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《The Notable Artist of 2023》
#6

Solomon Fesshaye


スケートボーディングと生活と街とを貫く視線

Khotinやティコ、ケイトリン・オーレリア・スミスなどを擁する《Ghostly International》から再出発したアトランタのプロデューサー、Solomon Fesshaye。デビュー・シングル「Star City」は、発光しているようなメロディをコーラスや伸びやかなシンセが薄くやわらかく包むまばゆい楽曲。しかしただそれだけではない違和感が残ったので再び聴くと、どうやらメロディの「ずれ」や「ぶれ」がその正体であることがわかった。そしてそれらがこの楽曲をより魅力的にしているということも。このメロディは序盤にリズムが安定するタイミングがあり、そのあと少し食い気味になったり遅れたりしながら明るく瞬いている。そのピッチは常にわずかにぶれ続け、ときたま音がぶつかりもしている。この「ずれ」や「ぶれ」が、メロディがリズムを乗りこなしている感覚をつくりだす。

ここでMVの話をしよう。MVにはサーファーでありスケーターでもある彼自身もカメラマンとして撮影に参加しており、ニューヨーク(サーフィンをするためによく訪れている?)でのスケートボーディングの様子が収められている。「ずれ」、「ぶれ」がこの楽曲の魅力であることと同じように、とくにストリート・スケーティングは街の建築が持っている従来の用途からずれた解釈を行い、建築や物体の新たなつながりを生み配置をぶれさせる。スケーティングの空間は、街の空間との一時的なかみあいでくりかえし生産されるわけだが、その一時的な瞬間に対する渇望や昂揚のごとく凝縮されたこの楽曲のきらめきは、彼が掲げている“Sound is an organization of love temporally crystallized.”(音とは、一時的に結晶化した愛の組織である)という言葉とも重なり合うだろう。

ここ数年で多くの人々が経験したことかもしれないが、社会に大きな変化が起きると視線は足元へ生活へと向かう傾向がある。それは多くの場合、景気の変化による消費の見直しであったり、ときにはどうやって生きていきたいのかというような問いがもたらされ、その思索であったりもする。そしてその視線は生活の場や街への視線とも重なってゆく。スケートボーディングとつながりが深いレッド・ホット・チリ・ペッパーズは「Under the Bridge」でロサンゼルスの街のことを歌ったが、「Star City」には自身の生活を通過した街への視線が潜んでいる。

切迫感のあるアルペジオが徐々に解放されていく「Save Our Place」は、「Star City」と合わせて場所や空間への思いが推測できるだろう。「Invisible Hand」ではニック・ドレイクのような思慮深さと朗らかさを兼ね備えた歌声が、波のように押し寄せるピアノの旋律と溶け合う。「理解できない、想像できない、ましてや見ることもできないものがたくさんあるという感覚と認識の表現」と彼はコメントしているが、どことなく経済システムへの不安や批判にも受け取れる。

2014年にクラブに足を踏み入れたことで楽曲の方向性を変化させながらいまに至るSolomon Fesshaye。solomonという名義ではテックハウスの楽曲も制作していたので、もっとダンス・ミュージックに寄った新たな楽曲も聴いてみたい。あわよくばダン・スナイスのように音楽性の異なる二つの名義での活動を少し期待しているが、まずはEPやアルバムのリリースを待とう。(佐藤遥)

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Text By Haruka SatoThe Notable Artist of 2023


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