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BEST 8 TRACKS OF THE MONTH – May, 2020

Editor’s Choices
まずはTURN編集部が合議でピックアップした楽曲をお届け!

Majetic – 「Desert Wings」

愛と別れについての曲は世の中にたくさんある。けれど、その1つ1つは細部が少しづつ違っていて、異なる感情を宿している。NY在住のSSW、Majeticのこの別れの曲の繊細さに触れて、そういうことに改めて気付かされた。ピアノの弾き語りによる独白的な迫力と、うっすらと響く残響音のアンビエンスが、高鳴りと平静を行き来するような感情の揺らぎを伝えている。また、差し込まれるフルートの音や突如として鳴らされる鐘の音も独白の緊張感をゆるめてくれて、そんな緩急のあるサウンドが心地よくもある。そこかしこに自身の感情をしのばせた楽曲、その繊細に作り込まれた美しさに息をのんでしまう。(加藤孔紀)

Matt Berninger – 「Serpentine Prison」

やっぱりこの人の歌の表現力はすごい。ザ・ナショナルのマット・バーニンガーの初ソロ曲で、ブッカー・T・ジョーンズとショーン・オブライエンがプロデュース。翳りあるフォーキーな曲調ながら、中盤から聞こえてくるオルガンとホーンが、思い切りヴォーカル・マイクを前に出して録音したようなマットの歌声と美しくハモり深い陰影を与えている重厚な曲だ。ザ・ナショナルの最新作『I Am Easy To Find』をレコーディングした1週間後に書かれたものとのことで、モノクロのPVではレコーディングの様子も見られる。アルバムは10月2日にコンコード傘下のブッカー・Tのレーベル《Book Records》からリリース。今年後半最大の楽しみ!(岡村詩野)

Polo G – 「Wishing For A Hero(feat. BJ the Chicago Kid)」

“We gotta make a change”(俺たちが変えていかなきゃ)。「Changes」の中でそう話した2Pacはもういない。

プロデューサー・デュオのThe Superiorsが手掛ける同曲と同じBruce Hornsby and the Range「The Way It Is」をサンプリングしたトラックの上で、それも似たテーマ(人種差別、警察官の暴力など)でラップするのはシカゴ出身、21歳のPolo G。彼のような若いラッパーが意志を継いでいることに胸が熱くなる一方で、“They killed Martin for dreamin’ and now I can’t sleep”(キング牧師は夢を見たから殺された、だから今は眠れない)といった見事なワードプレイに彩られたリリックに浮かぶ絶望が胸を刺す。

2Pacの言う“We”の意味について今改めて考えたい。(高久大輝)


Writer’s Choices
続いてTURNライター陣がそれぞれの専門分野から聴き逃し注意の楽曲をピックアップ!

Elephant Stone – 「American Dream」

(編集部注:4月30日リリース)

コロナ禍によるロックダウンの最中、カナダのサイケデリック・バンドがリリースしたのは、彼らのアイデンティティともいえるシタール等のエキゾチックな音を廃した、フォーク・ソング。構想数年、家で過ごす孤独な2週間の間に完成したという本作は、アメリカン・ドリームの崩壊と諦めを歌う、厭世的な世捨て人の歌。これは現実逃避なのか、いや、プロテクト・ソングだ。バンド演奏ではなく、弾き語りをしているのは、セッションが難しいからというのもあるだろう、しかし、一番にあるのは、社会に対するアンチテーゼではないだろうか。今までの価値観の崩壊を受け入れ、新しい価値観を作り上げていく、そう提案しているように聞こえる。(杢谷えり)



lodet – 「Calling」

本曲のダンサブルでポップでちょっぴりナイーブなサウンドに、すぐさま耳を虜にされてしまった。それもそのはずで、彼はこれまでスウェーデンの作曲家チームの一員としてJoakim Bjornberg名義で、嵐などジャニーズの楽曲にCo-Writeで参加してきたポップ職人だからだ。

即時的に耳を捉えるのは、楽曲の推進力ともなっている明らかに手数の多いドラム・アレンジだ。特に最初から最後まで一気に聴かせるこの仕掛けに、彼の手腕が発揮されていると言えるだろう。そこから70年代後半~80年代前半を思わせるファンキーなダンス・ナンバーへの流れも耳馴染みが良く、逃避的な居心地の良さを感じる。(杉山慧)

Mom – 「カルトボーイ」

徐々に取り戻しつつある街の喧騒を横目に、エンタメみたいに消費される血生臭いニュースの数々。言うべきことはちゃんと言え。でも迂闊なことは言うな。じゃあどうすれば。そんな焦燥感におそわれた5月の心象にぴったり重なったのがこの曲だった。自分さえも殴ってしまうイル時々チルなトラップビートと刺々しい言葉の向こう側で、「だから手を繋ごう」と弾き語るMom青年。3分に満たない時間に表現された混沌とした心情は、継ぎ目の生々しさそのままにインスタントに時代と呼応していく。いよいよメジャーの世界に飛び立つ日も近づいているが、不安や怒りも優しい気持ちも、全部携えながらこの時代に風穴を開けてくれ。僕らもともに行こう。(阿部 仁知)

Morningwhim – 「Most of the sun shines」

Pale BeachことHidetoshi Muraiや話題のSSW・ゆいにしおも所属する、20代前半・名古屋発のバンドMorningwhimがデビュー7インチシングルをリリース。どこまでも透明度の高いギターサウンドはベルセバ、ペインズ、SUNDAYSらを彷彿とさせ、シンセを大胆にフィーチャーしたミニマルな構成は初期ステレオラブとも通じる構築美を感じさせる。この80年代以降のUK/USインディー直系のサウンドは、はっぴいえんどのDNAが色濃い今の日本のシーンにおいては異色なものと映るかもしれない。しかしそもそも、誰とも群れず、誰にも阿らず、自分だけが信じる美しさを貫こうとする気高い青さこそが、インディーロックやネオアコの本質であるはず。雲上を目指してまっすぐ伸び上がっていく歌声があまりにも眩しい。(ドリーミー刑事)

クララズ – 「飛べる気がする」

東京拠点のSSW山内光によるソロプロジェクト・クララズ。本曲は、関西のイベント/レーベル・NEVER SLEEPがフォークスタイルの若手12組をフィーチャーしたカセット・コンピ『FALL ASLEEP』の収録曲だ。

西海岸フォーク・ロックのスタイルを軸とするアーティストで、この曲ではその方向性がさらに振り切れ、クレイジー・ホースばりにザクザクと粗く重心の低いギターサウンドが際立つ。それらに引き立てられる彼女のタメの効いた歌いまわしも魅力的で、奥田民生から志村正彦に連なる系譜の続きがここにあるように感じられる。歌い出しの“飛べない鳥には 一番気持ちいい風を”にたまらなく心を動かされる5月だった。(吉田紗柚季)


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Text By Hitoshi AbeSayuki YoshidaDreamy DekaShino OkamuraKei SugiyamaDaiki TakakuKoki KatoEri Mokutani

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