古いアメリカの価値観との決別を、ブラックの父の影響でラップを聴き、ホワイトの母の影響でオルタナティブ・ロックを聴いて育った自身のエピソードも混ぜながら歌った「New Americana」でヤング・アダルト層を中心に強固なファン・ベースを築いたホールジー。オルタナティブで新しい価値観をリプリゼントする姿勢は本作でも、彼女とフィフス・ハーモニーのローレン・ハウレギという共にバイセクシャルである2人が二人称を “she” としながら歌う女性同士の愛についての「Strangers」で強く打ち出されており、ポップ・シンガーでありながらラナ・デル・レイやロードとも比較されるその立ち位置に関しては未だ偽りがない。ただ、サウンドに耳を傾けてみると、実際にザ・ウィークエンド本人によって書かれているにしてもあまりに彼の曲らしく聴こえてしまう「Eyes Closed」や、歌唱法もドラムスのスタイルもイマジン・ドラゴンズっぽい「Heaven In Hiding」、リアーナの「Needed Me」そっくりな「Now Or Never」はじめ、元恋人のリドやカシミア・キャットといった先鋭的なライターとも多数曲を書いているにも関わらず、どうも現行のポップ・シーンでありふれているような音ばかりが聴こえてしまうのが勿体なく感じる。グレッグ・カースティン、ベニー・ブランコ、シーアといった「ポップ」の大物とも組んでいるだけにどの曲も良く書けているのだが、自身のアーティスト像や音楽性をコントロールすることに関してはラナ・デル・レイやロードほど長けていないということなのだろうか。(山本大地)