Review

Being Dead: When Horses Would Run

2023 / Bayonet
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ウィーアー・ビーイング・デッド!

20 August 2023 | By Ren Terao

アメリカはテキサス州・オースティンといえば《SXSW》開催地であったり、スプーンの拠点であるなどインディーの精神性が今なお受け継がれるエリアである(個人的には13thフロア・エレベーターズ結成地の印象もある)。残念ながら行ったことがないが、まさにヘタウマなジャケットが目に留まった本作は、そんな遠い土地で活動する、名前も知らないアーティストが作り上げた一枚だ。牧歌的かつ刺激的で、サイケでカオスで、ハッピー。バンド名とは対照的に、「これが私たちだ!」と言わんばかりのインディペンデントな活力は、こぼれそうになりながら溢れ出す。

2016年頃から活動しているビーイング・デッド(Being Dead)は、友人であるファルコン・ビッチ(Falcon Bitch)とガムボール(Gumball)によるマルチインストゥルメンタルの男女混成デュオである。と言い切れれば収まりがいいのだが、ベースのリッキー・モト(Ricky Moto)が正規メンバーなのか、情報にやや統一感がなく断定できず、インタビューもふざけ放題。本作がファースト・アルバムであるが、既発のシングルと比較しても、むしろ荒削りな方へ逆走している感さえあり、しかし妙に憎めない感じは楽曲にも如実に現れている。

「The Great American Picnic」ではリヴァーブ強め西部劇風のギターリフが、一瞬の隙をついて裏拍に回り込むのにグッと引きこまれ、2人のツインボーカルが乾いた大地を想起させる。ガレージロック、カントリー、サイケ、サーフ・ロックと雑多に切り貼りされたジャンルの継ぎ目は粗く、大胆な展開と勢い重視のアレンジが心を掴むソングライティングがアルバム全体を貫いている。とはいえ13曲36分というボリューム感に加え、DIY感の強い手の届く範囲の演奏力はどこかアコースティックでゆるいムードを常に漂わせており、テンポやムードの激しいアップダウンが連続しても気負いせず聞ける理由になっている。

歌詞もサウンドに負けじと強烈だ。「Last Living Buffalo」では人間に殺されるバッファローへの眼差しとその怒りにコミカルさと風刺が混じりあい、タイトル通りバンドのテーマソングとなる「We Are Being Dead」での「楽しい時間を過ごしてほしいんだ!」という言葉には邪気がない。かと思えば「Livin’n Easy」などには死生観が垣間見える瞬間もあり、ややドラッギーなまでに場面転換していく。それはまるで作家性の強い、時系列も出来事も虚実もないまぜになった彼らの日記を覗いているようだ。音楽の先にある人物像に、ポジティブな意味での「子供っぽさ」とキュートさが根底にあるのだろうと感じたり、何にも染まっていないかのような発想の瞬発力に驚いたり、そうやって聞き手をドキドキさせてくれる。

そんな彼らの本当の魅力はクリティカルな音楽的文脈の接続や分析の外にあるのかもしれない、という偽らざる感覚も書き残したい。もちろん、彼ら自身もリスペクトしているというダニエル・ジョンストンの影響は、オースティンという土地の共通項もふまえてナチュラルに納得できる(また、レコーディングも同郷オースティンからガレージロックで活躍するホワイト・デニム(White Denim)が運営するスタジオで行われている)。

作為を匂わせない溢れ出したアイディアそのままのコラージュは、生硬いトレンドへの意識などは感じさせない。しかし、それが逆に「Muriel’s Big Day Off」のような絶妙な塩梅のジャズフィーリングを覗かせる曲を生みだすということが、創作において実に本質的なことだと再確認させてくれる。

やはり音楽は面白い、気楽にそう思わせてくれる作品だ。改めていうまでもなく、アートの喜びのひとつには、作品を通してその人物や場所を感じとることもあると私は思うからだ。この一枚は、行ったことのないオースティンの音楽家の、クレイジーでハッピーな頭の中へ連れていってくれる。(寺尾錬)


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