BEST ALBUMS

REVIEWS: 18 May 2018

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REVIEWS: 18 May 2018

Courtney Barnett

Tell Me How You Really Feel

2018 / MilK! Records / Traffic

By Nami Igusa

大陸も時代も横断する! 自身とルーツ・ミュージックに向き合い生まれた、痛快なポップ・ソングたち

やってくれたぜ、コートニー! 本作を聴き終え、心の中でガッツポーズを何度も掲げた。これは間違いなく、今年の、いや時代を超えて愛される傑作だろう。こんなにも一点の曇りもなくストレートに聴き手の心を打ち抜くポップ・ソングを、1枚のアルバムにここまで詰め込めるとは! 御託を並べるのはいい。ともかくまずは、そんなある種の奇跡にも近いコートニーの底力に圧倒されてほしい。

筆者が初めにコートニー・バーネットにガツンとやられたのは、パワフルな演奏のライブ映像だ。その次の瞬間にはすでにCDを注文していた。そんな具合に、当時から彼女の書く曲には人の心を本能的に掴み取る力があったのだ。今思い返してみると、筆者はもうこの時点でその片鱗を垣間見ていたということになる。

その後リリースされたファースト・アルバム『サムタイムス・アイ・シット・アンド・シンク、サムタイムス・アイ・ジャスト・シット』(2015年)では、その鋭さを増したギター・サウンドから、90年代のUSオルタナ / グランジへのリスペクトが色濃く感じ取れた作品だった。それから3年、満を持して送り出された本作『テル・ミー・ハウ・ユー・リアリー・フィール』でも、その路線は確かに引き継がれている。ブリーダーズのキム&ケリー・ディール姉妹の客演という事実はもとより、ロー~ミッドに厚みの加わった逞しいギター・サウンドで、聴き手を痛快にぶっ飛ばしてくれるギター・ヒーロー(ヒロイン)っぷりには、もう惚れ惚れするしかない。

だが、本作で秀逸なのはやはり、彼女の書くグッド・メロディーだろう。シンプルなコードに乗せた、超がつくほどキャッチーなメロディー。コートニーはそれを、何なられまで以上に堂々と歌い上げている。それが最高に気持ち良い。それはおそらく、一躍世界的にブレイクした後の彼女が、この3年を通じて、自分が本当に表現したいこと、そしてポップ・ソングのルーツに深く向き合い生まれた、自信のようなものの顕れであろう。

本作で特筆すべきは、アメリカン・ルーツ色が極めて強いことだ。例えば、レコード・ストア・デイのアイテムとしてシングル・カットもされた「シティ・ルックス・プリティ」。この開放的なギター・フレーズとザクザク進むリズムに真っ先にピンときたのは、ウィルコの「ウォー・オン・ウォー」(『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』(2002年)収録曲)だ。ニール・ヤング&クレイジー・ホースをお気に入りに挙げるくらいだから、当然コートニーはこうしたルーツ色の強い音楽に影響を受けてきたに違いないが、よく考えてみると、パーカッシブなフィンガー・ピッキングや、ルーズなスポークン・ワード風の歌唱といった彼女のスタイルは、そこからさらに遡り、アメリカ南部の黎明期のブルーズを想い起こすものでもある。実際、彼女はファースト・アルバムの収録曲「ボクシング・デイ・ブルース」(2015年)をジャック・ホワイト主宰のレーベル《Third Man Records》から、オーセンティックなブルーズ・アレンジでリリースしてもいる。彼女の核には明らかにブルーズ・マン魂が眠っているのだ。本作で結実している普遍的なソング・ラインティングはこういった、自身の根源であり、またポップ・ソングの“根源”としての、ルーツ・ミュージックから抽出したエッセンスなのだろう。

もちろん、昨年のカート・ヴァイルとのコラボ・アルバム『ロッタ・シー・ライス』の制作も本作に大いに影響を与えているはずだ。それこそブルージーでおおらかな作風を得意とするカート・ヴァイルと共に、自身にちなんだ楽曲や互いの楽曲をカヴァーし合ったことは、自分自身が世の中に本当に伝えたいことが何なのか、その方法はどうあるべきかを、今一度見つめ直すきっかけになったのではないだろうか。そう、『テル・ミー・ハウ・ユー・リアリー・フィール』とは、コートニー自身に向けられた言葉でもある。

その証拠に、本作でのコートニーの言葉は過去最高とも言えるほどにはっきりとしている。これまでのような“半径数メートルの日常”を超えた視点を本作は持ち合わせているのだ。“みんな好き勝手に自分の意見を言いたがる / 交通事故が起こらないかとずっと思いながら”というような、聴き手も胸に手を当てたくなる洞察眼はより鋭さを増している。また、本作でもこれまで同様、アンビヴァレントな感情が1曲の中で一緒くたになっていたりと、やはり一筋縄ではいかないのだが、本作ではそれすらストンと腑に落ちる。人間、自分の中に浮かび上がる感情や考えは必ずしも首尾一貫しているわけではないよね、とーー。そして、本作が聴き手にそう思わせることができているのは、なにより一皮も二皮も剥けた、力強くそして普遍的な楽曲があればこそ、だ。

今のコートニーには、「本当に感じていることを伝えたいんだ」というとにかく根源的で強烈なパワーしかない。そのパワーが産み落とした、こんなにもジェネラルな感性と視点をもった作品は、きっとオーストラリアやアメリカといった土地柄はもとより、時代すらも関係なく、人の心をあっという間に掴んでしまうだろう。そんな楽曲を前にしたら、昨今のロックは元気がない、というような揶揄など、この際もうどうでもよくなってしまった。この先、年月を経てもなお色褪せずに愛聴されるであろう力強いポップ・ソングにそんな野暮なことを言ったところで、通用しないのだ。(井草七海)

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