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そこから“漏れる”
──アルコール、パンク、セクト、ロックンロール
小金井公園にて

20 October 2026 | By Keisuke Ninomiya

エクストリーム・ミュージックを起点に、ノイズ、ハードコア、パンク、ポップス、ヒップホップ、あらゆるジャンルの境界を蹴散らす6人組バンド、moreru。《AWDR/LR2》へと移籍して第一弾シングル『詩人に口無し』をリリースしたばかりで、10月21日の渋谷《WWW》でのワンマン「wwwを切断してニヒリズムの向こう側へ」、10月23日の主催イベント「evilspa 10」を控える、フロントマンの夢咲みちるとノイズ担当の岩本雪斗に話を聞いた。

取材の舞台は、秋の夜に静まり返る小金井公園。缶ビールを手に地べたに座り込んだ暗闇の東屋で、彼らが語ったのは“ノンセクト・ラジカルなパンク論”、新自由主義に平面化される風景、そして自分たちの名に刻まれた“漏れる”という芸術の可能性だった。
(インタヴュー・文/二宮慶介[DAWN] 写真/船津晃一朗)

Interview with moreru(Michiru Yumesaki, Yukito Iwamoto)

取材はmoreruに縁のある場所でやりたい、と希望を伝えたところ、バンドから指定された場所は、都心から西へ、多摩の入口にあたる、小金井公園のそばにあるファミリーマートだった。待ち合わせ時間の少し前にスタッフと合流し、しばらくすると、夢咲みちると岩本雪斗の2人が現れる。夢咲みちるは、黒髪の長髪に全身の服装もブラック、パンツのサイドにあしらわれたレースが目を惹く。岩本雪斗は耳付きのニット帽からのぞくオレンジ色の髪が目を隠し、ミステリアスだ。挨拶もそこそこに、みちるが言う。

「コンビニで酒でも買って、飲みながらやりましょう。インタヴューは公園でいいんじゃないですか」

店内でレーベルの担当A&Rが持ったカゴに、みちるは少し遠慮しつつも6缶パックのビールとワインを入れる。

地図を見る限り、小金井公園はかなり広そうだ。辺りは閑静な住宅街で、この2人はどう見ても異質だ。とはいえ今はその異質さも闇に紛れている。3連休最終日の夜だったこともあってか、園内に人の気配はほとんどない。昼間はランナーとか、楽器の練習してる人もいるんですよと、みちるが歩きながら教えてくれる。近くにはスタジオジブリもあるから宮崎駿がいるかもしれない、まだ会えてないけど、とも。程なくしてたどり着いたのは、木立の中の東屋だった。灯りはほとんどなく、互いの顔もよく見えない。みんなで地べたに円になって座り乾杯したら、自然と話は始まった。

みちるは出身地である八王子の高校の、美術コースに通っていたという。偏差値で言えば誰でも行けるような学校だが、座学はすべて文系で、毎日美術の授業がある、美大に行く人間を育てるような場所だった。

「1年で一通り、油絵とか日本画、彫刻、あとデザイン系ってやって、2年でデザインとアートに分かれるんですよ。で、僕はデザインへ進んで。デザイン的なことの方が圧倒的に得意だったから。それからすぐ辞めましたね」

2年生の9月だった。

「だから毎年なんかね、9月ぐらいになるとソワソワしだして、なんか思い出しちゃう、みたいな感じがすげえあって」

多摩エリアで死ぬ

「MV撮ったりする時は結構ここだし。飲食店とかにしちゃうと、やっぱさ、なんかあれ(堅苦しい)だし。あとはこの辺をめっちゃよく散歩してるから。それぐらいしかないんだけど」。小金井公園を取材場所に選んだ理由は簡潔だった。ちなみに2022年リリースの「kireta otaku」のMVも、ここで撮ったものだ。

「僕は八王子出身、てか西東京なので。あと都会がすごい嫌いっていうか、人がいっぱいいる世界がすごい苦手なので。だから基本的に、ギリ多摩エリアと呼ばれるこの広大な世界で俺は死ぬんだっていう、もう本当に生まれと結びついた、そういうアティチュードですね。イデオロギーとかにもならないような」

つまりフッドということですね、と聞くと「まあフッドですね」と笑う。

「しかしあれですよ、この辺は大学が三つぐらいあって、そういうやつらが花火とかしたりってこともある。で、この今いる東屋が要は一位なんですよ。ここの場所が取れたらもう勝ちみたいなノリがあるから。ここを勝ち取るかどうかっていう」

公園の向こう側は、また様子が違うらしい。

「東小金井と武蔵小金井の方のちょっと下、そっち側にスケボーパークとか、バスケットボールのゴールとか、あとドッグランとかがあって。あっちの方が子供たちが遊ぶ場所なの。だから、ここも分裂が起きてると。西側、小金井諸国の私たちは、やっぱりここが拠点なんだ、みたいな感じで。まあ、そんなことはないんですけどね、そんなことは」

パンクでいい

moreruは、夢咲みちる(ヴォーカル)を中心に、コジマアツヲ(ギター/ヴォーカル)、石肉(ギター/ヴォーカル)、taga(ベース/ヴォーカル)、Dex(ドラムス/ヴォーカル)、岩本雪斗(ノイズ/ヴォーカル)の6人組のバンドだ。自らを”霊障系”と名乗り、ハードコアもパンクもノイズも、ひとつの曲の中に同居させる。

もし誰かに「moreruってどんなバンド?」と尋ねられたら、どう答える? そんなことを聞いてみた。自分のバンドを自分の口で説明させる、初っ端から野暮な質問をしてしまったと今となっては思う。

「えー、それって自分の口から言うの結構むずいですよね。立場的に。でも別にどう呼んでもらってもいいけどね。どう言われたらかっこいいかな。moreruってこんなバンドだよって、誰かが誰かに言ってるわけでしょ。それだと、なんか架空の悪口がいっぱい聞こえてきちゃうような。……でもいや、イケてるよね、間違いなく。っていうのはですね、ヒップホップ的な感覚から見ても、ロック、ハードコア、バンド的な感覚から見ても、かっこいいはかっこいい、イケてる、としか。あと新しい」

一方で、外からはこう言われているのでは、という気もしていると。

「moreruってすごい暗いよ、とかさ。音はすごい激しいけど、言ってること暗いよ、とか。そういう言われ方をしてるのではないかな、っていう感じは思ってはいるけど」

では、自ら名乗っている”霊障系”はどうか。

「霊障系って聞いても意味わかんないじゃないですか。このTシャツ何? moreruだよって。え、何それ? どういうバンド? 霊障系だよって。しかもあと霊障っていうのも、発音の仕方次第で、シニフィアンとしては冷笑っていう意味も含んでいるわけで。それで説明をするのは結構難しいけど。……あ、ピンときた。パンク、パンク・バンド。パンク・バンドって言ったらたぶん話が早い。で、そこからすべてが起こるんですよ、批評というものはね。パンクって言ってくれたら。自分はパンクだと思ってるから。パンクでいいです、パンクで」

ただしみちるの言うパンクは、いわゆるパンクと聞いてすぐに想起される様式をなぞることではない。

「パンクっていうものの、本来的な意味みたいなものがやっぱ重要で。俺はこれをパンクのすごい素晴らしいところっていうか、まあアナキズムとかの素晴らしいところだと思うけど、パンクって、先行世代を斬首するみたいなノリってすごいあると思うんですよ。今まであった常識死ね、みたいなところ。でもそれが硬化しすぎると、その態度自体ももはや上のものになってる、っていう世界なんですよ。パンクっていう先行世代が掲げるパンク、それがかっこいいんだ、みたいなノリがすごいあって。僕はそれから生まれてる子どもっていうか。2001年生まれって、もうパンクとか知らんよ、みたいな感じだから。でもやっぱり、パンクっていうノリがすごいあって。で、パンクっていうノリをやるには、やっぱ鋲ジャン着て……鋲ジャン自体はすごい好きだけど、そういう様式美的なことをやってるのではないので。だから、もうパンクとしか言いようがないことを俺はやってるな、っていう感じはすげえするんですよね。moreruってどんなバンド? パンクだよ、っていうのが一般常識になってくれたら、僕は嬉しいですね。音楽の形式としては言いにくいじゃないですか、なかなかmoreruがパンクとは。パンクですね、僕らは」

新作の3曲

今回の新作は3曲入りで、《AWDR/LR2》にレーベルが移って最初のリリースになる。1曲目の「詩人に口無し」は、目まぐるしく展開する一曲だ。彼が繰り返し話していた「いろんな音楽をやりたい」という言葉どおりの、まさにmoreruを象徴している。新天地の1発目にふさわしい一曲だが、それは移籍を意識して作ったのか。

「レーベルが移るから作ったっていうことでは全然なくて。あった曲の中で、一番良くなりそうな曲を育てていったみたいな感じ」

デモは、前作の『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』(2025年)を出した頃にはもうあったという。アルバムを作り終え、インタヴューを受けたり、ツアーに出たりしていた時期に作ったものだと。

「『死の逆(生ではない)』って曲だけは、なにか肉付けっていうか。この3曲を統合する一本の思想が必要かなって思って。それは改めて作りました」

3曲目の「死の逆(生ではない)」は、ほぼ全編がシャウトで埋め尽くされている。歌詞を叫ぶ声の下で別の絶叫がうなり、その上をシンセのループが回り続ける。冒頭と終わりのフックでは、バラエティ番組で耳馴染みのあるオーケストラヒットが鳴り、妙なポップさを添える。曲中ではギターがメロディを歌い、そのままブラストビートになだれ込む。そのすべてが、ほとんど息継ぎなく押し寄せてくる。

党派性を疑う

表題曲の「詩人に口無し」は、ニューヨーク・ハードコア由来の極悪ビートダウンを真正面から取り入れている。様式をぶち壊すのがmoreruの身上だとすれば、様式的なものをあえて持ち込んだことになる。moreruを表層だけ見て、ハードコアの畑から色眼鏡で見ている人への罠なのではないか。うがった読みをぶつけると、みちるはまずこう話した。

「ハードコアもパンクも、僕はめちゃくちゃリスペクトしてるんですよ。ヒップホップもハードコア・パンクも、全部。ニューヨーク・ハードコアから来たビートダウンも、そこからの日本のバンドたちも。でも、それってなんか本当にセクト運動っていうか、もう党派性でしかなくなるっていうか。だから、ハードコア的なビートダウンを発動するのって、相当リスキーなことだと思ってる。ここ数年、日本でもビートダウンが割と流行ってるし、ヒップホップ的な文化との相性もすげえいいじゃないですか。DCとか素晴らしいと思うんですよ。でも、僕みたいな超外部のやつが急にそういうことをやるのも、無限の可能性の一つだから全然いいよね、って思ってて」

とはいえ、ビートダウンを取り入れた理由はもっと単純なものだという。

「これちょっと、文脈として入れたらクールだろとかではなくて、割とシンプルに、俺もそういうのを聴くし、曲の展開として欲しかったから入れた、っていうのはまず言っておきたいんですけど」

それでも、文脈で言うならこうなる、と続ける。

「ああいう党派性、特にヒップホップとかすごい顕著だと思うけど、要はなんか、俺らがいてお前らがいる。俺らの中でやっていこう、みたいなノリ。そういうのが乱立していくみたいなさ、僕はちょっとそういうのとはノリが合わないから。相性が良くないから」

ビートダウンとの接点は、思いつきではない。

「自分はフォンク(Phonk)とビートダウンの相性はすごいあると思ってて。KLONNSってハードコア・バンドが『Discipline』ってイベントやってたんですよ。その時のDJが、まだ2020年って渋いフォンクみたいなのが日本のハードコアのシーンにおいては一般化されてなかったと思うんだけど、そういうのをかけてて。俺はその瞬間に、フォンクとハードコアは絶対にこの後合流するって、本気で思ってましたね」

フォンクについては、さらに熱が入る。

「フォンクの意匠は、すごい大好き。てかフォンク自体がやっぱりすげえやばいカルチャーっていうか、ストリートとオタクっていうか、ブラック・メタルとか悪魔崇拝とかやってるインナー・サークルのやつの合体だと思ってるから。こういうのが無限にあると思うんですよ。フォンクとハードコアもあるし、だからアニメとグラインドコアもあるだろ、みたいな。感覚の言葉だから、ちゃんと実証はないけど。あとその頃から、ダンジョン・シンセっていう、ブラック・メタルのサブジャンル的なものとフォンクがぶつかることも、なんとなく予見していたし。なんなら自分たちがやる方向としてはそっちなんじゃないか、とか。とにかく、村とか党派とか、そういうセクトを破壊。僕は本当、ノンセクト・ラジカルなやつっていう感じですね」

ヒップホップでもよく言われる、身内は身内でよそはよそ。本来ヒップホップが掲げる思想の一つにはユニティーがあったはずだが、いつしかその傾向は強くなった。細分化されたサブジャンルではなおさらだ。そう水を向けると、彼はうなずいた。

「そうそうそう。だからこれが、俺がパンクっていうものを音楽の入り口にしてよかったなって思うことで。やっぱり圧倒的に懐疑があるわけですよ、デカルト的懐疑が。本当にこれは、本来の意味に則っているかみたいな。パンクはそれを疑う。疑うという態度が、僕はパンクって名付けるべきもの」

ただ、本人も矛盾には気づいている。

「でもさ、俺だって西東京でとか結構言ってるわけだから、そういう要素があるんですよ。要は、村、村よ。自分はそれをアイデンティティにもしちゃってるからさ、もはやもう後戻りもできないぐらいあるわけで。だから、自分の中にある圧倒的な矛盾をね。それはどうなのって言われたらさ、もうごめんなさいしかないんですけど。まあでもなんかね、別に両立していいんじゃないかな。愛憎ってことですよね」

バンドは続けていくうちに、どこかのシーンと合流し、ひとつの塊に取り込まれていくことがあるが、moreruにはそれが起きてこなかったように見える。ただ、彼らが盟友の小腸分裂と主催する「evilspa」は、それなりに大きな塊になってきているのではないか。筆者が初めて彼らを観たのも、2023年、ギターウルフを呼んだ5回目だった。

「まあ確かに。でも例えば、僕らは『霊障』ってイベントもやってて、俺が組まないと絶対に対バンしないメンツっていうのを呼んでる。うまく混じり合ったのが『evilspa』って感じ。出てくる音楽自体には制限がない、っていう世界が大事っていう、なんとなくの認識ですね。本当に固まっちゃうとダメかなっていう。でも世界的に今、固まってるものがどんどん増殖していってる雰囲気はある。それが、各国の帝国復活みたいな、トランプが出たりとかみたいなところにも、僕の中ではちょっとつながっているんですね」

「evilspa 10」フライヤー

移籍

前作、前々作は《MUSIC MINE》から出していた。移籍の経緯を聞くと、少し言葉を選ぶようにして答えた。

「スペシャ入ったのってどういう流れでかは、あんま覚えてないんですよね。そういうの全部人に任せてるというか」

本人が覚えている範囲では、こうだ。中国でのライヴを企画してくれるなど、ずっとお世話になっていたショウさんという女性が、スペシャに入った。

「そしたらやっぱさ、え、待って、みたいな。え、ちょっと入れてくんない? みたいな感じだったんじゃないかな。ショウさんは、moreruをすっごい好きでいてくれて、アジア圏、中国とかにmoreruの音楽をすごい発信してくれてる方で。ちょうど時期が被ったみたいな感じ」

ラッパーも多く所属するレーベル、《AWDR/LR2》にmoreruが入ったことは、かなり意外な出来事だ。

「それで、ショウさんが社内ですげえ奮闘してくれたおかげで、関さん(現A&R)が手挙げてくれたんだ、っていうのが俺の認識。関さん、ハードコアとか好きだし、レーベルのデザインとかめっちゃかっこいいし。あと、サイキックTVのCDを出したことがある。その時点で、やばすぎるみたいな感じがあった」

フィジカル

今作のフィジカルは、7インチのカラー・ヴァイナルでリリースされる。彼はかねてから、フィジカルは絶対に出したいと言っていた。

「フィジカルは絶対。昔ってCD取り込んでましたよね。それの最後の世代が多分俺とかだと思ってて。だから盤を買うのは、いまだにやっぱり楽しいというか。音楽ってMP3のデータっていうよりは、CD自体が音楽だし。歌詞も音楽だし、その人のヴィジュアルも音楽だし、って思ってるので。サブスクが急に滅んだとしても、CDがあればそこに音楽が記録されてるわけで」

『詩人に口無し』7インチ・カラー・ヴァイナル

サイゼの壁画

2曲目の「思弁的射聖障害残尿論」は、アコギの弾き語りからノイジーなギターへと展開し、ノスタルジックなシンセが交錯する一曲だ。1曲目の「詩人に口無し」とは打って変わってシャウトはなく、メロディックなヴォーカルがフォーキーで生々しい。曲の冒頭には「サイゼの壁画にいる天使 by新自由主義」という強烈なラインもある。

moreruは楽曲だけでなく、アートワークも大きな魅力のひとつだ。あのエヴァ的明朝体にグリッチをかけたデザインは、基本的にみちるが作っている。絵が欲しいときはイラストレーターでもある岩本に「こういう絵を描いて」と発注する。今回のジャケットの四隅にいる天使も岩本が描いた。この天使のモチーフも、やはりサイゼリヤの壁画だろうか。

「めっちゃサイゼの壁画ですね。まあもうこんなことさ、この時代に別に言うことでもないけどさ。サイゼでもマクドナルドでも何でもいいんだけど、要はその、グローバル資本主義みたいなもので、こうバーッと平面にされる世界みたいな。ロードサイド、田舎にもどんどんマックとか建つみたいな世界を、別にまあ、否定も肯定もせずに眺めている。というか、そういう世界に侵されている私たち、みたいなことなんで。そもそもヨーロッパのアートって、サイゼの壁画とかが表象してるものは、別に神のことじゃないですか。聖書のことじゃないですか、本来的には。でもそういうのが無限に、単なる意匠として目の前にバババって現れていく、その世界を僕はただ見ている、っていう感じで。サイゼの壁画とか、ロードサイドのマクドナルドとか、すき家とか、何でもいいけど。そういうことを切り離すことはできない、っていう感じがすごいある」

誰もが思い浮かべられる記号でもある。そう言うと、すぐに付け加えた。

「まあでもそれとは別で、サイゼリヤはいいですよ。俺、そもそも思想ないんですよ、別に。僕は見てるだけだから。観察をしてるだけで。サイゼは安いし、あとサイゼのワインはほんとやばいですよ。あれはドラッグなので。とにかくサイゼリヤは僕は大好きです。それで言ったらマックも好きですね。すき家、吉野家、松屋、全部好きですね。あとブックオフもハードオフも。ロードサイドにあるもので嫌いなものなど、あまりない」

『詩人に口無し』アートワーク

思想はない

「自己分析は結構苦手っていうか、できないっていうか。圧倒的にもう懐疑が始まって、たどり着かない答えみたいになっちゃうからあれだけど。俺に対して俺が言えることって、俺は本当に思想ないんですよ。これが大事だよね、とか一個もない。っていうか、この年でそういうイデオロギーが確立されてるやつらはバカ。頭おかしいと思う。だってなんで自分がさ、たかが25年の経験でさ、こんな歴史があるのに、何自分の考えとか持っちゃって、っていう感じなんですよね」

だから、意味を問われると固まってしまう。最近もそんなことがあったという。

「バイト前に、どうしてもインタヴューを入れないといけないスケジュールで。しかもリモート。で、自分起きたてで、お酒もこれからバイトあるから飲めないし。すごい素面の俺に、要はなんか、自分のペニスについて解説してくれよ、みたいに言われてるような感覚になって。つまり何を聞かれてるかっていうと、こういう歌詞ってことはどういう意味なんですかとか、どういう考えなんですかとか。それで本当に悩んじゃって、結構えぐい沈黙とか。5分ぐらい黙っちゃったりしてて。意味か、意味か、意味か、みたいな。そうするとデカルト的懐疑が始まるわけで。とにかく僕はそういうやつなんで」

酔拳

歌詞には、難解な現代思想や古典文学の引用もあれば、ファミレスも出てくる。ではみちるはこういう言葉を、どうやって出しているのか。過去のインタヴューで、歌詞は酔っ払って、通常じゃない状態に自分を置いて書いていると話していた。

「そう。だから僕はあれなんですよ、酔拳の使い手なんだなって。世界はまあとにかくおかしい、狂ってるっていう前提だとしたら、自分だけは冷静にいよう、みたいな、そういう道徳的な感覚がすごいあるんですけど。一方で、そういう世界でちゃんと死なないためには、やっぱり狂った方にチューニングを合わせることが大事なんで。で、そうすると自分も楽しいので。だから、すごい誤解されがちなんですけど」

どう誤解されるのか。

「俺はすごい暗くて繊細な文学少年みたいなやつと思われがちだけど、それは全く誤解で。僕は基本的に酔拳の達人なのであって。まあ、達人になろうと思ってるわけであって。狂って歩いて詩や曲を書く達人ですね。あらゆる酔拳の達人の先輩方から、僕は影響を受けているので」

その先輩として挙げたのが、ENDONの那倉太一と、killieの伊藤だった。日本のハードコア、エクストリーム・ミュージックを語るうえで欠かせない二つのバンドだ。周りにそういう先輩がいたわけでもないのに、高校生にしてなぜ知り得たのか。

「元々僕ツイッタラーで、めっちゃ、今で言う音アカみたいな、ああいうやつだったんですよ。で、私を構成する何枚、ってあるじゃないですか。俺は絶対に舐められない何枚を作る、みたいな感じで。一回しか聴いたことないやつとかも入れて。逆に今の10代の音アカがぬるいなと思うのは、あまりにも手札がなさすぎる。俺らは、killieとかENDONなんてその時生きてたら絶対に知らないといけないし。で、ライヴも行かないといけないし、って感じでやってたんですけどね」

moreruのメンバーとも、そこで出会った。ドラムのDexも、もとは音アカ友達だった。その2人で始めたのがmoreruだ。バンドを始めてから、その伊藤と那倉が、彼らに興味を持ってくれた。

「特にENDONの那倉さんは西東京の人で、家も結構近くて、よく飲んでるんですけど。とにかくね、酒をめっちゃ飲んで、ババババババって喋るっていうことに命をかけているから。だから、そういうコミュニケーションが起きた時に、俺は絶対負けない。それに負けない、っていう感じがすごいある」

酔って崩れた状態で出てくる言葉こそ、自分の中にある本当の言葉ではないか。そう聞くと、少し訂正が入る。

「まあでも、ちょっと酔っ払ってればとりあえずOK、みたいなことではないんですけどね。チューニングみたいなことですね。なんか、龍が降ってくるみたいな。とにかく自分の中に龍を降霊させないと」

ロックンロール

そこから話は、ロックンロールへと行き着く。

「基本的に、音楽は反復するじゃないですか。リフって反復するじゃないですか。ロックっていうのを、本当にすごい抽象的にまとめ上げると、要するに酒飲んでめちゃくちゃ、こうだって思ったり、考えたり、自己反省をしたり、あと曲を作ったり、歌詞を書いたりっていうことと、その次の日にある、悪夢のような二日酔い。これの反復が、つまりロックンロールなんですよ。それで別にもう、うんざりだって思ってやめたりとかしないんですよ、人間は。だってそれを繰り返し続けているわけだから。これがロックンロールだし、リフだし」

まさしくロックしてロールされるわけだ。

「あと躁鬱とかもいいんですけど、要はその、俺は本当に神だ、無敵だって思ってる瞬間と、そうじゃない時間っていうのがあるんですよ。これはもう反復し続ける。治すとか終わるとかない、躁鬱とかって。それはロックンロールでしょって僕は思ってて。これはなかなか、25歳の、同い年のバンドマンはこういうこと言えないんで」

終われない音楽

1曲目は、最後に冒頭のイントロへ戻る円環の構成になっている。2曲目と3曲目には、上ネタの高い音がループで入っていて、倍のテンポでも、通常のテンポでもノれる。ダンス・ミュージック的な要素だ。これはロックンロールの話につながるのではないか。

「それで言うと、本当に僕って、ロックンロールめっちゃ信じてるというか、大好きなんですよ。だから反復って大事なんですよね。でも、もう一つの観点があって。自分、エヴァンゲリオンがすごい好きなんですよ。てかアニメとか映画とか小説とか本とか好きなんですよ。映像も僕やってるけど、映像とかってこう、始まりがあって終わりがあって、そのストーリーがバーっていくじゃない。音楽はそういうのないんですよね。だから音楽は、そのコードをもう一回弾かないといけないし、リズムもこうツンツンタンって終われない。ツンツンタンってやったら、もう一回ツンツンタンってやんないとビートにならない、みたいな。だから、そういう限界を感じて辛いみたいなのと、要はその反復、それがロックンロールだから素晴らしい、っていう、なんか矛盾した気持ちが僕の中であって」

メンバーから見たみちる

ところで、こうして酒を片手に語る彼を、バンドメンバーはどう見ているのか。

「いや、すっごいキショがられてるなと思うんです。みんなアルコールの人じゃないんで。僕以外みんな酒飲まないんですよ」

「でも最初よりは、使いこなせてるんじゃない」。隣で聞いていた岩本がそう言うと、すかさずみちるが引き取る。

「岩本さんがmoreru入ったのは割と最近なんで、Dexとかギターのアツヲ君とかは、昔の俺をすごい見てる。俺は最初、ストレート・エッジとかを目指してた時もあったんですよ」

高校を辞めた頃に、バンドを始めた。

「とにかく勤勉にやんないと、追いつけないっていうか。周りの勉強してる高校生とかに追いつけないなって思ったから、酒をやめたんですよ。で、ランニングとか、毎日すっごい長い距離走ったりして。自己鍛錬みたいな方向性に一回行ったんですよ。ただ、そういうことはなんか貧乏臭くてやだなって思って。1年ぐらいはそういう感じだったんですけど、そこからアルコールとかも普通に再開して。で、諸先輩方の話とかを聞く限り……人生とは何だろう、みたいな感じですね。別に人生とは何でもないから」

そう言ってから、少し間があった。

「いや、でもどうなんだろうね。してた頃の方が良かったのかもしれない」

ライヴはムエタイ

運動はやめたというが、ライヴは運動としてもかなりのものではないか。

「ライヴはやばいっすよ。ムエタイやってたんですよ。小学4年生から中学1年生ぐらいにかけて。『クローズ』読んで、とりあえず喧嘩強くなればなんとかなる、みたいに思ってて。しかもジムが、エクササイズ系じゃなくて、プロを育成する系に入ってしまって。格闘技って、ゴング鳴って殴り合う2分が、本当にゼーゼーハァハァするものであって。ライヴって、それを1曲単位でやるんですよ。アマチュア・ジュニアだったんで1ラウンド2分なんですけど、30分のライヴだったら15回ぐらいやらないといけないから。本当にハード・スポーツなんですよ、これは」

坂道をダッシュで何本も上り下りするようなものだ、とも。しかも一本ごとに道が違う。そうした演奏の中に、余白はあるのか。

「セトリとかは結構真剣に考えて、曲順とかは考えてるけど。曲内でだと結構いっぱいいっぱいなんですよ。ちゃんと自分が作った曲を自分が演奏すること。だから、プラスアルファみたいなことは考えられないですね」

解体してくれ

これだけライヴを重ねていれば、それ自体が練習になる。わざわざ練習を増やさなくても、スキルは上がるのではないか。そう聞くと、みちるは首を横に振る。

「いやいや、曲作らないといけないんですよね。バンドがやることって、ほんと曲を作ることなんで。とにかく今とか、めっちゃ作ってて」

初期はみちるが1人で曲を書いていたが、今はメンバーも作曲に加わっている。クレジットも”moreru”名義だ。どう作っているのか。

「スタジオとかでも、俺が作って、とにかく鼻歌っていうか、デモを持ってったら、いかに君たちが解体してくれるのだろうか、っていうのが、僕の一つの、もう性癖にも近い。これを解体、とにかくぶち壊してくれ、みたいな。それで、そういうことをしてくれるやつがいるから。俺が作ったまんまで出しちゃう曲とかも、あるっちゃあるけど」

これまでのアルバムには、作る前にコンセプトがあった。今回のシングルにはあるのか。それともアルバムの前段という位置づけなのか。

「シングルに関してはないですね。でも、なかったんですけど、あるようになっちゃって。今作ってるものが、要はあれをもっと説明するとこうなる、っていう感じになっちゃってて。まあでもそんなもんですよね、音楽なんて。フラッシュアイデアから広げるから。自分のフラッシュアイデアが、ちゃんとアルバムという単位に広がるとこうかな、ってなってて。今はそれで作ってますね、アルバム。僕はほんと、アルバムを作ることが至上の価値だと思ってるんで」

そこで、「ちょっとトイレに行きます」と立ち上がった。

岩本雪斗

暗がりにも目が慣れてきた。みちるがいなくなると、東屋は急に静かになる。みちるが戻るまでのあいだ、岩本に話を聞いた。新作でサンプラーの比重が増えたのは、ライヴで音源を再現するうえで、バンドだけではできない部分を担っているからではないか。加入したときから、そういう役割を意識していたのか。

「いや、してないです。なんでも良かったんで。(moreruに)入れたら」

もともとmoreruが好きだった。前のバンドではギターを弾いていて、サンプラーを触ったのは加入してからだ。

「ギターより、いいかも。今の方が合ってます」

後で聞くと、普段はヴェイパーウェイヴばかり聴いているという。

戻ってきたみちるに、サンプラーの存在がライヴの再現性の上でかなり重要なのでは、という話をしていたと伝えると、「かなり重要」と即答する。セッティングは、ノイズとサンプラーとキーボード。サンプラーの中身は、誰が決めているのか。「全部みちるくんが」と岩本。みちるが続ける。

「映画とか結構見るんですけど、その時に、このセリフはやばい、みたいなやつを秒数でメモって。U-NEXTの何とか、何分、みたいな。それを送って、基本的には入れてもらってる。そういう意味では、本当サンプリングの文化とかめちゃくちゃしてるからね。最近、自己反省というか、過去の音源を聴いて、ここ足りない、ここ足りてる、とかそういうことをやると、やっぱり映画が足りないと思ったから。映画を増やした」

3曲を聴いて、またぐっと幅が広がったと感じた、と率直な感想を伝えてみる。

「そうですね。またなんか自己反省みたいな。毎回こうなんですよ」

ソロと6人

今年は、夢咲みちる名義でのソロ作も出した。本人いわく、ハーシュ・ノイズ、パワーエレクトロニクスに振り切った作品だという。

「パワエレには、すごい無限の可能性があるって思ってるけど、それは喋るとすっげえ長くなっちゃいそうな感じで。でも、1人で完結することみたいなのって、すごい自分に持っておかないといけないチャンネルだなと思って。今、弾き語りやってるんですよ。弾き語りで曲めっちゃ作ってて。それもできれば作品にしたいなって思ってるんですけど」

moreruとは、役割がまったく違う。

「moreruはもう共同制作の場で。お金にもなってるから、そういうことも含めて、数学っていうか、答えを算出する、みたいな。でもソロって、もっと、自分が今ただここにいて思ったこととか、フラッシュしたアイデアとかを、ババババって言っていけるチャンネル」

バラバラなようでいて、このメンバーは、moreruを組むべくして組んだようにも見える。

「そうね、そう。6人全員、別に俺のような人間ではもちろんないし。全ての人間がいるんだよ、moreruって。全てのジャンルの。世田谷生まれの都会のヤンキーみたいなのと、中卒無双とか言ってる俺と、函館の大学行った女性と、ギターオタクの青森から来たやつと、あとツイッターのやつと、みたいな。一番レンジが広いと思うんだよね」

食っていく

売れる売れないが良し悪しではないにせよ、自分の表現で生き抜いていく、食っていくということについては、10代から続けてきて、何か変わってきたのか。

「これ、もしかしたら全然いけんじゃね? って思って。20代入ってから、なんとなくそう思ってたんで。それはまあ、ちゃんとやりたい。食っていくぐらいのことは、俺はできると思ってるんで」

12月には香港でのライヴも控えている。手応えはあるのではないか。

「まだその手応えが追いついてないです。まあ、いずれ追いつくだろうとは思います。俺、結構自分の才能に対する確信みたいなの、すごいあるんですけど。自分の出した音源とかもあんまり聴きたくないし、聴けないっていうか。なぜなら、今の俺の方がすごいから、って。作ることに対する欲望が、俺はほんと止まんないから。だから、それでいけるでしょって思って」

歌詞は最後

作る順番は、曲によって違う。最初のアイデアは彼が持っていて、Aメロ、Bメロ、Cメロまで作ったデモを送ることもあれば、Aメロしかない状態で「じゃあやろう」となることもある。ただ、歌詞はたいてい最後になる。

「無限に変わっていくから。だから常に入れ替えてる。ずっと疑問をこう、これはいいのか悪いのか、この文章は正しいのかとか、色々考えまくるから、できるのすごい遅いけど。でも意外と、そういうのなくできる場合もあって。そういう曲が一番、人気ですね。『乙女座最終日』なんて、マジでオケ聴きながら、なんか適当にバババって言って、あ、いいんじゃね? ってやったやつ。だから、ちゃんと考えた歌詞とかは相当伝わりづらい。やっぱり身体表現なんですよね。本じゃないんですよね、これは。っていうことを強く実感していく日々」

目次を追う

それでも、本は読んでいる。

「本当に読んでる人からしたら、全然読んでないと思う。目次だけ追って終わるとか普通にあるし。面白かったら全部読むけど、面白くないけど知っておいた方がいいかな、っていうのは、目次だけ追って、あとはチャッピーにまとめてもらう、とかめっちゃあるけど。でも、最後まで読んだ本は本当に素晴らしい本。読んでないにしても、目次は追う、っていう気合い、大事。くまざわ書店とかの人文コーナーとか、全部目次をいくから。今はこういうのがあって、こういうことが言われてる、ってことをなんとなく理解する。それについて喋るなんて到底無理だけど、感覚として、今こういうのが流行ってるんだ、みたいな」

チャッピーことChatGPTも使っている。

「まあ課金しないけど。てか俺、中卒だし、中学の時も別に勉強してなかったから、常識とされることが全部抜けてて。それをとにかく今、勉強してます。世界史と日本史をやって。専門的な、本当にディテールのことは、本読まなきゃわからないから。自分の興味関心が残ってるものだけ、本を読むって感じですね」

ワンマン・ライヴ「wwwを切断してニヒリズムの向こう側へ」フライヤー

10代は無料

今回のワンマンは、新しいレーベル側との話し合いで、「ワンマンぐらいはやっておかないと」と決まったという。そのワンマンでは、10代を無料にした。

「10代の人に金払わせるなんて、なんて非道なことなんだって、ずっと思ってる。だって10代なんてさ、バイトぐらいしかしないでしょ。なのに4,000円ワンドリンクでさ。10代は基本的にコーラとか烏龍茶飲むわけでしょ。だからワンドリンクの価値自体も、原価として単純に違うでしょ。意味がわかんない、おかしいって。でも、年齢で区切るのもまた違うとも思ってて。これは実現不可能な夢物語というか、戯言なんですけど、基本的に、金持ってるやつは金を払って、金持ってないやつは払わないでいい、でしかないと思うんで。10代は持ってる可能性がすごい低いから。本当は全てのイベント、僕はそうしたいですね。なんでちゃんと働いてお金稼いでる人と、同じ料金払わないといけないの? だからもっと細かくしたい。所得とかに。チケットは所得の何パーセント、みたいな」

実際、その10代に、moreruの曲は届いているのか。

「最近、ライヴとかやってもお客さんすごい若い子いっぱいいて。こいつらが果たして俺の深さをわかっているのだろうか。相当疑問がある。割と表象だけで済ましているのではないか、僕のことを、みたいな」

ディグが足りない、ということか。

「ディグが足りない。俺を聴いた後に、俺の着ている、例えばこのサイレンサー(Silencer)を、これは何ていうバンドだろうと思って聴く、とか。あと、この(パンツに貼ってるパッチを指差して)無数にあるブラック・メタル・バンドのロゴを、それぞれ写真に撮って、それぞれ調べて、ChatGPTから算出された、これはこれです、っていうやつを一通り聴く、とか。そういう覚悟がお前にはあるのか、みたいな。ちなみに俺はあったよ。高校生の頃は、みたいな。でもそれも難しい話で、全員が全員やるわけじゃないけど、10人に1人ぐらいはそういうやつもいるから。僕はそこにとにかく希望を感じてる。内輪だけでやってるコミュニティとは全然違うんだよ、っていう。そのガチでいくやつがいたら、俺はすっげえ嬉しいと思う。すっごい嬉しい」

選んで、編集する

「さっき、思想とかあんまないって言ったけど、要はそれって、自分はもう本当にサンプリングし続ける存在っていう感じがあって。サンプリングを編集する存在だっていう。てか何がサンプリングかって言ったら、Aマイナーとかも、コードに著作権があったら成立しないでしょ。だから、Aマイナーみたいなこと自体が、もはやサンプリングだと思ってるし。あと言語とか、日本語っていうもののサンプリングを組み合わせて、編集して喋ってる、っていう感覚がすごいあるんですよ。こっちに持ってくればこういう意味になるとか、そういうことはすごい意識的にあるんですけど」

歌詞を書くときも同じだという。

「歌詞書いてる時も、めちゃくちゃサンプラーだと思ってる。そもそも歌詞を本当に自分で書くってなったら、僕は言語を作らないといけないんですよ。実際それやってる人もいますよ。ブラック・メタルで、全部オリジナル言語でやってる人とか。そういうのはすごい誠実だなとは思うんですけど。まあとにかく、そこをちゃんと自分がやるだけの実力が、まだ及んでないんで。基本的に日本語っていう、私の母国語を使った私。あと要は、自分が影響を受けたものとか、そういう網の中に、みたいな。そういう世界観ですね。だから、そこで自分が自分に何を問うか、みたいなこととか。あと自分の人生だけは、オリジナルですよね」

漏れる

「自分は結構、編集者だなって思うんですけど、言葉とか。でもなんか、そっからちょっと漏れちゃうこと。だからここに、アートの可能性が詰まっている。自分は世界を眺めているだけなんだけど、そこから漏れる……例えば、自分の言葉も、要は借り物の言葉。日本語っていう、すでにあるシステムから編み出している言葉。そこから漏れちゃう何か。予想し得なかったこととか、そういう音とか、何でもいいけど。とにかくそれが本当に、芸術の可能性だと思う。それだけが」



<了>

Text By Keisuke Ninomiya

Photo By Koichiro Funatsu


moreru

『詩人に口無し』

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