KAWABE MOTO: LP1

2019 / KAWABE MOTO / JET SET
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目にしているものの裏側に潜む不確かさを暴き、何の変哲もない日常に揺らぎを与えるマジック

23 May 2019 | By Dreamy Deka

ミツメのヴォーカル、ギターの川辺素が2018年にカセット・テープで発表したソロ・アルバムがアナログ盤として再リリース。 写真家・トヤマタクロウが手がけるアートコンシャスなミツメのそれとはあまりにも対照的な、本人による落書き……いや、力の抜けたイラストを大胆にあしらったジャケットからは、チープなデモ・テープのような音を想像してしまうが、レコードに針を落とした瞬間、部屋の中に涼しい風が入り込んでくるような、確かな存在感と質量のある7曲が収録されている。

いずれの曲もアコースティック・ギターと歌がメインのシンプルなサウンド。にもかかわらず、そこはかとないサウダージを漂わせながら、聴き手を深い孤独と寂寥の海に心地よく引きずり込んでいく感覚は、ネオアコ永遠の名盤として名高いベン・ワット『North Marine Drive』(1983年)やミツメのライブSEでもお馴染みのドゥルッティ・コラム『The Return of the Durutti Column』(1980年)をも思い起こさせ、常にクールな印象の川辺素が秘めている、表現者として濃度の高さを感じさせる。

ミツメというバンドは、例えば立体的で浮遊感のある音像だったり、緻密でスリリングなアンサンブルだったり、メンバー4人のフォトジェニックな佇まいだったりと、実に多面的な魅力を持っているが、その核にあるのは川辺素の「歌」であることに異論はないだろう。そしてそれはただ「いい歌詞・いいメロディ」というだけではなく、私たちが目にしているものの裏側に潜む不確かさというものをシンプルな言葉で暴き、何の変哲もない日常に揺らぎを与えるマジックをはらんだものであることを、この裸の7曲は改めて教えてくれる。

特にB面に収められた「有料道路」「苦い薬」といった楽曲では、村上春樹の短編小説のような不可思議な余韻が広がっていて、最後まで聴き終えてから改めてジャケットを眺めてみると、この大きすぎる余白にも何か意味が隠されているような気がしてくるから不思議だ。(ドリーミー刑事)

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