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神話時代のブラジリアン・フュージョン、そして〈プログレッシブ〉

Azimuth 『Demos 1973-1975 Volumes 1&2』
06 June 2019 | By Yuji Shibasaki

ブラジリアン・フュージョン界の絶対王者であり、旧くはNHK-FM『クロスオーバーイレブン』のテーマ曲「Fly over the horizon」(79年作)で、90年代以降はUKを発信源としたレア・グルーヴ・ムーヴメントで再評価されたことによってその名をシーンに刻み続けてきた伝説的バンド、アジムス。75年ブラジル本国でのデビュー以来、米《Milestone》における諸作のブレイクを経て世界的バンドと目されるようになった後も、90年代に英《Far Out Recordings》から新録リリースを重ねるなど、常に現役アクトとして活動を繰り広げてきた彼らは、アイアート・モレイラやフローラ・プリム、またはエルメート・パスコアールらと並んで、ブラジル音楽とプログレッシブなフュージョンの、まさに「融合」を推し進めてきた存在として、どれほどの称賛に浴しても足りることはない。

マルチ・キーボード奏者、ジョゼ・ホベルト・ベルトラミが中心となり、60年代末からセッション共同体的に生成してきた彼らは、その活動初期において様々なブラジル音楽界の大御所のレコーディング・セッションを担っていたことでも知られている。マルコス・ヴァーリ、エリス・レジーナ、ジョルジ・ベンといった錚々たるスター達が彼らの演奏を全面的に信頼し、70年代初頭のMPBに特徴的なあのしなやかかつ強靭なグルーヴを引き出したのだった。これまで草創期アジムスの姿を知るためには、そうしたセッション参加作を聴くか、あるいは外部ミュージシャンと組んで「Projecto III」として地元《Equipe》レーベルに吹き込んだ(少々時代がかったラウンジ音楽的な)アルバム『Encontro』(70年作)を聴くというのがファンの常道であった。しかし今回、神話的なバンド初期な姿をくっきりと捉えた、驚きの未発表音源集がリリースされた。

表題の通り1973年から1975年にかけて録音された本作収録音源は、元々レコード会社への売り込みも兼ねてベルトラミ宅内のプライベート・スタジオで録音されたものだという。後に発表される《Som Livre》からのファースト・アルバム(75年)や、続くブラジル《Polydor》からのEPに収録される曲の直接的原型となるものは僅かで、この時期の彼らがいかに旺盛な創作意欲に満ちていたかということがわかる。何より聴きものは、正式デビュー後の作品には嗅ぎ取ることのできないどこか猥雑でヒリヒリしたテクスチャー、そして楽曲自体及び演奏全体に漂うアンダーグラウンドなスメルだろう。ギタリスト不在たるバンドの編成上の要請もあって、ここでベルトラミは多彩なトーンを現出させるために数多のアナログ・シンセサイザーや電子ピアノを駆使する(アープ2600、アープ・ソロイスト、アープ・ストリングス、ミニ・モーグ、モーグ・サテライト、フェンダー・ローズ、ハモンド・オルガン、クラヴィネットなど)。それはもちろん、デビュー後の作品にしても同様ではあるのだが、エフェクト・ボード類ほぼ無経由の(と思われる)本デモ集においては、各音色の鋭利さが驚くべきほどに剥き出しであるがゆえ、どうしても「サイケデリック・ロック的」と形容したくなるようなアタック感とそれが導くミニマルな幻霧が前景にせり出してくるのであった。こうした印象は、その後のバンドの歩みに照らすならやや異様にも感じられるかもしれないが、改めて思えば、同時代の先鋭的な米ジャズに加えて、ブラジルのトロピカリアリズモやUKプログレッシブ・ロックなどからも強い影響を受けていたという彼らからすると当然のようにも思うのだった。

それにしても、ここでの演奏の瑞々しさといったら。野心に溢れ、「今までにないものを創り出してやろう」という、あの時代に世界全体の若者たちが共有していた強烈なエートスが、見事に音楽として描き出されている。今ではもはや憧憬としての効力も失いつつあり、甘いノスタルジーをも透過させてしまう「あの時代」への思いだが、こうしてあたかもその当時の匂いまでもが真空パックされたような生々しい「転覆」の記録に出会うと、ふともう一度、「プログレッシブ」(=先進的)であることの尊さにほだされてみたいと思うのだった。(柴崎祐二)

■Far Out Recordings内アーティスト情報
https://www.faroutrecordings.com/products/azymuth-demos-1973-75-volume-1-and-2

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Text By Yuji Shibasaki


Azimuth

Demos 1973-1975 Volumes 1&2

2019年 / Far Out Recordings
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