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サニーデイ・サービス × カーネーション × 岸田繁: お〜い えんけん! ちゃんとやってるよ! 2020セッション

2020 / disk union / FUJI
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「ずっと君のことを好きだよっていう気持ちで歌うだけでいいんだ」

22 October 2020 | By Dreamy Deka

2017年に逝去した伝説のロッカー、遠藤賢司73歳の誕生日を祝うために2020年1月15日に開催されたイベントの模様を収録したライヴ・アルバム。参加ミュージシャンはカーネーション、サニーデイ・サービス、岸田繁(くるり)という3組。トリビュート・イベントでのセッションというものは往々にして熱心なファン向けのものになりがちだが、このアルバムには、極端な言い方をすれば遠藤賢司というミュージシャンを知らなくてもまったく問題がないくらいに、新しい独立した表現が生まれた瞬間の興奮が記録されている。

本イベントの世話役とマスタリングを担当した曽我部恵一のライブ盤『LIVE』(2005年)に収められたMCの中で、「どうすれば年を重ねてもエンケンさんみたいに歌えるんですか?」という曽我部の質問に遠藤が「ずっと君のことを好きだよっていう気持ちで歌うだけでいいんだ」と答えたというエピソードが紹介されている。一見何気ないやりとりだが、今作の1曲目「おでこにキッス」で順番にリード・ヴォーカルを取る直枝、曽我部、岸田の歌声を聴いて、私はその言葉の意味を初めて理解できたような気がした。歌というものの真髄は、聴き手と歌い手の一対一の関係を築くことができるかどうかというところに帰結するということであり、三者三様の世界を限られたフレーズの中で築いていく3人の表現力はそれを完全に体現しているように思えたのだ。特に岸田繁の優しさの背後にある狂気の気配すら感じさせる歌声にはゾッとするほどの凄みがある。

しかし何と言っても今作の白眉は、岸田繁がヴォーカル・ギターを担当し、カーネーションとサニーデイ・サービスがツインギター・ツインドラム・ツインベースという重厚な布陣で演奏する「夜汽車のブルース」だろう。1970年に発表されたこの曲は、その後も数多くのテイクが発表されているが、今回の演奏で出演者の頭の中にあった演奏は『遠藤賢司45周年記念リサイタル in 草月ホール』(2015年)に収録された、10分30秒にも及ぶ熱演であろう。当時67歳のエンケンの迫力に負けじと、メンバー全員ががむしゃらに作り上げるリズムはまさに真夜中に暴走する機関車そのものであり、その上で繰り広げられる岸田、曽我部、直枝の死闘のようなギターバトルは、これまでの彼らの作品の中でも屈指の壮絶さと言ってもいいだろう。カーネーションは40年近く、最若手の岸田繁も20年以上、長きにわたってロック・シーンの第一線を走り続けるためにはこれだけの情熱を燃やさなければならないという事実を突き付けられたようで、聴き終えた後に深いため息が出てしまった。(ドリーミー刑事)


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