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Fireboy DML: Playboy

2022 / YBNL Nation / Emire
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アフロ・ライフのパイオニアはポップ・スター街道を颯爽と駆け抜ける

16 August 2022 | By tt

Burna Boyに次ぐナイジェリア発のグローバルなポップ・スターとして、2022年のアフロビーツ・シーンの最前線に立っているFireboy DML。2020年の『APOLLO』でブレイク以降、自身の楽曲「Peru」のエド・シーランによるリミックスの大ヒット、マドンナ「Frozen」のリミックスへの参加、アフロビーツ・アーティストとしては初となる《BET Awards》のメイン・ステージ出演など、この1年のトピックからもその勢いの一端を覗くことができるだろう。そんなブレイクの渦中に3枚目となる新作『Playboy』がリリースされた。

ナイジェリア南西部の閑静な都市、アベオクタで欧米とナイジェリアのポップ・ミュージックを交互に聴くことで育まれ、イングランドのフォーク・ロック・シンガー、Passengerと、ナイジェリアのシンガー、Wande Coal、ニューヨークのシンガー・ソングライター、Jon Bellionの3人を自らの音楽性のコアであると発言しているFireboy DMLの音楽性を最早既存のアフロビーツ/アフロポップという枠組みの中で捉えることは難しい(ゆえにFireboy DMLの音楽を指して“Afro-Life(アフロ・ライフ)”という新たな言葉が生まれたわけなのだが)。ナイジェリアの同時代のシンガー/ラッパーのBurna Boyとの違いを挙げるとすれば、明瞭で爽快感すら感じるポップ・ポテンシャルの高さだろうか。本作『Playboy』もまた、前作『APOLLO』に続き、アフロビーツを軸にポップ、R&B、レゲエなどの異ジャンルをブレンドさせたハイブリッドなアフロポップに仕上がっている。

アルペジオ・ピアノとストリングスがミックスされたイントロで幕を開け、自らをNo.1と鼓舞し世界へ羽ばたくと宣言する「Change」はFireboy DMLのポップ・アクトとしてのスケールの大きさを現すのに相応しい、ドラマチックなオープニング・ナンバー。続くストイックなアフロビーツ「Sungba」のBurna Boyによるリミックスが大ヒットしているナイジェリアのシンガー、Asakeのメロディアスなコーラスが印象的な「Bandana」から、UKアフロビーツ・チャートの上位を記録したヒット曲「Playboy」、ドミニカ共和国出身のラッパー、Euroをフィーチャーした「Adore」までの前半の流れはアフロビーツとポップ、R&Bをブレンドさせた、Fireboy DMLのアフロポップ・サイドの結晶にして、本作のハイライトである。

そして、アフロビーツをベースに、よりエクレクティックなアーティストとしての可能性を感じるのは、Chris Brownとジャマイカのシンガー、Shenseeaを迎えたアフロダンスホール「Diana」、「Afro Highlife」のガーナやナイジェリア周辺の英語圏におけるポピュラー・ミュージックであるハイライフや、「Havin’ Fun」のストレートなレゲエなど、多彩なバリエーションのリズムやサウンドと、Fireboy DML持ち前のポップ・ソングライティングが融合した楽曲が並ぶ中盤以降だろう。2つのヴァージョンが配置されたヒット曲「Peru」も南アフリカ発のダンス・ミュージック=アマピアノのビートとアフロポップを融合させた楽曲と捉えることも出来、アルバム後半の流れを特徴づけるフックとして機能している。

アルバムの最後を飾る楽曲「Glory」でFireboy DMLは、成功したことへの神への感謝と、創作の痛みに耐えながらも俺は次の次元へと向かっていると高らかに宣言している。ギター・ソロが印象的な、アフロビーツ/アフロポップが並ぶ本作の中では異色のストレートなロック・ナンバーのスケールの大きさは、Fireboy DMLのポップ・スターとしての次のステップとさらなる飛躍を予感させるという意味では最良のエンディングである。(tt)



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