Review

6LACK: Love is the New Gangsta

2026 / LVRN / Interscope
Back

あなたは新しいギャングスタを愛せるか

24 August 2026 | By Tatsuki Ichikawa

染みるアルバムだ。最近、アルバイトの休憩中には、迷わずこのアルバムから何かしらの曲を選んで聴きながらタバコを吸っている気がする。肺に煙を吸い込んで落とすようなその行為と彼の曲は妙に同期しているのだ。そうやって、身体の内側に彼の音楽を染み込ませている。

タイトルは『Love is the New Gangsta』。ボルチモアで生まれアトランタで育った彼は、当時ラッパーだった父親を追うように、小学生の頃から詩を綴り、中学生の頃にはバトル・ラッパーとして活動していた。ゆえに、彼の根源にあるものはラッパーとしてのアイデンティティなのだろう。これまでの彼の作品に耳を傾けてみても、歌とラップを行き来するスタイルの中で、ラッパー然とした表情が度々強く前に出ているのが確認できる。しかし、彼が歌っていることに耳を傾けてみると、セルフボーストや成功自慢、アウトローとしてのアイデンティティというラッパーのステレオタイプとして度々語られるようなものとは少し違う。それは今作も然りだ。

「クールなフリをやめるのは、どうしてこんな大変なのだろう/鎧を切り裂いて、自分の裏側を見ようとしている」
(「Bird Flu」)

6LACKの内省的態度とは、偽るものを剥がし自らの脆弱性を、つまり本当の自分を認めることだ。ここで描かれるのは、虚勢を張る様な態度や有名人としての快楽的な生活を謳歌する様子ではなく、慎ましく自分自身を素直に晒し認めようとする姿なのだから。

それは従来的なラッパー像、ギャングスタ像、男性像とは違うものかもしれない。6LACK自身が認めるように、彼の音楽はセラピー的だ。その自分自身との対話を、完璧にするためなのか、本作に収録されたギターやドラム、サックス、キーボードの生演奏によって作り上げられるいくつかの楽曲は、6LACKの音楽により親密さを与え、その空間性を強調するように作用する。ここで醸成されるのは、彼のこれまでの作品の中で、最もネオ・ソウルやR&Bに接近するようなプロダクションだ。多重的な生演奏でバンド感を醸す「All That Matters」「Sunday Again」「On Me」や、彼のラッパーとしての側面を垣間見せる「Bird Flu」「RUNNING LATE FREESTYLE」、インディ・ロック調でバック・ヴォーカルを従える「I GUESS」……セッション的グルーヴを感じるこれらの曲の嘘偽りない時間、そこには多くの感情、さまざまな彼の姿が存在するが、重要なのは、音楽にこれまで以上の生々しいテクスチャーが存在していることだ。

『Love is the New Gangsta』は、彼の繊細で透き通るようでありながら肉体性を感じるような歌声とトラップ・ビートをベースにした作風の中に、バンド的な生演奏を加えることによって、これまでで最も生々しい感覚を獲得し、立体的な奥行きを感じるような作品に仕上がっている。初期の彼の佇まいに比べてもだいぶ前向きな姿勢を感じ取れる作品になってはいるが、少なくとも彼がこの作品を通してしようとしているのは、自分自身の内側、生々しい側面にフォーカスすることだ。脆弱性を曝け出すラッパーの数は増加傾向にあるが、あくまで自分自身に向き合うことで虚飾を脱ぎ捨てた新しい自分の姿として、新しいラッパー像、ギャングスタ像、つまり新しいマンフッドの形がある。

自分は最初に彼の音楽を煙に例えたが、たしかに彼の今までの作品で最も輪郭のはっきりした作品かもしれない。しかし、内側に入り込んでくる、正確で、落ち着きを保ち、洗練された44分は、煙のように染み込みながら私たちにこう問うているようだ。あなたは新しいギャングスタを愛せるか? つまり、全てを脱ぎ捨てたありのままの自分を愛せるか、と。(市川タツキ)

More Reviews

Love is the New Gangsta

6LACK

1 2 3 90