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「LAのアイデンティティはごく自然に生まれた」
来日直前インタヴュー
西海岸サウンドを現代に引き継ぐバンド、ドーズの真摯な心意気

27 October 2023 | By Yu Taniguchi

2022年の《フジロック・フェスティバル》で初の来日を果たし、その圧倒的なパフォーマンスで夜の《フィールド・オブ・ヘヴン》を湧かせたドーズ(Dawes)が、初めてのジャパン・ツアーを11月に開催する。

2009年にアルバム『North Hills』でデビュー、2011年にリリースされた『Nothing Is Wrong』でブレイクを果たして以降、近代フォーク・ロック・シーンの代表的な存在となったドーズ。LAを拠点に活動し、ジャクソン・ブラウンやジョニ・ミッチェルといったレジェンドたちとコラボレーションを行いローレル・キャニオンの継承者と目されつつ、最新アルバム『Misadventures of Doomscroller』(2022)ではスティーリー・ダンに接近するような長尺のジャズ・ロックを披露するなど、懐古主義に留まることのない新たな挑戦を続けている。

これまでに6度、アメリカのフォーク・チャートでトップ10入りを果たすなどスタジオ・アルバムが評価される一方で、ドーズのもう一つの魅力はフジロックでも見せたライヴ・アクトとしての強靭さ。そんな彼らの初めての単独公演をより一層楽しむべく、オリジナル・メンバーでもあるテイラー(ヴォーカル、ギター)とグリフィン(ドラムス)のゴールドスミス兄弟にメール・インタヴューを敢行した。旧友であるブレイク・ミルズとの出会い、西海岸のレジェンドたちとの裏話、ミュージシャンであるお父さん、大好物の寿司、そしてもちろん最新作の制作秘話まで……ドーズ・ジャパン・ツアーをより楽しむ17の質問。
(インタヴュー・文/谷口雄 翻訳/伊藤雅哲 質問作成協力:岡村詩野)



Interview with Taylor and Griffin Goldsmith

──ドーズはもともとあなたとブレイク・ミルズが同じ学校で出会って始めたサイモン・ドーズ(Simon Dawes)としての活動が発端です。その結成時のヴィジョンなどを改めておしえてください。ブレイクとはどういう部分で意気投合したのでしょうか? 

Taylor Goldsmith(以下、T):僕たちは若すぎてヴィジョンなんて持ってなかった。ただ死ぬまでずっと音楽をやりたいと思っていただけさ。自分たちのサウンドやアイデンティティについての意識なんてなくて、それはずっと後になって湧いてきたんだ。ブレイクとは11歳か12歳の時に出会った。僕たちの世代で、僕たちが好きだったような音楽が好きな子どもは僕たちだけだった。とても若かったから僕たちの好みはすぐに融合したし、そっくり同じような音楽教育を受けたよ。

──2007年にサイモン・ドーズが解散し、ドーズとなった際によりフォーキーなサウンドにシフトしたわけですが、その時に思い描いていた方向性はどのようなものだったのですか? 

T:ドーズの曲の多くは、元々サイモン・ドーズの曲になる予定だったから、いずれにしてもそういった方向に向かっていたのかもしれない。僕たちは、自分たちの音楽に何か意味を持たせるためにベストを尽くしていた。当時としては珍しく感じられるようなものをね。それに、僕たちはそれぞれの楽器に全く異なる個性を持ったバンドだってことを知ってもらいたかった。

Griffin Goldsmith(以下、G):特に方向性を計画した覚えはないよ。当時はミュージシャンとしての限界があったから、自分たちにできる唯一の方法で音楽をつくるようになったんだと思っている。それ以降、僕たちはプレイヤーとして、そしてバンドとしても大きく成長した。音楽自体もそう。あの頃は、それまでの人生で聴いてこなかったレコードを聴くことにトライしていて、それがサウンドを形作る上で大きな影響を及ぼした。個人的に当時、ザ・バンドをよく聴いていた。ボニー“プリンス”ビリーやブライアン・イーノも。グレイトフル・デッドを聴き始めてもいた。もう忘れてしまったけど、他にも数えきれないほど聴いていたよ。歌うドラマーにとても熱中していたんだ。レヴォン・ヘルム、ドン・ヘンリー、バディ・マイルスみたいなね。あとフィル・コリンズとジェネシスも。

──プロデューサーのジョナサン・ウィルソン(デビューからの2作や最新作『Misadventures of Doomscroller』など、これまでに4枚のアルバムをプロデュース)とはどのように出会ったのですか?

T:ジョナサンとはLAのたくさんの共通の友人を通じて知り合った。当時彼は僕たちにとって完璧な存在だったから、この出会いにはとても感謝している。ジョナサンはドーズのDNAを形作る上で大きな役割を果たしてくれたよ。

G:当時僕たちが作っていた音楽のサウンドを考えると、ジョナサン・ウィルソンは完璧なプロデューサーだった。Wylie Gelber(バンド創設時のベーシスト、ギター職人の仕事に集中するため2023年春に脱退)は街のクラブなんかでジョナサンを見かけていて、2人は顔馴染みだった。ジョナサンはまだ僕たちの音楽を聴いてもいないのに、一緒にやることに前向きだとWylieに伝えてくれた。たぶん、Wylieはとてもクールなやつだし、みんなが友人として彼の力になりたいと思うからじゃないかな。余談だけど、Wylieが高速道路で車をぶつけて、保険金でちょっとしたお金を手にできた。彼はそのお金を僕たちのファースト・アルバムに充ててくれた。少なくともそれが僕の覚えていることだよ!

──そのジョナサン・ウィルソンがプロデュースを手掛けたデビュー・アルバム『North Hills』がローレル・キャニオンで録音されたのはどういったいきさつでしたか? どんな風に録音されたか教えてください。

T:当時ローレル・キャニオンにジョナサンが住んでいんだ。そこが歴史的な場所であることは知っていたし、本当に思いがけないことだったよ。彼とはいつも色々な場所で録音している。最初はローレル・キャニオンで、次がエコー・パーク、一番最近はトパンガ・キャニオンだね。

G:ジョナサンが当時借りていた家の中にスタジオを用意してくれた。クールだけど小さな家で、コンソールも楽器も全部リビングにあった。全てのマイクが全ての楽器の音を拾ってしまうから、一発録りでやらないといけなかった。それにテープにレコーディングしていたから、編集はより大変なプロセスだったね。プロセス全体はとても楽しかった。あの時点では、ジョナサンのようなクールな人とレコードを作っているなんて信じられなかったよ。

──デビュー前にはコナー・オバースト、クリス・ロビンソン、ベンモント・テンチらとセッションをしていますし、ジャクソン・ブラウンやジョニ・ミッチェルとコラボレーションするなど、西海岸のクラシック・ロックやソフト・ロックとのつながりを感じます。こうした先輩たちとはどのように知り合ったり、つながったりしていったのでしょうか?彼らの活動や、作品からはどのような影響を受けていますか?

T:僕はそういったアーティストの大ファンとして育ったよ。特にジョニとコナー。でも、僕たちのファースト・アルバムがリリースされるまで、LAの音楽がどんな音楽なのか、あまり知らなかった。ジャクソン・ブラウンの音楽もまだ聴いたことがなかった。だから、僕たちのLAのアイデンティティのほとんどには実際に意図があるわけじゃなくて、ごく自然に生まれたんだと思う。

G:当時ジョナサン・ウィルソンが友人たちを招いて一晩中音楽を演奏するパーティを主催していて、そこで僕たちをコナー・オバースト、クリス・ロビンソンに紹介してくれたんだ。彼らは本当に特別な存在。実際に、今僕はコナー・オバーストの故郷であるネブラスカのオマハからこのメールを書いていて、ブライト・アイズのレコーディングに取り組んでいる。この機会に感謝しているよ。あのパーティーで僕たちが築いた関係はとても重要なものなんだ。

──テイラーとグリフィンのお父さんのレニー・ゴールドスミスさんは、かつてタワー・オブ・パワーで歌っていたこともあるミュージシャンだそうですが、ご家族の音楽遍歴から受けた影響はありますか。具体的なエピソードがあれば教えてください。

T:父は昔、素晴らしいミュージシャンの友人とLAのクラブで演奏していて、僕たちをよく連れて行ってくれた。言葉で教えてくれたわけじゃないけど、音楽の聴き方や反応の仕方、考え方を学ぶのに効果的な方法だった。もちろん僕と父のスタイルは全く異なるけど、プロになることの教えという意味では父以上の教師はいなかったよ。

G:父は間違いなく僕たちに影響を与えているよ。彼はジャクソン・ブラウンやリトル・リチャードようなアーティストを崇拝しながら育ったんだ。父が《Stax》(ヴォルト)のレコードを繰り返しプレイしていたのを覚えてるよ。そのおかげで、ブッカー・T&ザ・MG’sのドラマー、アル・ジャクソンを深掘りすることができた。史上最もお金持ちの人物の一人! 父はスティーリー・ダンのレコードもしょっちゅう流していて、僕はそういった音楽に合わせて演奏することでドラムを学んだんだ。史上最高のセッション・ドラマーたちのプレイを学ぶことは、確実に僕のスタイルを形成した。父は僕たちを正しい方向に導いた。彼の好きなものを教えてくれたことで、僕たちは大きな影響を受けたんだ。

──ドーズはいわゆるウェスト・コースト・サウンドの歴史を継承するバンドとして認識されがちですが、その自負、使命感はどの程度感じているのでしょうか? 

T:インスピレーションを与えてくれた歴史に敬意を示すのは素晴らしいと思うけど、西海岸から生まれた偉大なものは、どんな分野であれ、アーティストが前進して過去に生まれたものを考証しようとすることで成り立っているとも思う。だからLAのバンドだと認識されることを光栄に思うし、一方で僕たち自身とリスナーたちを前進させて挑戦させたいとも思っているよ。ドーズの印象は、親しみやすさはあっても、他のどこでも聴けないサウンドであってほしいんだ。

G:ウェスト・コースト・サウンドの仲間入りは僕にとっては面白いね。たしかに僕たちはそういった他のバンドと似たサウンドをやっているけど、意識的に取り組んだものでは決してない。僕たちが受けた影響は西海岸に限られたものではないからね。不思議なものだね……とはいえ、そういったアーティストと同じカテゴリーにいると思われるのは光栄だよ。

──とはいえ、あなたがたの作品は、決してただ歴史ある西海岸サウンドを継承しただけというわけではありません。確実に今の時代の音ですし、歴史を上書きする勇気を持った演奏でもあると思っています。西海岸の音楽以外に影響を受けた音楽、アップデートするにあたって取り入れたり意識したりしているサウンドや音作りについておしえてください。

T:僕たちのテイストはいろいろなところから来ているよ。最近はU2『Achtung Baby』、ウォーターボーイズ『Fisherman’s Blues』……ハービー・ハンコック、フランク・ザッパ、カニエ・ウエスト、マディソン・カニンガム、マイク・ヴァイオラ、ジョナサン・ウィルソン、ジミー・デイル・ギルモア、ウィリー・ネルソン、あとジャズもたくさん聴いていた。僕たちは自分たちの「サウンド」の意図をあまり考えないようにしている。自分たちが良いと感じられるものをつくり、演奏する上でどう聴こえるかを理解しようとしているだけなんだ。あまり深く考えすぎると、意図が感じられてしまって誰も気に入らなくなってしまうと思うんだ。

G:どのアーティストもそうであるように、僕たちが受ける影響も常に進化し続けている。最新アルバムの制作中は、キング・クリムゾンやハービー・ハンコックをよく聴いていたよ。

──ジャクソン・ブラウンは《TURN TV》でのインタヴューで「次世代に残したいメッセージ」などをとても真摯に語ってくれました。逆に、あなたがたの世代から先輩たちの世代に対して伝えるメッセージはありますか?

T:大きな感謝に尽きるね。彼らは、今僕たちがプレイしているスポーツを発明してくれた。ロックンロールは二世代前には存在すらしなかったし、まだ歴史の浅い世界なんだ。たくさんの僕たちのヒーローと関わることができたのは、僕たちのキャリアの最大の喜びの一つだよ。

──そのジャクソン・ブラウンのコラボレーションはどのようにして始まりましたか。アレンジやリハーサルでのコミュニケーションなど、ステージ以外でのジャクソンはどんな人物ですか。

G:ジャクソンとはジョナサン・ウィルソンを通じて知り合った。セカンド・アルバムのレコーディング中にLAの《Troubadour》でギグをやった。ヘッドライナーとしてのギグだったかどうかは覚えてないけど、そうではなかったと思う。慈善公演だったかな。ジャクソンが僕たちのことを知っていて、ファンだってことをジョナサンを通じて知ったんだ。僕たちは彼がウォーレン・ジヴォンの友人でコラボレーターであることも知っていた。ジヴォンの大ファンだったからね。だから、《Troubadour》で僕たちと一緒にジヴォンの「Lawyers, Guns and Money」を演奏してくれないかとジャクソンに頼んでみたんだ。そしたら彼は演奏してくれて、「素晴らしかったよ。スペインで一緒にライブをやらないか」みたいなことを言ってくれた。それは僕たちができる最高にクールなことだと思った。ジャクソンは約束を守る人で、数日のうちに歯車が動き出したんだ。

音楽に関しては、ジャクソンは細部に至るまでものすごく思慮深い。何をどのように演奏してほしいか明確なんだ。でもものすごく礼儀正しくもあって、彼の言うことは全て参考になった。彼は物事の核心を突き詰めるのが好きなんだ。彼の音楽いかに思慮深いかを考えれば、驚くべきことではないんだけどね。友人としては、ジャクソンは夜のどんな時間でも電話をかけられる人のうちの一人だ。僕が彼を必要としたら、僕のために街中を運転して来てくれるはずだよ。

T:彼は本当に優しい人だ。それにとても思慮深くて、自分の音楽に意図的。でも、音符や理論じゃなくて直感的で感情的なコミュニケーションも取る。彼は僕たち全員が同じ感覚を目指すことを望んでいる。ある種の正確性を求める人とプレイするときよりも、ずっと満足できるんだ。

──最新作の『Misadventures of Doomscroller』は長尺の曲が多く、楽曲の構成も複雑になり、これまでとは違う新しいチャレンジのように感じました。実際にはどのようなコンセプトだったのでしょうか?  2020年にグレイトフル・デッドのフィル・レッシュと共演をしていますが、そうした経験も影響していると言えますか?

G:フィルとの経験は間違いなく僕の音楽の見方を変えた。僕は彼と一緒にプレイする前からグレイトフル・デッドに夢中だった。でも彼とプレイしたことで、即興音楽に取り組むための全く新しい見識を得ることができた。フィルとのショーは、実はアルバムをつくった後に実現したんだ。アルバムをつくるまでに、僕たちはフィルと《Terrapin Station》でリハーサルしたり、バーで即興演奏したりして数日間過ごした。彼と過ごした2日間ほどでさえ私たちには大きな影響を受けたし、それが『Misadventures of Doomscroller』に影響を与えたのは確かだね。

T:僕はグレイトフル・デッドの超大ファンなんだ。フィルと一緒にプレイする前もそうだったし、その後はもっとファンになった。だから間違いなく影響は受けているね。でも素晴らしい長編の音楽を書けるバンドやソングライターはたくさんいて、彼らもそれぞれのやり方でやっているんだと思う。ボブ・ディランやジョニ・ミッチェルはもちろん、フランク・ザッパ、ダイアー・ストレイツ、ピンク・フロイド、ブラック・サバス、シン・リジー、キング・リザード、トーク・トーク、ニール・ヤング、ジェネシス、ラッシュ、ブラインド・フェイス、オールマン・ブラザーズ・バンド……数え出したらきりがない。そして彼らには皆、独自のやり方があるんだ。僕がこんなに多くの例を持ち出したのは、受けた影響を挙げるためじゃなくて、そんな世界がいかに多様であるかを示すためだよ。だから僕たちもこれらのアーティストのように、ただ自分たちの特異性や特徴を持ちたいだけなんだ。

──『Misadventures of Doomscroller』はライヴ・レコーディングと伺いました。ドーズは一年中ツアーをしているような印象ですが、コンサートがレコーディングに与える影響は具体的にどのくらいあるのでしょうか? アルバムの中の具体的な曲などで、ライヴがレコーディングに影響を及ぼした例などを教えてください。

T:僕たちはライヴ・レコーディングの方が良くなることが多いね。あまり考え込まない。時間をかけるとプレッシャーになるんだ。それに僕たちはスタジオよりもステージでの経験の方がずっと多いから、ステージの環境をスタジオに再現できればできるほど良い。古い曲の中には、「One Of Us」(『We’re All Gonna Die』に収録)や「Somewhere Along The Way」(『All Your Favorite Bands』に収録)みたいに、レコーディングする前にライヴのサウンドチェックで何度も演奏されたものもある。でも『Misadventures of Doomscroller』はロックダウン中にレコーディングされたから、事前にステージで試したりはできなかったね。

G:ライヴ・ショーがスタジオ・レコーディングに直接的に影響したことはあまりないかな。『All Your Favorite Bands』を除いて、ドーズのアルバムは全てスタジオでアレンジした。とはいえ、ほとんどの曲は前のサウンドチェックでいじったことがあった。ライヴ・ショーは間違いなくアルバムの制作プロセスに影響を与えたと思う。でも、直接的な影響じゃなくもっと広い意味でね。僕たちはキャリアの少なくとも最初の10年は常にツアーに出ていた。毎年何100というショーをやることで、お互いに独自の言語を身につけることができた。一緒に音楽を演奏していると心地良かったんだ。それにお互いの特性も理解していた。その心地よさと理解を携えて、レコーディングのためにスタジオに入ってしまえば、僕たちのプロセスは自動的に進むんだ。

──実は僕もミュージシャンで、「Someone Else’s Cafe / Doomscroller Tries To Relax」をバンド・メイトとスタジオでカヴァーしたことがあります。あなた方の曲はとても演奏していて楽しいですが、曲の複雑さに気付かされたりもします。実際にプレイヤーとして、『Misadventures of Doomscroller』の曲で演奏していて楽しい曲はありますか?

T:今の僕のお気に入りは「Sound That No One Made」だね。この曲を演奏すると旅をしているような気分になるし、その度の中で道に迷いそうになることもあるから、よく耳を傾けなければいけない。二度と同じように聴こえることはないね。「Ghost In The Machine」もずっと大好き。ライブではリー・パルディーニ(キーボーディスト)とトレヴァー・メネア(サポート・ギタリスト)ソロが聴けるからね。「Someone Else’s Cafe / Doomscroller Tries To Relax」の中間部のリフはいつも観客を盛り上げてくれるし、僕もいつも楽しみにしている。

G:どの曲も演奏していて本当に楽しいよ。でもお気に入りを選ぶとすれば、「Everything Is Permanent」と「Sound that No One Made / Doomscroller Sunrise」かな。「Joke In There Somewhere」はまだあまり演奏してないから、楽しみにしているよ。

──曲を作る際に気をつけている部分をおしえてください。曲作りのプロセスやメソッドにおいて、楽曲をモダナイズさせるに重要な箇所はどういうところにあると思っていますか?

T:全くわからない。曲の書き方もわからないし、自分を作家とすら思えないと感じることがよくある。ある種のルールに落ち着きそうになるたびに、いつかはそれを破ることが重要なんじゃないかと思うんだ。怠けたり落ち着きすぎたりしないために。一つ言えるのは、自分を正直に表現していると感じられる必要があることだよ。必ずしも個人の経験である必要はなくて、自分の視点や本質が重要。簡単なことではないし、僕がそう感じられるのはほんの数曲だけだけど、僕の書く全ての曲に対して向けるべき正当な目標じゃないかな。

──ところで、あなたがたはお寿司が大好きで、【Sushi Boy】と呼ばれているメンバーがいる、との噂がありますが、本当ですか? 日本にお目当ての寿司屋はありますか?

T:僕たちはみんな寿司が大好きだよ。寿司が好きなのは本当だけど「Sushi Boy」のことは聞いたがないね。でも喜んで受け入れるよ。この質問に関してはグリフィンの方が良い答えを持っているだろうね。彼はどこに食べに行くべきか入念にリサーチしてるから。

G:寿司はまさに僕の情熱だよ。素敵な寿司屋さんの【omakase】セットよりも幸せになるものはほとんどない。その【Sushi Boy】が僕のことだと心から願うよ。しっくりくるし、僕じゃないなら、日本にいる間は僕が「“Sushi Boy” Goldsmith」と呼ばれたがってるって広めていいよ。日本で行ってみたいレストランのリストがたくさんあるんだ。今回の旅では東京の赤坂にある《齋藤》に行きたいね。

──では寿司以外に、日本の文化や思想などについて、何か興味のあること、知っていることがあれば教えてください。

T:食べ物は別として、日本について知っているほとんどのことは映画や文学を通してだね。黒澤明、小津安二郎、鈴木清順は好きな映画監督の3人だけど、その理由はもちろん全く異なる。ちょうど読み終えた三島由紀夫の『金閣寺』はとても面白かったし、村上春樹の小説はほとんど読んだよ。彼はこのような質問でよく取り上げられると思うし、日本の人たちがこういった作家や監督についてどう感じているのか興味がある。彼らは皆、僕に足跡を残してきたし、僕が本当に愛する日本についての自分のビジョンを形作る上で助けになったね。世界の中でお気に入りの旅行先だよ。

──それでは最後に、今回のジャパン・ツアーのバンドのラインナップを教えてください。

G:バンドは、僕がドラムス、兄(テイラー)はフロントマンででシンガー兼ギタリスト。リー・パルディーニがキーボード、トレヴァー・メネアもギターで、Z Lynchがベース。

T:僕とグリフィンがオリジナル・メンバーで、Leeは『We’re All Gonna Die』から一緒にやっているキーボーディスト。トレヴァーは以前からツアー・ギタリストだけど、レコーディングではあまりプレイしていなくて、そこは変えていこうと思っている。そして僕たちのベーシスト、Z Lynch。Zとはまだ数回しかギグをやったことがないけど、彼は素晴らしいし、確実に今回のショーを素晴らしいものにしてくれるよ。

G:今回のショーをとても楽しみにしているよ!

<了>



【ドーズ ジャパン・ツアー】

2023年11月15日(水) 東京 恵比寿 リキッドルーム
2023年11月16日(木) 大阪 梅田 クラブクアトロ

来日公演詳細(スマッシュ)
https://smash-jpn.com/live/?id=3947



Dawes

『Misadventures Of Doomscroller』

LABEL : HUB / Rounder / Concord / Universal Music Japan
RELEASE DATE : 2022.07.22
購入はこちら
Tower Records / HMV / Amazon/ Apple Music



Text By Yu Taniguchi

Translation By Masaaki Ito


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