Review

Maxwell Sterling: Hollywood Medieval

2017/ The Death Of Rave
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最先端のエクスペリメンタル・ミュージックにして歪な都市の風景を描き出すサウンドトラック

10 July 2017 | By Shinpei Horita

 パンク~ポスト・パンク期から活動するアーティストであるリンダー・スターリングを母に持ち、ジェイムス・フェラーロともコラボレーションするマンチェスター出身の音楽家、マックスウェル・スターリングのデビュー作。2016年に《Memory No. 36 Recordings》からカセットでリリースされていたものだが2017年にUKの《The Death Of Rave》よりレコードで再発された。

 DX7とRoland Juno-60 のシンセ2台とiphoneに録音された環境音のサンプリングなどシンプルな素材で制作された本作はワンオートリックス・ポイント・ネヴァーやロレンツォ・セニ、《Orange Milk》からリリースされた作品を思わせるエクスペリメンタルな電子音楽である。一方で一曲目に収録されている表題曲に特に色濃いクラシカルなアレンジや全体を通して窺える精密な音の配置から感じさせられる洗練された印象は、音楽大学でジャズの作曲について学び現在も映画音楽の制作に携わっている彼の音楽的なバックグラウンドが大きく反映されている。歪にサンプリングされた電子音楽の中にある洗練さ、母であるリンダー・スターリングによる不穏な雰囲気を放つアートワーク。作品に存在するこれらの要素のアンバランスさによって彼自身がかつて生活していたロサンゼルスという激しい貧富の差のなど華やかさの裏に様々な問題を抱える都市の歪さを描きだしサウンドトラックとして機能させることに成功している。

 専門的な音楽教育にも裏付けされた高い構成力と社会に向けた鋭い視点を持つことを充分に証明した本作。OPNやアルカのように彼の名をより大きなステージで目にするようになるのも近いと期待させてくれる一枚だ。(堀田慎平)

■マックスウェル・スターリング OFFICIAL SITE
https://soundcloud.com/sehnsuchtsounds

■Memory No. 36 Recordings(カセット版のレーベル)OFFICIAL SITE
https://memorynumber36.bandcamp.com/album/hollywood-medieval

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