Review

Kesha: Rainbow

2017 / RCA / Sony Music
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成熟したケシャが垣間見れる、美しく力強いカムバック作

14 September 2017 | By Daichi Yamamoto

 ケイティ・ペリーやレディ・ガガを追って揚々とパーティを謳歌しながら登場したポップ・クイーンの姿はここにはない。その代わりに徹底的に自己と向き合うことでケシャが作り上げたのは、絵に描いたように美しく、より力強いカムバック作だ。前作『ウォ―リア』からの5年のブランクを生むこととなった、多くの曲を共作してきたプロデューサー、ドクター・ルークから受けた、性的・精神的暴力、その後の裁判、リハビリ生活が本作に与えた影響は言うまでもない。だが、それらの経験はこの『レインボー』の中では決して怒りや憎しみには還元されていない。“かつては暗闇に居て黒を纏って無慈悲に振舞っていた。でも今は色が全てだとわかる”と歌うタイトル曲はそれが最も明快だし、敵(かたき)であるはずのドクター・ルークに対してでさえ、“願っているわ。(許しを請うために)どこかで祈っていると。魂が変わろうとしていると。安らぎを見つけられると”と前向きな言葉を与えている。女性のエンパワーメントをテーマにした「Woman」も今の彼女が歌うからこそ説得力がある。

 そんな本作が彼女の最大のルーツであろう、衝動的なロックやオーガニックなカントリーが前面に押し出されたサウンドで構成されたことは賞賛したい。イーグルス・オブ・ザ・デス・メタルとの爽快なパンクも、母が書いた(前二作の二倍となる6曲にクレジット)優しいメロディたちも、エレクトロ・ポップやEDMといったその時代のメインストリームを軸にしていたこれまでの彼女とは対照的に、プロデューサーのコントロールから解放された、自作自演のアーティストの姿を感じさせるからだ。本作を通して私たちも彼女の成熟を感じることが出来るが、誰より自信を感じているのはケシャ自身のはずだ。 (山本大地)

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