Review

Parquet Courts: A Sympathy For Life

2021 / Rough Trade / beatink
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可変と不変がもたらす相乗効果

22 October 2021 | By Makoto Watanabe

前作『Wide Awake!』(2018年)で初めて外部プロデュースを経験したパーケイ・コーツ。デンジャー・マウスの声掛けにより実現したコラボレーションではあったが、ポップ音楽のプロデューサーと感情を爆発させるギター・パンクという一見ミスマッチな組合せも、多種多様なアーティストとの知識や経験が、彼らが元々持っていたアルバム・コンセプトである「リズミカルさ」を引き出し、躍動感を増幅させる邂逅となった。この前進的変化は、安全地帯を作らないというバンドの精神と合致し、今後の作品へのアイディアの原資となったに違いない。発売直後のフジロックで見せてくれたダンサブルなパフォーマンスも、ソリッドな過去曲との対比もあいまって次作への期待を膨らませてくれる内容であった。

6作目となった今作でプロデューサーとして迎えたのはふたり。デイヴィッド・バーンのスタジオ・アルバム『アメリカン・ユートピア』(2018年)にアレンジやドラム・プログラミングで参加したロデイド・マクドナルドは、メンバーのオースティン・ブラウンと共に全曲のミックスを手掛け、アルバムの統一感を持たせる役割を果たしながら、演奏においてもシンセサイザーで6曲、「Marathon Of Anger」ではドラムマシーンでプレイヤーとしてクレジットに名を連ねるなど、生々しいバンド・サウンドに新しく電子的な音色やリズムで重層的な要素を加えている。共同プロデューサーとなるのは、PJハーヴェイのコラボレーターとしても知られるジョン・パリッシュ。担当したのは2曲のみではあるが、90年代後半から演劇や映画音楽の作曲でも輝かしい経歴をもつ彼が、本アルバムのタイトル曲とエンディング曲(ボーナス・トラック除く)となる曲を手掛けているのは構成の面で重要であろう。「A Sympathy For Life」でのグルーヴィーなローズ・ピアノと、1917年にイーゴリ・ストラヴィンスキーが即興仮面劇のために編曲した曲と同タイトルの「Pulcinella」での淡々としたピアノという、サビ部分での鍵盤の音色の対比は特に印象深さを生んでいる。

録音では、新型コロナウイルスの流行が始まる以前にブルックリンを飛び出し、アルバムの大半をニューヨークの都市部から90マイル離れた、自然豊かなキャッツキル山脈の麓のスタジオ《Outlier Inn》で行っているが、即興的に演奏して録るスタイルは変わらない。

ギターのオースティン・ブラウンはほとんどの曲で、オルガン、クラリネット、シンセサイザーを演奏するなど、メンバー自身も新たな表現に挑戦。一方、ワルツのリズムで軽快に、ビッグデータがもたらしたアルゴリズムに翻弄される社会をぶっきらぼうに皮肉る「Just Shadow」のように、どこかユーモラスな楽曲たちは、アンドリュー・サヴェージのアートワークも含め、これまで同様バンドの一貫したコンセプトとなっている。

最新作でもギター・ロックの文脈に固執しない姿勢で、新たな音色や楽器、演奏者を採り入れたパーケイ・コーツ。アルバムごとに変化を続けている彼らが、今年の7月に、入手困難となっていたデビュー・アルバム『American Specialties』を限定ではあるが再発(オーストラリアのパンク・バンド、Total Controlのマイキー・ヤングによるマスタリング)したのも、単なる10周年懐古の記念コインのようなものではなく、ファースト・アルバムでみられる即興的演奏やシニカルさやユーモアはこれからも不変のエッセンスであることを、あらためて内外に指し示す意味があったのだろう。「変われるもの」と「変わらないもの」を理解した上で、それらを混ぜ合わせて出来上がる完成品がどんなものになるか、今後も私たち以上に彼ら自身が楽しみにしていることだろう。(渡邉 誠)

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