Africa Express: EGOLI

2019 / Africa Express / Big Nothing
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デーモン・アルバーンが今度は南アのミュージシャンとコラボレート

17 July 2019 | By Masataka Ishida

デーモン・アルバーンが中心となり、アフリカとUKのミュージシャンがコラボする音楽ユニット、アフリカ・エクスプレス。こういう活動を植民地主義的と批判する人もいるが、確実に果実を残してきた。

『Africa Express Presents Maison Des Jeunes』(14年)に参加したことがきっかけとなり、ヤー・ヤー・ヤーズのニック・ジナーがプロデューサーとなって素晴らしいアルバム『ミュージック・イン・エグザイル』(15年)を出すことができたマリのソンゴイ・ブルースにインタヴューしたとき、メンバーのひとりはデーモン・アルバーンのことを「この人が登場して、予算をたくさん使い、プロデューサー、アレンジャー、サウンド・エンジニアなどマリまで行かせ、ロンドンとバマコを結びつけた。とても感謝する。マジシャンだね!」と語っていた。

『Africa Express Presents…The Orchestra Of Syrian Musicians』(16年)も素晴らしいアルバムだった。戦禍で離散したシリアのミュージシャンを集めたことに加えて、UK側からポール・ウェラー、北アフリカ、アルジェリア出身のラシッド・タハなど有名ミュージシャンも参加したが、モーリタニアのヌーラ・ミント・セイマリに声をかけていたのが慧眼だ。オフィシャルが残しているロンドンでのライヴ映像も素晴らしい。

アフリカ・エクスプレスはこれまで、マリのミュージシャンを起用することが多かったが、新作『EGOLI』では、南アフリカ共和国のミュージシャンとコラボしている。南アは近年、クワイト(kwaito)、シャンガーン・エレクトロ(shangaan Electro)、ゴム(gqom)や、独自のハウス・ミュージックなど、ガラパゴス的に進化した音楽が素晴らしい。サブサハラ(サハラ砂漠以南の黒人が多いアフリカ)の国ではドメスティックのマーケットが断トツに大きくて、ヒットすれば欧米に進出しなくても大きな成功を得ることができる。そのため70年代から80年代の日本の歌謡曲みたいに、欧米に知られることなく10万枚以上アルバムが売れるような独自の音楽文化が育まれているが、それでもさらにこんな音楽もあったのかという驚きがあった。

本作で最も耳に残った曲は、ゴリラズにも参加していたグリフ・リーズ(スーパー・ファーリー・アニマルズ)が、レソト(南アフリカ共和国に囲まれた内陸の王国)の伝統音楽、ファモ(Famo)のミュージシャン、Morena Lerabaとコラボした「Johannesburg」だった。「でんでん、でがらがに(?)」と反復するコーラスが印象的で、何度も聴きたくなる幽玄な曲だ。 南アはアパルトヘイトの時代だった80年代にラジオでUKのニュー・ウエイヴなどがよく流れていて、それを仕方なく(?)聴いていた黒人が後にびっくりするようなカヴァーを出した例もあり、UK勢との組み合わせは思いのほか良さそうだ。

ニック・ジナーが参加して、今最もティピカルな南アのビート、ゴムにアレンジを加えていった「Africa to the World」は、気張りすぎなタイトルだが、まさにそういう先進的な楽曲だ。冒頭の曲は、ズールー人の伝統音楽、マスカンディのベテラン・シンガー、Phuzekhemisiをフィーチャーしていて、いきなり濃厚な南アのムードに包まれる。

5曲にフィーチャーされていて、本作の看板アーティストといえるムーンチャイルド・サネリーは、ダイ・アントワードとヨーロッパ・ツアーを行なったこともあり“future ghetto punk”とも称されているようだが、本作では南アのネオ・ソウルみたいなヴォーカルが魅力的だ。じつに聴きどころが多いアルバムなのだった。(石田昌隆)

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