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Bryce Dessner: El Chan

2019 / Deutsche Grammophon
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ザ・ナショナルのギタリストによるピアノ(とギター)のための挑戦的なラプソディー

22 April 2019 | By Shino Okamura

来月5月17日にニュー・アルバム『I Am Easy To Find』を発表するザ・ナショナルだが、そうした周辺の喧騒をよそに、バンドの頭脳の一人であるギタリストのブライス・デスナーによる作品集がドイツ・グラモフォンからリリースされた。ブライスがバンド活動とは別に着実にソロ・キャリアを重ねていることは知られているが、中でも坂本龍一、アルヴァ・ノトとの共同作業作品『レヴェナント:蘇りし者』(2015年)、ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)と手がけた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2014年)のそれぞれサントラは現代音楽家としての彼の評価を高めるに十分だと言っていい。

本作はそんなブライスが日本でも人気のあるピアニスト=ラベック姉妹に2台のピアノのための協奏曲として提供した「El Chan」が軸になっている。加えて、冒頭3曲はパリ管弦楽団によるオーケストラ演奏になっていて、ドビュッシーの影響を受けているかのようなブライスの自由に音階を行き来する生き生きとした旋律が堪能できる。だが、個人的に注目したいのは、ブライス自身とフランス人ギタリストのダヴィッド・シャルマンによる2本のギターと2台のピアノのための「Heaven」だ。ライヒ、ザッパ、フェイヒィらの影響を受けているブライスとシャルマンのミニマルなリフの繰り返しの中に、ラベック姉妹による瑞々しくも激しさをひめたピアノのフレーズが重なってくる様子は実にスリリング。ピアノとギターという組み合わせで筆者が思い出すのはルー・リードとジョン・ケイルによる『Songs For Drella』(1990年)だが、あの中の「Open House」「A Dream」といった、とりわけドローン色強い曲と並べて聴くと、もちろんあれらほどアンビエントではないが、鍵盤楽器と弦楽器とのストイックな共演の可能性という点でも接合点を見つけることもできる。これをクラシック作品と切り離してしまうのは簡単だが、ザ・ナショナルのメンバーが現在多様で多彩なソロ・ワークを重ねているからこそ、ロック・バンドとして今なお充実した成果、商業的結果を残しているのでは?……という仮説を改めて考えてみるのもいい機会かもしれない。

なお、このアルバム自体は『バベル』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』そして『レヴェナント:蘇りし者』を監督し、本作のジャケット・デザインを手がけたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥに捧げられている。(岡村詩野)

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