The Cinematic Orchestra: To Believe

2019 / Ninja Tune / Beatink
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LAとの接続で開かれる、ストリングスサウンドとの共存

14 March 2019 | By Koki Kato

ザ・シネマティック・オーケストラ(以下、TCO)の4作目となるオリジナル・アルバム『To Beleive』がリリースとなる。12年という年月を経て届けられた新作には、これまでもゲストとして登場したヴォーカリストのルーツ・マヌーヴァやタウィアらに加え、モーゼス・サムニーはじめLA勢の参加が際立つ。リーダーであるジェイソン・スゥインスコーが本作では長年の協力者ドミニク・スミスをメンバーに迎えるなど旧知の音楽家との絆を強めながらも、新たな出会いによってストリングス中心の壮大なサウンドスケープを表現していく。

これまでの作品を振り返れば『Motinon』(1999年)、『Every Day』(2002年)ではジャズ、そこにエレクトロニカを重ねることで実験的にサウンドを発展させ、『Ma Fleur』(2007年)では前作を踏襲しながらもポスト・クラシカル的ともいえる穏やかなサウンドを展開するなど、進化を続けてきた。

『Motion』、『Every Day』でジャズを基点としながらも様々な音楽を取り入れてきたTCOは、同じくジャズやエレクトロニカを実験的に表現してきたLAのレーベル《Brainfeeder》とも共鳴していた。『In Motion #1』(2012年)にも参加した今は亡きピアニスト、オースティン・ペラルタもフライング・ロータスの作品に参加するなど《Brainfeeder》との関りが深かった。そんなペラルタを介して知り合い、本作でストリングスを担当したのはサンダーキャット、カマシ・ワシントン、モッキーらとも共演するLAの重要人物、ミゲル・アトウッド・ファーガソンだ。

クラシックやヒップホップなど様々な音楽から影響を受けたミゲル。一聴してみるとこれまでのTCOにはなかったストリングスのサウンドが重要な役割を果たしていることに気付くはずだ。表題曲「To Beleive」はギターとピアノのアルペジオ、モーゼス・サムニーの歌声に重なるゆったりとしたストリングスが美しく、インスト曲「The Workers Of Art」では幾重にも重なる弦楽器のオーケストラが展開される。作品全体を通して流麗に響くストリングスのサウンドは、楽曲においてメインとなり壮大なサウンドを導いていく。

 ジェイソンが今作について、映画『ディズニーネイチャー/フラミンゴに隠された地球の秘密』のOSTを手掛けたことをきっかけの一つと言っていることも頷ける。フラミンゴの生態を追ったドキュメンタリー映画で、その自然の雄大さを表現するためにストリングスを主体としたサウンドを構築したことが、今作に色濃く反映されている。

出色なのは、映画音楽から影響を受けて取り入れたストリングスのサウンドが主体となりつつも、TCOがこれまでに行ってきたジャズやエレクトロニカ、ビートミュージックが時折顔を覗かせ、共存している点だ。特に「A Caged Bird/Imitation of Life」の反復する電子音とサンプリングされたクラップ音、壮大なストリングスの交わりはそれを象徴する一曲だろう。共存を目指したからこそ、彼らが共鳴するLAのシーンで活躍し、様々に音楽を横断できるミゲルの存在が必要だったはずだ。ストリングスによって映画的なサウンドを喚起させられる本作だが、映画音楽的なアプローチだけではなく、TCOが今日まで培ってきたサウンドやビートが共存を果たしていることで、彼らの更なる進化を実感する作品だ。(加藤孔紀)

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