「今回はとにかく明るい色で、ラウドにぶちかましてやろうっていう意気込みで臨んでいる」――シェイムに訊く最新作『Cutthroat』、ライヴを最高にする方法、イギリスのいま
UKインディー・ロック界の若き番長、シェイム帰還!! 彼らの4作目のアルバム、『Cutthroat』を聴いたとき、そう思わずにはいられなかった。2018年にファースト・アルバム『Songs of Praise』をリリースして以来、2、3年に一度のペースでアルバムをリリースしてきたにも関わらず、そう思ってしまったのは、本作が『Songs of Praise』を彷彿とさせる、疾走感と激しさを兼ね備えていたから。荒々しいギター・サウンドで埋め尽くされた「Cutthroat」では「I was born to die」と歌う。極めつけは両手離し&高速バイク疾走という死と隣り合わせとも思えるアルバム・ジャケットだ。そうだ、シェイムは死ぬ気でこの世に対する反発を表現しているバンドだ、と改めて思った。だが、それだけではなく、本作ではシェイムの多才/彩さも感じられた。ウィルコっぽさを感じるカントリー風な「Spartak」、ポルトガル語で歌うなどラテン的な要素を加えた「Lampião」、ラップと歌唱の対比が印象的なダンス・チューン「After Party」等。この多才/彩さは、各メンバーの活動で試しにテクノを演奏した経験や本作『Cutthroat』のプロデューサー、ジョン・コングルトンの手腕によって引き出されたように思う。
筆者は幸運にも、昨年、『Cutthroat』リリース直前のシェイムのライヴをイギリスで見る機会に恵まれた。シェフィールド郊外の野外会場では、ビールが飛び交い、チャーリー・スティーン(Vo)は客を強力に煽り、30分という少ない持ち時間の間に、2回も客席に飛び込み、クラウド・サーフされ、ジョシュ・フィナティ(Ba)は相変わらずステージを駆け回った。それらの熱は観客にも伝わり、要所要所のハンズ・アップ、巨大サークル・モッシュ、縦ノリが自然に発生し、大盛り上がりだった。シェイムのライヴには、思わずそうしたくなるような人間の内なる何かを呼び起こすものがあるのではないかと感じた。
そんな彼らの来日公演も間近である。ライヴはもちろん、最新作『Cutthroat』、グラミー賞プロデューサーであるジョン・コングルトンとの制作、そして、現在のイギリスにおけるインディー・ロックから世情まで、チャーリー・スティーン(Charlie Steen、(Vo))に訊いた。
(インタヴュー・文/杢谷えり 通訳/竹澤彩子 写真/Jamie Wdziekonski 協力/岡村詩野)
Interview with Charlie Steen(Shame)
──2018年のデビュー以来、コロナ禍を挟みながらも2、3年に1度、コンスタントにアルバムをリリースしていますが、作品を作る上でのインスピレーションやモチベーションになっているものは何ですか?
Charlie Steen (以下、S):というか、つねに自分がワクワクするものを発見しにいかないとさ。新たな刺激というかね。そういう意味では、うちのバンドは有難いことに、今の説明にあったように、この8年間で4枚のアルバムを作らせてもらって、どれもが自分の青春時代の記録みたいなもので、それこそ20歳のとき、22歳のとき、24歳のときって感じで、そのときどきの自分たちの姿が閉じ込められている。10代のころに抱いていた政治や社会に対する疑問もあれば、恋に落ちたり別れを経験したり、友情がどれだけ有難いものかってことをテーマにしていったり。それでいくと、今回の最新作は、生きることにフォーカスしたアルバムなんだよね。こんだけ大変な時代にあっても生きることを楽しむ、それが大事ってことを伝えてる。人生しんどくなったときにその中に逃げ込んで楽しめるようなアルバムにしてやろうっていうね。
──アルバムごとに異なるプロデューサーを迎えていますが、これは、各アルバムでの試したいこと、表現したいことが異なるからでしょうか。
S:どのアルバムも毎回これが最後のアルバムになるかもしれないって覚悟で臨んでるんでね。だったら、今までやったことないプロデューサーと組んでみたいわけじゃないか。もちろん、今まで一緒に組んできたプロデューサーもみんな大好きだし、出会えたことに感謝してるし、素晴らしいプロデューサーと一緒に仕事をする機会に恵まれて、どんだけ自分たちはラッキーなんだって思うよ! 中にはディスカウントに応じてくれたプロデューサーもいて(笑)、うちのバンドの予算じゃそもそも手が届かない、揃いも揃った名プロデューサーばかりだから(笑)。
──今回は、グラミー賞受賞プロデューサーのジョン・コングルトンを迎えたとのことですが、彼と一緒に仕事をしようと思った理由やきっかけは何でしょうか。
S:何年か前にジョン側から打診してくれて、話したことがあったんだよね、たぶん、『Food for Worms』(2023年)のころだったかな。ただ、そのときは話が先に進まなかった。メンバー全員ともそれぞれジョンの手がけた作品の中にすごく好きな作品があって、自分はマネキン・プッシーと一緒にやったアルバムがめちゃくちゃ好きだったり、ギターのショーン(・コイル・スミス)はスワンズの作品が好きだったり、単純にジョンのプロダクション・スタイルが昔から好きでさ。しかも、本人に会ったらめちゃくちゃファニーで面白い人で彼もシェイムのファンで一緒に作品を作るのを楽しみにしててくれてさ。今回のアルバムの『Cutthroat』は、ある意味、ファーストの『Songs of Praise』を彷彿させるとこがあってさ。テンポも速くて、楽しくて、自分について語るよりキャラクターについて歌って、ジョンもそっちの方向性にすごく乗り気で見事にビシッと決めてくれたね。今回「Cutthroat」に対して微妙な反応もあったんだけど、それに対してジョンは 「やかましいわ、最高だっつうの!」って一蹴にしてくれてたからね(笑)。
──ジョンとのアルバム制作はどのように進んだのでしょうか。また、彼との仕事で得たものは何でしょうか。
S:ジョンから得たもの……。とりあえず一番衝撃だったのは、決められた勤務時間通りに働くプロデューサーと作業したのがジョン・コングレトンが初めてだったこと。それこそ 朝10時から夕方7時までっていうスケジュール通りに行動して、それよりも早くスタートすることもなければ時間外まで延長することもない。それ以前の『Food for Worms』、『Drunk Tank Pink』、『Songs of Praise』では気がついたら朝4時まで作業していることもザラで、そういうのもまた楽しいけど、今回はきちんと時間を設定してその中で作業を進められたのが新鮮で楽しかった! スタジオにいる大半の時間、メンバー全員で録音ルームに篭っていたね。テイクもそんなに数を録らなくて、全員で何度か曲を通しで演奏して、そのうちの数テイクだけを録るっていう方式を取っていったんだよね。たしかアメリカの諺かなにかで「くだらないことで汗を無駄にするんじゃない」っていうのがあるけど、ジョンはまさしくそれを地で行っていて、小さいことにいちいちこだわらない、何が重要で何が重要でないかをちゃんと見極められる。夢中になってモノづくりに没頭しているときって、本来ならどうでもいい些細なことが大ごとのように思えることがあるわけじゃん? だからこそ、何が本当に重要で何がそうじゃないのかを見極められる目が必要になるわけで、ジョンはそこが本当に上手い。
──『Cutthroat』は、これまでの実績をすべてリセットして、ゼロから再構築したとのことですが、なぜ、4枚目のアルバム制作にしてこのような選択をしたのでしょうか。
S:今回、歌詞も大半はスタジオに入ってから書いていてさ。事前に歌詞はあったけど、あえてスタジオで書くほうが自分を良い意味で追い込んでいけると思ったから。それともう一つ理由があって今回長期に渡って曲を書いているんだよ、だいたい1年くらいかな。そうなると、1月に自分が感じていることと12月に自分が感じていることって全然違ってくるわけじゃないか。それと歌詞の内容をギュッと圧縮したいと思ったのと、自分への新たなチャレンジとして……、前作の『Food for Worms』のときはベースやギターを弾きながら歌って、それがそのままが歌詞になるみたいな感じだったけど、今回の『Cutthroat』に関しては 「これでいいのか?」「もっと良くできるんじゃないか?」って何度も書いては直し、書いては直しを繰り返した。今回、それで良かったのか悪かったのかはわからないけど、とりあえず自分たちは楽しかったし、良い経験になった。めちゃくちゃ大変だったけど、ものすごくやりがいがあったよ。
──曲だけに限らず、バンドとして自分たちを一から再構築したみたいなところはありましたか?
S:そうだね、さっきも言ったけど、今回のアルバムはファーストの『Songs of Praise』に近いものを感じていてさ。ある意味、原点回帰みたいな、あの頃のあのひたすら楽しい!っていうサウンドに立ち返っている。前作がスローで内省的な内容だったから、今回はとにかく明るい色で、ラウドにぶちかましてやろうっていう意気込みで臨んでいる。
──あなたたちがデビューした2018年ごろよりも、世の中は世界的にとても悪い方向に向かっていると思いますが、『Cutthroat』の作成やその後のツアーでのライヴ・パフォーマンスでの影響はありますか?
S:イギリスに関して言えば、ちょうど自分らが2018年にファーストを出した頃にブレグジットがあったわけでね! そこから首相がコロコロ代わり、その間にコロナがあって、現在イギリスの極右政党であるリフォームUKが支持を拡大しつつあるっていう……。まさにいま言った通り世界がどんどん悪い方向に向かっている。パレスチナの件にしてもそうだし、マジで世界中であり得ないことになっている。とりあえず今のイギリスの状況下では、さっきも言ったように音楽が逃避の手段になりうるっていうのが今を生き抜くための知恵の一つである気がして。ただ生きていることを祝福する、人生を楽しんで、みんなでライヴに来て、せめてこの間だけでも思いっきり弾けようぜ!っていうね。このムードの中、スローで悲しい雰囲気の曲を引っ提げてツアーする気にはなれなかった。とりあえずライヴに来て、その60分なり90分なりのあいだは嫌ことは一切忘れて楽しもうぜ!っていう、そういう空間にしたいわけさ。
──本作『Cutthroat』は、どのアルバムよりもバラエティに富んでいるように思います。1枚目のころのようなストレートさ、激しさはもちろん、エレクトロニクスやロカビリー、オルタナティブ・カントリー、さらにはラテン、ポルトガル語でも歌っていますが、なぜ、1枚の作品の中で様々なアプローチをしようと思ったのでしょうか。
S:それはもう今回のプロデューサーのジョン・コングルトンのやるからには徹底的にっていう姿勢に影響されたもので、例えば「Quiet Life」が「ちょっとカントリー/ロカビリーっぽいよね」ってなったら思いっきりそっち方向に振り切れる。「After Party」はダンスとラップが混ざっているみたいな感じだからそっち方面全開で、「Lampião」なら サンバ+エレクトロニック+ポルトガル語でとことんかましてやれっていうね。さらに「Cutthroat」では超絶クレイジーに、「Spartak」ならとにかくシンプルに徹しようとした。もう何だってアリの世界。「ちょっとパンクっぽいよな」って思ったら、だったらもう単純にパンクでいいじゃん、「エレクトロニックっぽいな」って思ったら、 エレクトロニック方向に全振りする。要するに、一曲一曲ごと、その曲のサウンドで思いっきり遊び尽くすってことをしてきた結果だね。
──ウィルコを意図したという「Spartak」では、派閥や集団心理に対する嫌悪感を歌っているとのことですが、音をアメリカに寄せることで、今のアメリカの政権に対する批判とも取れましたが、いかがでしょうか。
S:うーん、アメリカの政権がどうとかって話ではなくて、 どっちかっていうとファーストに入ってる 「One Rizzler」に近いノリだよな。要するに自分が自分であることに引け目を感じさせるような世間の圧に対して「ファック・ユー」を突きつけているわけだよな。人と違う音楽を好きだったり、人と違う服を着ていたり、サブカルチャー好きだからってことで、自分を変人扱いしてくる連中に対して「黙れ、うっせえわ!」って中指を突き立ててやっているわけさ(笑)。そうは言いつつもいま、イギリスでギター・ミュージックが再び“クール”なものとして扱われていて、ファッショニスタみたいな人種がライヴに集まってくるみたいな状況になっちゃっているんだけど……。そもそもシェイムってクールとは真逆のところから始まってるはずで、負け犬のための音楽みたいなもんだと思ってたんだけどなあ、みたいな(笑)。ともあれ、これ系の音楽を好きな連中って、自分がまさにそうだったからわかるけど、ガキの頃に変人扱いされていたはずで、T・レックスだのジミ・ヘンドリックスを聴いて癒されて、ようやく「自分は自分のままでいていいんだ」って自己肯定できたタイプの人間だと思うんだよな(笑)。だってあの人たちも完全にまわりから浮きまくっていたはずだから(笑)。だから、自分のまわりにいるお高くとまったクールぶった連中に対する「ファック・ユー」っていう、クールであるとかマジどうでもいいから、自分の好きなように生きようぜ!っていう。
──ブラジルの伝説的な盗賊団の棟梁・ランピリオンのことをポルトガル語で歌っていた「Lampião」を聞いた時に、曲全体から感じた脱力感がGetdown Servicesを思い出したのですが。
S:ああ、確かにエレクトロニックな感じとかスポークン・ワードを取り入れているところとか。
──曲を作るうえで、ロンドンやイギリスで活動しているミュージシャンからの影響はあったりしますか。
S:いや、めっちゃ刺激を受けまくってるよ。しかもほとんどが自分たちの友達っていう(笑)。ここ最近でもブラック・ミディに、ブラック・カントリー・ニュー・ロードに、 めちゃくちゃいいバンドがたくさん出てきてるし。さらにロンドンから出てアイルランドに飛んだらフォンテインズD.C.がいて、イギリスだといまの話にも出てきた、ブリストル出身のGetdown Servicesとかさ。あるいはスウェーデンにはバイアグラ・ボーイズがいるし、オーストラリアにはアミル・アンド・ザ・スニッファーズだのザ・チャッツだの、基本、 友達の音楽を聴きまくってるよ。
──本作を制作するときに、オスカー・ワイルドをよく読んでいたとのことですが、どう言ったところに惹かれたのでしょうか。
S:そうそう、オスカー・ワイルドが好きで、あのパラドクスな感じが個人的にはすごいウケるっていうか、ツボなんだよね。何が正しくて何が間違っているかの二択じゃなくて、その中間を掘り下げてるっていう。例えば「Lampião」のモデルになっているランピアンを英雄と捉える人もいれば、化け物だと思う人もいる。その二面性が面白いわけでさ。しかもその裏にある社会的、経済的、歴史的な背景を知ることで興味深くなる。まあ、もちろん、今回の曲のなかではそこまで深堀りこそしてないけど、それでも十分興味深いテーマではある。というか、まさにランピアンっていう人物自体に興味があったんだよね、最初に話したように自分よりも物語のキャラクターについて今回は描きたいと思ったんで。そうなると、やっぱり矛盾を抱えたキャラクターのほうが書き手としては断然面白いわけさ。いつでもハッピーなポストマン・パット(筆者注:イギリスの幼児向けアニメ、郵便屋のパットさん)とその飼い猫とか、そういう単純なキャラよりはさ(笑)。
──本作、あるいは曲作りのうえでシェイムが一番大事にしているものは、世の中への不条理に対する不信感、なのでしょうか。
S:マジでそう。そもそもシェイムの根っこにあるものって、社会とか世間的な価値観の押しつけに対する反発があると思うんだよね。自分の不安やコンプレックスを受け入れて、まわりからみっともないだの恥ずかしいだの言われることに対して、「自分はこういう人間なんで!」って堂々と言える強さだよな。それこそ初期の頃に言われていた「お前なんかに歌えるわけがない」って意見だの、体型的なコンプレックスだのさ。要するに自分のまわりで起きていることに問いを立てるっていう。「なんで?」、「それって間違っているって誰が決めたの?」っていう。さっきの話でも言ったように、アルバムの一枚一枚がこの8年間の自分たちの青春の記録だから。しかも、若いうちは答えがまだ定まってないからこそ次から次へと色んなことを問い続けるわけじゃないか。その答えを探求し続けるってことが、当たり前のことかもしれないけど、めちゃくちゃ大事なんだよな。
──今回のアルバムっておそらく27、28歳前後の今のあなたたちを記録し、映し出しているわけじゃないですか。その地点からの視点で、今回のアルバムで一時的にどのような問いに導かれ、どのような答えに到達していると思いますか?
S:ああ、良い質問。さっきの「Lampião」の話で触れたことにも通じると思うんだけど、つまり「悪人は善行をすることがあるのか?」あるいはその逆で「善人が悪をはたらくこともあるのか?」って問いだよね。で、どちらの答えも、どう考えても「イエス」なんだよな。人生は長く複雑で、そのどちらか一方ってわけにいかないから。目の前に起きている出来事の状況や背景について想像力を巡らすってことだよな。そう考えると、臆病さってそこまで恥ずべきものなのか?と。そりゃまあ「臆病者」なんてレッテルで呼ばれるなんて屈辱でしかないけど、それでも、日常生活を生きていたら普通にビビることだってあるわけじゃないか。あと、もう一つのテーマとして、さっきも話した今回の「Cutthroat」ってシングルのメッセージに体現されているように、「生きているうちにやりたいことをやれ」っていうことなんだよな。何しろ自分はカトリックの家庭で育って、部屋の壁には十字架に架けられたイエスの絵がかかっていたくらいだからね。宗教って、人生の大切さだとか「いつ何が起きてもおかしくない」って感覚を身近なものとして感じさせるわけじゃないか。今みたいな不安定な時代だからこそ、いま生きているうちに人生を楽しみ尽くす、自分のやりたいことをやって人生を生ききることが大事なんだって本気でそう思う。やりたいことをやるって言っても、裸で街を走りまわるとか、そういうんじゃなくてさ(笑)。もっと身近なギターを弾いてみたいけど人からバカにされるんじゃないかとか、絵を描いてみたいけど自分には才能がないと思い込んで尻込みしているとか、そういう自分が設定した小さなリミットを外していこうぜってことを訴えかけてるわけさ。
──結成したころは10代、デビューしたころは、20歳くらいでしたが歳を重ねることによる心境や音楽に対する考え方等の変化はありますか。
S:確実にあるだろうね。前作の『Food for Worms』が全体的にペースダウン気味というか、とはいえ、当時はまだ25か26歳くらいで、「いや、まだ全然若いんだし、ここでスローダウンするわけにはいかないんだけど……」みたいな気持ちだったし、あるいはライヴに関しも年齢を重ねるにつれて、目標設定とか求められるものも大きくなっている気がするし。最初にバンドを始めた頃は、まさに当時の見たまんま、毎週末ブリクストンのウィンドミルに行ってダチとつるんでそれこそが人生のすべて、みたいな……。でも、今ではみんなあの頃とは違う生活をしているわけで……。とはいえ、どうだろう?最終的には全然変わってないっていう気もするけどさ……。基本、音楽好きって何歳になっても10代の頃の自分に戻してくれる感覚を追い求めているところがある気がしてて。それはこの先歳を取ってもずっと変わらない気がする。とはいえ、自分もまだ28歳なわけでね。落ち着くには早すぎるわけさ。
──また、あなたたちは、デビューしたころからロンドンのバンドたちのリーダー的存在でしたが、最近のロンドンのシーンはいかがですか? 先ほどウィンドミル周辺のブラック・ミディやブラック・カントリー・ニュー・ロードなどの名前も挙がっていましたが、ロンドンのシーンは、演奏している音楽が異なっていてもどのバンドもつながりがあるように感じます。
S:というか、最近はロンドン以外にも散らばっている気がするけどな。それこそマンチェスターのウエストサイド・カウボーイだの、ブリストルのGetdown Servicesだの……。最近のロンドン勢だと誰になるだろう、メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードあたりかなあ……。あとブラック・ミディのキャメロン・ピクトンのソロ、マイ・ニュー・バンド・ビリーヴもめちゃくちゃいい。 今一番新しいバンドってロンドンよりも地方から出てきてる感じがあるんだよね。ブラック・カントリー・ニュー・ロードも結成はロンドンでも、メンバー自体はロンドン出身じゃないし、しかも、もうすでに何枚かアルバムを出してきて、もはや若手域ではない気が……。イギリスで今一番勢いがある若手で思い浮かぶのは、ウエストサイド・カウボーイ、Getdown Services、メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードあたりになるかな。
──日本公演も間近に控えているということでライヴについてもお聞きしたいです。私は昨年、シェフィールドで開催された音楽フェス、《Rock’n’Roll Circus》であなたたちを見ました。クイーン・オブ・ザ・ストーン・エイジがヘッドライナーの日のうちの2日目、木曜日です。他にもマーダー・キャピタルやバイアグラ・ボーイズが出演していて、全体的にアグレッシブなラインナップでした。
S:あー、覚えてるよ。
──この時のあなたたちのライヴで特に印象に残っているのが、「Cutthroat」での観客との一体感、「One Rizla」での大変激しいサークル・モッシュでした。あなたたちのライヴはこんな風に観客を盛り上げることで有名ですが、これは意図的なものでしょうか?それとも観客との相乗効果によるものでしょうか?
S:もう、まさにそこを狙いに行っているよ。最高のライヴは最高のオーディエンスが作るものだと思っているんで。最初の頃から自分は歌い手としてそこまで歌が上手くないって自覚があったんで(笑)、「だったらお客さんに混じって一緒に楽しんじゃえばいいじゃん」ってスタンスでこれまでずっとやってきてる。そうなるとバンドと観客の線引きがなくなってきて、ただみんなで一緒に楽しむための場になる。まさにそういう場にしたいと思っているよ。
──フジロックや前回の来日時にも経験あると思いますが、日本のオーディエンスも時として激しいので、今からどんなライヴになるのか非常に楽しみです。
S:もうね、前回の来日がはるか昔のことのように思えるし!前回のときは東京のヘッドラインだけで、しかも日本酒で相当酔っ払っていたから記憶があいまいっていうのが正直な感想(笑)。
──来日公演、どのようなライヴにしたいとか構想はありますか?
S:そりゃもう、ラウドで汗だくでひたすら楽しいってもんにしたいさ!セットリストも今回の新しいアルバムだけじゃなくて、『Food for Worms』や『Drunk Tank Pink』からの曲も幅広くやるつもりだよ。何しろ間が空いているんでね。アメリカでやったときも、全アルバムからまんべんなくやって好評だったんで、今回もその路線でいこうと。つうか、どのバンドもこぞって日本好きだからね。話の中で「来週、日本でライヴだよ」とか言われると、みんな「マジか、めっちゃ羨ましい!」ってリアクションになるし!それと日本で服も仕入れたいって計画しているよ。
岡村詩野(以下、O):私からも追加で質問させてください。現代のイギリス社会で一般市民が直面している問題を挙げるなら、生活費の高騰、国民皆保険の機能不全、移民問題だと思うんですね。これらがシェイムが曲を作ったり演奏するにあたって、モチベーションになったり怒りの原動力になっているということはありますか?
S:さっきの話にもあったけど、今回のアルバム全体が今のこの悲惨な状況からの束の間の逃避を提供したいっていう思いから作っていることもあって、ロンドンなんてマジで悲惨な状態で、最初のほうの話にあったように極右政党のリフォームUKが支持層を伸ばしているとか、そういう背景もある。物価もあり得ないほど高いし、ネガティヴなことも山ほどあって、なんかちょっとコロナの時期を思わせるような、恐怖だし、先がどうなるか誰にもわからないっていうような。あの時期って、自分から美しいものを見つけにいくしかなかったじゃん。それこそ音楽でも、ギター弾くでも、曲を書くでも、絵を描くでも、日本語とか外国語学習に挑戦してみるとかさ。それが今回の曲にどう影響してるかっていうと、たしかに怒りとか問いみたいなものはあるんだけど、むしろそういうクソみたいな現実から逃げるための逃避先が今回のアルバムであると思ってる。
O:80年代には今も活躍しているポール・ウェラーやビリー・フラッグなどのアーティストがRed Wedgeという団体などを起ち上げて一致団結して社会運動に匹敵するような活動をしていましたが、アーティストが協力し合って社会を変えていくみたいな動きはアンダーグラウンドだったり、あなたのまわりで起きていたりしますか?
S:それで言うなら今うちのバンドを含めて周辺で一番熱いのはパレスチナ支援のチャリティだよな。他にもシェイムとして、暴力や家庭内虐待の被害に遭った女性たちを支える Women’s Aid っていう団体のためにもいろいろやってきたんだよね。Red Wedgeみたいな若い世代に向けた活動は、今、パッとは思いつかないけど……。とはいえ、正直、目下、一番関心があるのはパレスチナ支援で、チャリティ・ライヴに参加したり、ツアー中にも絵を描いて売って、その売り上げをパレスチナ支援のため寄付したりしてきているよ。
O:今のイギリスの首相のキア・スターマーって実はインディー・ロックとかポストパンクに影響を受けている人で日本では知られているんですけど実際にはどうですか?
S:いや、全然そんなキャラじゃないはずだけど(笑)! イスラエルに対しても完全に及び腰で何も言わないし! まあ、そうなっているのは裏に何か別の魂胆があるんだろうけどさ。みんな労働党が何かを変えてくれるって期待していたのが、実際のところ何一つとして変わっちゃいないように思えるし。いやもう、マジでシャレにならない状況っていうか、今のイギリスって何もかもがヤバいことになっていて、みんな誰かのせいにしたくて、とりあえず移民を責めているっていう。明日の生活費もない人がいるし、マジでのっぴきならない状況に来ている。本当に厳しい状態で、どんどん深みにハマっていく一方で、マジで出口なしの沼にハマっていると思うよ。とりあえずキア・スターマーが若者から支持されているとか、信用されてるとかはないんで(笑)!
<了>
Text By Eri Mokutani
Photo By Jamie Wdziekonski
Translation By Ayako Takezawa
Shame
『Cutthroat』
LABEL : Dead Oceans / BIG NOTHING
RELEASE DATE : 2026.09.05
TOWER RECORDS / HMV/
Amazon /
Apple Music
Shame JAPAN TOUR 2026
2026年4月24日(金)東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
開場:18:00 開演:19:00
詳細はSMASH
関連記事
【REVIEW】
Shame『Food For Worms』
https://turntokyo.com/reviews/shame-food-for-worms/
【REVIEW】
black midi『Schlagenheim』
https://turntokyo.com/reviews/schlagenheim/
【INTERVIEW】
キャメロン・ピクトンがblack midi休止、新プロジェクト始動を経て語る
──ただふざけることには興味がない、でもすべての曲にジョークを入れる
https://turntokyo.com/features/my-new-band-believe/
【INTERVIEW】
ブラック・ミディの活動でも知られるジョーディー・グリープ インタヴュー
「ザッパのまあまあな作品群をなんとか聴くことができれば、彼の最高傑作を聴いたときに真の価値がわかると思う」
https://turntokyo.com/features/geordie-greep-interview/
【INTERVIEW】
「天使の羽根は結局誰のものかわからなかった」
フォンテインズD.C.『Romance』インタヴュー
https://turntokyo.com/features/fontaines-dc-romance/
【INTERVIEW】
「単なる記録の過程で最終形ではない、と思えて解放された」
ブラック・カントリー・ニュー・ロードが語るライヴ・アルバム
『Live at Bush Hall』
https://turntokyo.com/features/black-country-new-road-live-at-bush-hall-interview/
【FEATURE】
BC,NR・フレンズ・フォーエバー!
──「あの頃」のサウス・ロンドンとブラック・カントリー・ニュー・ロードの尊さについて
https://turntokyo.com/features/black-country-new-road-2025-vol1/
【FEATURE】
ブラック・カントリー・ニュー・ロードが示す「変化の美学」
──ライヴが音楽を再定義する
https://turntokyo.com/features/black-country-new-road-2025-vol2/
【FEATURE】
TURNスタッフ/ライター陣が選ぶ
「私の好きなブラック・カントリー・ニュー・ロードこの1曲」
https://turntokyo.com/features/black-country-new-road-2025-vol3/
