FISHING THE BESTS : 27 May 2019

tofubeats / ootuka / ¥ABAI GOON / 909state / STUTS / Sush Yakamash

Fishing the Bests #2 〜Trip to Mercury〜

By Daiki Takaku

FISHING THE BESTS : 27 May 2019

tofubeats / ootuka / ¥ABAI GOON / 909state / STUTS / Sush Yakamash

Fishing the Bests #2 〜Trip to Mercury〜

By Daiki Takaku

Fishing the Bests #2 〜Trip to Mercury〜

お久しぶりです。vol.1から時間が経ってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか。前回の最後に「次回はもっとコンセプトを絞って」と予告していた通り、かなりフォーカスしたラインナップを紹介できればと思いまして、注目するのはリミックスのみ!それもtofubeatsの平成の名曲「水星 feat.オノマトペ大臣」のリミックスのみを並べました。本連載で軸になっているSoundCloudというプラットフォームは(現在は違っているらしいのですが)既成の音源に対してのクリアランス、つまりは権利関係の問題をスルーしてアップすることができておりまして、いわば無法地帯として発展してきた側面があり(リミックスやサンプリング文化の強いヒップホップとの相性の良さも頷けますよね?)、中でも「水星」のリミックスは有名なものから全くの無名のアーティストのものまでたくさんあるんです(ヒット曲をリミックスすることで関心を持ってもらおうという下心もあるかもしれません)。今回はそんな数あるリミックスの中から独断でピックアップしました。そういえば先日、と言ってもだいぶ前ですがラジオ番組『アフター6ジャンクション』にてtofubeats本人がミックスした「水星地獄」なる水星のリミックス等々、「水星」と所縁のある曲のみを繋げたミックスを披露しておりましたが…ええ、地獄はこんなものでは終わりません!では「水星地獄 part2」とでもいいましょうか。とりあえず未聴の方は原曲を聴いてからスタートしましょう!

909state「tofubeats – 水星 feat,オノマトペ大臣 (909state remix)」

まずは6年前にアップされておりますこちら。原曲が2012年6月のリリースなので、リリース後比較的早めに作られたものだと思います。すぐ馬鹿みたいな(失礼)リリックが耳に入ってくると思うのですが、これは「水星」の元ネタKOJI1200「ブロウ ヤ マインド~アメリカ大好き」のもので(ちなみにKOJI1200はタレントの今田耕司さんです)フックは「水星」のもの(トラックもうまい具合に混ぜられています)なので所謂マッシュアップに近いかもしれません。元ネタとのマッシュアップって意外と新鮮な気がします。ハッシュタグがAMERICAなのもクスリときますが、“優しかったアメリカ〜”などのフレーズは今聴くと皮肉っぽくも取れますね。

ootsuka「水星 feat.オノマトペ大臣 / tofubeats [remix]」

続いてはこちら歌声に関しては大きくはいじっていない、ザ・リミックス!という感じ。コーラスを噛ませたような甘いギターリフが心地よいです。原曲もMVからもチルな雰囲気も備えていますが、こちらはより夜の散歩向きな気がしますね。ポツポツと明かりのついた高層ビルをやや遠目から見上げながら聴きたいです。こちらは2年前のものですがootsukaさんが最近(7ヶ月前)アップしているものも「水星」のリミックスですね。この曲の筋金入りのファンなのかもしれません。

¥ABAI GOON「Bom B x ¥ABAI GOON – 水星 (REMIX)」

先ほどのほぼトラックのみを変化させるリミックスに対してこちらは歌のパートを変えているもの。ビートジャックという言い方でもいいかもしれません。ちなみに歌っているのは韓国の方ですね。この曲の説明のところに「Original song : Daoko -水星」とあるのでDAOKOのヴァージョンをオリジナルだと思っているのかもしれません。しかしながら別の言語でも(勘違いしているとしても)原曲の雰囲気が伝わってきますね。リリックをGoogle先生に翻訳してもらいましたがフックはほとんどそのままと言ってよさそうです(DAOKOの「水星」もフックのリリックは原曲と同じ)。

Sush Yakamash「DOPEBEAZ」

続いてはこちら。めっちゃ笑いました。歌入りの頃にはすでに原曲のムードはかき消され、ひたすら轟音が鳴り続けるハードなリミックスです。説明文のところにある通り「水星」とSkrillexの「Syndicate(Cormak Remix)」のマッシュアップながら、いやぁフックのところのビート連打なんかかなりイカれてますね。「f**k yeah, great remix」とのコメントが付いていますが、そう叫びたくなる気持ちもなんとなくわかる曲に仕上がっています。

STUTS「水星 Cosmic Trip ver. (STUTS remix) – tofubeats feat. オノマトペ大臣」

最後は今や星野源などの有名アーティストとも共演、共作するSTUTSによるリミックスを聴きながらお別れです。6年前に投稿されたものですが、音の使い方は現在の彼のトラックにも通づるものがありますね。非常にバランスが良く、先ほど失った落ち着きを取り戻せます(笑)。

さて、いかがだったでしょうか。掘っていると数日前にアップされたものもありました。わかりやすいメロディとコード進行、オートチューンの掛かった歌声(ラップ)、昼はデータの束を抱えて歩きレコ屋に行き、夜はフロアで揺れる音楽好きを描いたリリック、インターネットから、そして神戸という場所から発信されたことまで。様々な要素で構成されたこの「水星 feat.オノマトペ大臣」という曲が2012年のリリースから何度となくリミックスされ続けている事実は、このテン年代が音楽にとってどういったディケイドだったのかを私たちに伝えている気がしてなりません。ワンループのトラックにラップを、それも加工されたヴォーカルを乗せたものがチャート上位を席巻するようになった時代。ストリーミング・サービスが主流になった一方でレコード文化が再興した時代。風営法について音楽好きの誰もが疑問を抱えた時代。インターネットによって都市と地方の境界線がシームレスになった時代。周囲を見渡せば、きっとあなたにも心当たりがあるはずです。既存の楽曲を自らのテイスト、アングルで再構築していく…リミックスという行為は実に批評的でもあるのです。オリジナルが1番!そう思っている方のためにも、その楽曲のどこに惹かれたのかを考えるためにも一役買ってくれるでしょうし、今まで気づいていなかった魅力に気がつくかもしれませんよ。消費が加速する昨今の潮流に逆行しているかにも思えるこのリミックスという行為について、今一度考えてみてはいかがでしょうか。では、今回はこの辺で。エンジョイ!サウンドクラウド・ライフ!(高久大輝)

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