Omar Apollo: Friends

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プリンス + ニール・ヤング ÷ チカーノ・アイデンティティ?

14 May 2019 | By Kei Sugiyama

Omar Velascoは父親がアメリカに移住してきたメキシコ系アメリカ人。インディアナ州サウスヘヴン出身だが、その地にチカーノは他に住んでおらず差別も受けてきたという。そうした経験を生かし、彼と同じような境遇の人たちに支援するニューヨークで開催されたフリー・コンサート《The Selena for Sanctuary》(2018年)にも参加してきた(去年のこのコンサートにはチカーノでカリフォルニア州ホーソーン出身のCuco(【REVIEW】Cuco & Clairo『Drown』)も参加していた)。

そんなOmar Velascoのソロ・プロジェクト=Omar Apolloの7曲入りのセカンドEP「Friends」がリリースされた。昨年ファーストEP「Stereo」が話題を集めたあと、きっかけは分からないが、拠点をカリフォルニア州ロサンゼルスに移し、Still Woozyの「Ipanema」(【REVIEW】Still Woozy『Lately』)にも客演するなど横の繋がりを増やしながら精力的な活動を展開している。

ベース・ラインが印象的な「Kickback」、アコースティック・ギターと歌声のシンプルな楽曲かと思いきや声の多重録音やエコーなどエフェクト効果を効かせた「Friends」、曲の途中で声色を変える様が面白い「There For Me(Interlude)」、これまであまり見せていなかったメロディックな部分を全面に押し出した「Hearing Your Voice」、歌声やサウンド・エフェクトを含めミゲルをも彷彿とさせる「Trouble」。彼の憂いのある声を多重録音やエコーをかけることで、本作のテーマにもなっている喪失や失恋といった情感を引き出している。これらの楽曲は、ミゲルやフランク・オーシャンと言った現行R&Bのサウンドに彼の歌声を楽器として上手く落とし込んでいるのではないだろうか。

それとバランスを取るように、本作には2曲のダンス・チューンが収録されている。シングルにもなっていた冒頭の「Ashamed」では、ギターのカッティングなどエッジのたったファンキーなサウンドと甲高い歌声、サビでのメロウなライン、そしてシャウトも含め、まさにプリンスのパロディ・ソングのような、キラキラしたスムージーなダンス・ミュージックである「So Good」は、マイケル・ジャクソン「Rock With You」やプリンス「I Wanna Be Your Lover」を思わせる洗練されたポップ・ソング。特に「So Good」は、ブルーノ・マーズに通じるものがありポップソング・クリエイターとしての片鱗が見られる。

一方で彼は、あるインタビューでニール・ヤングをフェイヴァリットに上げており、「Harvest Moon」をカヴァーしたいとも語っていた。「Hearing Your Voice」などのほっこりさせるメロディ・ラインはニール・ヤングからの影響のようでもあるし、チカーノ支援のフリー・ライヴへ参加するような活動姿勢からは、ヤングがかつて《ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート》を開催していたことを少し思い出したりもする。ニール・ヤングのようなスタイルのソングライティングに現行のR&Bを取り込んだポップ・ソング・クリエイターとして彼には大成していってほしい、という期待を込めたくなる1作だ。(杉山 慧)

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