Review

THE ANXIETY: The Anxiety

2020 / Roc Nation
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カオスに対する処方箋

19 April 2020 | By Kei Sugiyama

ウィロー・スミスとテイラー・コールのプロジェクト、THE ANXIETYが初のアルバムをリリースした。また、本作に先駆けて、24時間ガラスのボックスに自ら入り展示するアート・パフォーマンスを展開。それは、怒り、無感覚、諦め、幸福などバンド名でもある「不安」を8つに分け表現するというもので、コールはこれらの活動について「カオスから少しでも気晴らしの助けになることを望む」と発言した。

これまでもコラボしてきた彼らは、どちらかと言えばウィローの兄ジェイデン・スミスにも通じる洗練されたR&B/HIP HOP色の強いものだった。しかし、名前を新たにした本作は、冒頭の「Hey You!」や「Fight Club」は3分に満たない早急な楽曲であり、拡声器的に加工されたシャウトやノイズ交じりのギターなど、彼らのエモーショナルでパンキッシュな部分にフォーカスしている。そう考えると鬱屈した感情がテーマとなっている本作は、リル・ピープなどのエモラップともアプローチとして共通する部分を感じる。あるいは内省へと向かっていくアルバムのテーマ性やメロウな歌を聴かせてきたシンガーとしての歌声を披露した後半の「Are You Afraid?」や「After You Cry」は、エモと言われる中でもメロディーメイカ―として名高いデス・キャブ・フォー・キューティー的なサウンド・アプローチともいえるだろう。

本作の中核となる「Poolside」は、サウンド面で攻撃的な前半部と内省的な後半部を繋ぐ役割を果たしている。この曲の冒頭は軽快なギターとグルーヴィーなベースラインが特徴的なダンスミュージックだが、徐々にリズムが後退し混沌としたサウンドへ。リスナーはこれまで身体的だったこのアルバムのサウンドが崩れていく様を目の当たりする。これは、誰もが抱く自分だけが取り残されるのではという不安感を体現しているように私は思う。

そして「Interlude」以降は、自分の中にある不安や憂鬱へと目を向けていくことで、私だけではないという共感という名の安心感を抱かせてくれる。不安なとき周りがいくら正論を並べようと当事者にその声は届かない。しかし、音楽はその居場所を作ることができる。本稿の冒頭で引用したテイラー・コールの発言にはそんな想いが込められるのではないだろうか。(杉山慧)


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