Review

Lutalo: AGAIN

2023 / Winspear
Back

再びリズムと物語を繰り返す

05 September 2023 | By Nana Yoshizawa

フラストレーションは原動力になる。ビッグ・シーフのエイドリアン・レンカーと義理の従兄弟にあたる、シンガー・ソングライターのルタロ・ジョーンズ。彼はミネソタ州で育ち、現在はバーモント州を拠点に活動している。パートナーとバーモント州に拠点を移した理由は、フラストレーションの原因となる資本主義的な構造から距離を取るためだ。彼は「自分で現実をデザインすることは可能なこと」と語り、より自立した生活を望んでいる。DIY精神を感じさせる彼の在り方は、《Winspear》よりリリースされたEP『AGAIN』からも見えてきた。

前作のデビューEP 『Once Now, Then Again』(2022年)は全体的に柔らかいアコースティック・ギターを軸とした、フォーク要素のあるサウンドだった。とくに冒頭の「Call It In」はアコースティック・ギターと温かいシンセのフレーズを重ねる繊細なナンバー。それでも、左右に跳ね返るパーカッションや脈打つベース・ラインなど、複雑なリズムが伺える。ジョーンズが複雑なリズムを好きになったのは、幼少の頃、父親からジャズ、ロック、ヒップホップなどの音楽を教わった影響だという。おそらく、アフリカン・ドラムとダンスを習っていた経験からも来ているのだろう。本作は、ビートやファズの効いたギター・フレーズを組み合わせてリズミックに反映させた。オルタナティヴになったサウンドは社会性のある歌詞と相まって、より力強く聴こえる。

例えば、貪欲なナルシシズムを批評した「PLPH」。歪ませたブレイクビーツのリズムを中心に、リヴァーブをかけて深みを増した歌声が入れ替わっては表れる。不規則なビートと奇妙な残響の効果音に、思わず60年代のサイケデリック・ロックを想起した。さらに、戦争と母親を見つめる物語の「The Old Cast」では、感傷的にささくれたギター・サウンドと不穏を孕んだヴォーカルが悲しみを表現しているようだ。それでも、飄々と土着的なパーカッションを繰り返し、爽やかなうねりを生み出している。一方で「Push Back Baby」は力の抜けたギター・フレーズを絡み合わせる、ローファイなインディー・ロック。幾つものフレーズが入っては消え、余白のあるリズムを生み出す。その波は横揺れしたくなる心地良さだ。そしてラスト・ナンバー「WAR」は、一段とリズムが太く響き、ギターはひどく曲がっている。でもこのファズ・ギターと戦争を批判する歌詞の組み合わせが、とても痛快なのだ。『AGAIN』はどれも3分間から4分間ほどの楽曲ながら、優れたストーリーテリングやリズムによって浮き沈みを感じさせる。

ルタロ・ジョーンズは楽曲のインスピレーションに生きることへの不安や恐怖、不気味さを挙げている。ネガティヴな感情を自らのフィルターを通して、音楽に変えることを軸に置いてきた。戦争や社会への批評をストーリーを通じて、人々へ投げかけること。本作『AGAIN』で彼が投げかける疑問や批評は、決して冷ややかなニヒリズムではない。むしろ、暖かな提示だと思うのだ。(吉澤奈々)

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