Toy: Happy In The Hollow

2019 / Tough Love Records /ALTERNATIVE WAVERS
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ギター・ロックとエレクトロニクスの幸せな融合が紡ぐサイケデリア

15 March 2019 | By Eri Mokutani

最近、サウス・ロンドンでは、ギター・ロック・バンドが活気づいてきている。その前の2000年代後半から2010年代前半にかけてはイースト・ロンドンがそうだった。そんな時代から活動しているTOYは、ブライトン出身、今もイースト・ロンドンを拠点に活動している5人組だ。2008年のサマソニにも出演したJoe Lean & The Jing, Jang, Jongを前身バンドとし、2012年にデビューした。その頃から、サイケデリック・タッチを武器に、内省的でロマンティックな歌詞から、世代を超えて、数々の先輩バンドからの支持を集めてきた。彼らを応援していたその代表格がホラーズとトラヴィスだ。デビュー直後から、ホラーズはSNSでお気に入りのバンドだと公言して、サポート・アクトへの抜擢はもちろん、未だにメンバーがTOYのライヴの際にDJでサポートをしている。一方のトラヴィスはというとアルバムの中の一曲の歌詞になんと登場。トラヴィスが2014年にリリースした、『ウェア・ユー・スタンド』に収録されている「Moving」の〈I’ve got to listen to my toy today on the motorway」(今日は高速道路でTOYを聞かなきゃ)〉という部分である。彼らのそういった所為は、当時、下火になりつつあったイギリスの若手ギター・ロック・バンドを盛り上げたいということと、TOYにはその筆頭になって欲しいという思いがあったのだろう。

そんなTOYは、アルバム3枚を英《Heavenly》からリリース後、レーベルを移籍。今回はその第一弾となるアルバムで、初のセルフ・プロデュースとミックスで作り上げた。過去には、ザ・クークスやザ・ビューのような2000年代後半のギター・ポップを思い出させるような曲、ブリット・ポップを想起させるような曲、シューゲイザー的な曲もあった。だが、本作では、そうしたタッチは後退。よりメロディを重視し、曲によっては、アコースティック楽器とシンセサイザーを使い分けていたり、融合させていたりしている。例えば、フォーク調の「The Willo」、「Charlie’s House」、ミニマムなエレクトロニクスが心地いい「Mechanism」、バンド・サウンドにシンセサイザーを乗せたクラウト・ロック的な「Sequence One」、日本人のムカイ・タカツナがエレクトリック・ヴァイオリンで参加している激しいポスト・ロック調の「The Energy」というように。様々な音が混在することとなったが、アルバム全体としてはストーリーを持ち、聞き手を現実世界から離し、映画を見ているかのような感覚へと導く。

これは、今回、スタジオワークを取得することにより、今までよりも、自分たちの追い求める音作りを探求したことによる結果だ。つまり、ギター・ロックとエレクトロニクスの幸せな出会いを生み出し、理想的なサイケデリアを作り出すことに成功した1枚といえよう。

本作は2月1日~2月7日付全英チャートでは、初登場で71位に入った(ちなみにこの時の1位はサマソニにも出演が決まっているブリング・ミー・ザ・ホライズンの『AMO』)。しかし、次週にはランク圏外となってしまった。イギリスの若手バンド事情は、根強いファンがいるものの、相変わらず厳しいことには変わりはない。このような状況にあっても、新しい可能性を手にした彼らは、ただただ、自分たちの理想とする音を追い続けるだろう。TOY流ギター・ロックとエレクトロニクスの幸せな融合の旅はまだ始まったばかりだ。(杢谷栄里)

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