの音楽に入ってきたリスナーに対して、クラブ・ミュージックの入り口を用意するような意識もあるのでしょうか?

tofubeats:《POP YOURS》のときもそうでしたけど、ヒップホップのフェスでアーメン・ブレイクを鳴らしたりとか、関連のプレイリストに飛んでいったら全然関係ないインストのハウス・ミュージックが流れ出すとか、そういうところからじゃないと衝突することはない。音楽の面白さってそういうところだと思うし、自分の曲を通じて、紹介業みたいなことができたらいいなと思ってます。

──“紹介業”という言葉も出ましたが、自分の曲を通じて音楽を紹介したり、べつの場所へ橋渡ししたりする意識は、どこからきているものなのでしょうか?

tofubeats:自分って、自分よりおしゃれだったり、詳しい人にものを教えてもらってこうなってるわけですよね。音楽でも「これが好き」「あれが好き」って言うことで、人におしゃれって思われるかもしれないですけど、それも結局、おしゃれな人が作ったものじゃないですか。そういうふうに、相互に関係してできてるものだと思うんです。だから自分もプレイヤーをやるんだったら、音楽を人に紹介しなきゃいけないのは当たり前なんですよ。

関西で音楽をやってたら、100パーセント岡村詩野さんにぶち当たるわけです(笑)。岡村さんみたいな人がたくさんいて、みんな音楽を紹介していて、それによって聴いたり知ったりする。ミュージシャンも、ミュージシャンじゃないプレイヤーも、その場にいる人はみんなやるものだと思って育ってきたので、自分もそれをやれたらなっていう感じです。マネージャーの杉生さんには17歳ぐらいから面倒を見てもらっているんですけど、初めて会ったとき、当時Benga & Cokiの「Night」がすげえ流行ってて急にレコードを渡されて「これかっこええから聴いてみ」みたいな。でも、音楽を通じてコミュニケーションするってそういうことじゃないですか。「あの曲いいよね」っていう話で。それをプロになってもやりたいし、その媒介として使われたいし、自分の曲じゃない曲も紹介したい。

──tofubeatsさんの音楽に親密なイメージをもっている方は多いと思いますが、『NOBODY』から今回の『Angels on the Dancefloor』までのクラブ・ミュージック的な反復の中にも、聴き手が自分の居場所をつくれるような作用があると感じました。

tofubeats:クラブ・ミュージックってランニング・マシンじゃないですけど、一定のリズムで人を動かしたり走らせたりするじゃないですか。機械でビートを作っている音楽なので、音自体は無機質だけど、その機械的なループの上で人間が踊っていると、それ自体は機械的じゃない。機械的な音楽やループを人間が浴びていると、そこに差みたいなものが出てくる。弾き語りを聴いているときは、体を動かさなきゃいけないわけではない。でもクラブ・ミュージックは、そのリズムに自分が乗っていることで、ノれてる/ノれてないを考えたりもする。そういう差を感じるところも楽しみのひとつだと思いますね。

──ビートに乗りつづける魅力についての話があったうえで、改めて音楽が人を“大丈夫”にすることについてどう思うか聞かせてほしいです。

tofubeats:音楽には癒しになる部分もありますけど、作ってる自分からすると、自分が好きなものを好きと思ってくれる人がいる奇跡、みたいなものを感じていて。「Angels on the Dancefloor」のPVを作っていただく皆さんに送った文章があって。DJにとってフロアにいるお客様って、お客さんではあるんですけど、でも自分が音楽をかけてるだけでわざわざ動き出して踊ってくれる人たちって、ほぼ天使やん、みたいに思ったんです。そういう話を書いて送りまして。

音楽をやることで、自分と好きなものがちょっとでも一致してる人がたくさんいることが分かる瞬間を、音楽によって味わってることは本当にありがたいなって、最近思うことが多くてですね。そういう部分ですごい“大丈夫”になってるのかなっていうのは思いますね。

──“angels”にはいろいろなモチーフもありますが、お客さんが天使だという話は、プレイヤーならではのインスピレーションですね。

tofubeats:でも聴いている人からしても、同じ曲をフロアで聴いて踊ってる人って天使なんじゃないかなと思うんですね。自分と好きなものが一致してる人がいるとか、そういう人と一緒に時間を過ごせてるって、本当に嬉しいことだと思う。音楽っていうのは、そういうことを感じられるものやなって感じます。

──今後の活動や、次の制作について、いまの時点で言えることがあれば教えてください。

tofubeats:アニメ『正反対な君と僕』のシーズン2が7月からあるんですけど、シーズン1に引き続きそのサントラをやっています。あと、今回歌っていないEPを作ったので、次はすごく歌うアルバムを作ろうとしていて、制作をスタートさせようと思っています。また新しいものを皆さんにお届けできたらいいなという感じです。

<了>

Text By Shoya Takahashi

Photo By Koichiro Funatsu


tofubeats

『Angels on the Dancefloor』

LABEL : HIHATT LLC
RELEASE DATE : 2026.05.29
CD購入リンク: https://hihatt.myshopify.com
配信リンク: https://tofubeats.lnk.to/aod


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