INTERVIEWS : 05 July 2017

Joy Division / New Order

The Curator of "True Faith" Speaks Relationship Between Joy Division ~ New Order and Art

By Shino Okamura

INTERVIEWS : 05 July 2017

Joy Division / New Order

The Curator of "True Faith" Speaks Relationship Between Joy Division ~ New Order and Art

By Shino Okamura

マンチェスターで開催中の展示《True Faith》のキュレーターが語るジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダーとアートの相対関係

 2005年からスタートして今年で12年、今年も英マンチェスターでは《Manchester International Festival》が開催されている(今年は6月29日~7月17日)。世界中のヴィヴィッドなアート、音楽、映画、演劇、コメディなどなど数多くの演目、作品を紹介する年に一度の大掛かりなこの祭典は、今年なら新作発表が近づいているアーケイド・ファイアコリン・ステットソン、ボノボ、サンファ、ヨハン・ヨハンソンなど、ポップ・ミュージックのアクトも積極的にパフォーマンスを行う開かれた芸術祭だ。

 そんな《Manchester International Festival》の今年の目玉の一つは、ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーに影響を受けたアート作品の展示会《True Faith》だろう。ピーター・サヴィルによる一連のアートワークが有名なニュー・オーダーだが、今回の展示には、ジェレミー・デラー、リアム・ギリック、マーク・レッキー、グレン・ブラウンといったイギリスのアーティストから、ジュリアン・シュナーベル、ジョナサン・デミ、バーバラ・クルーガーといったアメリカの人気映像作家、映画監督、ポップ・アート作家までが参加。それぞれにジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダーをインスピレーションとする作品を提供している。また、この展示に合わせてニュー・オーダーもマンチェスターの《グラナダ・スタジオ》にて5回の公演を予定しており、初日である6月29日の公演では、マンチェスターの王立ノーザン音楽大学の12人によるシンセサイザー・アンサンブルとの共演で、クラシック作曲家のジョー・ダドゥルの力を借りてリアレンジしたニュー・オーダーの代表曲を演奏。マンチェスターを代表するバンドであることを改めて知らしめたという。

 そこで、自身も10代からニュー・オーダーの影響を受けたという、今回のキュレーターの一人、マシュー・ヒッグスに展示の概要について話を聞いた。(取材/文:岡村詩野 トップ写真:Martin Boyce)

初日である6月29日に行われたニュー・オーダーのライヴの模様

Interview with Matthew Higgs

――まず、今回の展示についておしえてください。

マシュー・ヒッグス(以下M):ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーの作品をテーマ、そして出発点として扱うエキシビションです。彼らの今もなお受け継がれるカルチャーを探求し、彼らのアイデアが、他のアーティスト、デザイナー、写真家、映画制作者の作品にどのように影響し、解釈され、形を変えていっているのかを示すものでもあります。人々や学問の間、時と場所を超えて存在するアイデアの動き、そして異文化間のアイデアの交換がどのように新しい形を、新しいコンテクストを生み、新しい意味を帯びていくのかを考える場でもあります。関わっているのは僕とライターのジョン・サヴェージ、アーキヴィストのヨハン・クーゲルバーグ。そして、デザイナーのピーター・サヴィルからの批評的なインプットも得たコラボレーションなのです。僕らはそれぞれジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーに関しては、違った歴史があって、彼らの作品に対しても全く異なる見方をしています。けれど、嬉しいことに、このエキシビションは全く違った見方を反映できていて、異なる声の集まりのようなものになっている。ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーは、ファクトリー・レコーズのトニー・ウィルソン、プロデューサーのマーティン・ハネット、マネージャーであるロブ・グレットン、そしてデザイナーのピーター・サヴィルのような素晴らしいクリエイティビティを持つ人たちと作品を作っていた。そう、今回のこの《True Faith》は、彼らの音楽そのもののみならず、貢献についてのものでもあるのです。

By Julian Schnabel

 

――ジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダーの作品は、音楽自体サウンド・デザインと言っていいほどに造形的ですが、アートワークはそこにシンクロするかのようにパッケージとしても非常にシンボリックでもありました。あなた自身は彼らの作品におけるアートワーク、映像などのヴィジュアル面をどのように評価しているのでしょうか? また、2017年の今、それらをあらためて提示することの意味はどこにあると感じていますか? 

M:僕たちは、アーティスト、デザイナー、写真家、映画制作者たちがどのようにジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーの作品に反応したかに興味を持っていました。彼らの音楽は、ある種、さらなるクリエイティブな試みのための触媒のようなものとして機能しているのです。こうした芸術家たちは、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーの作品を説明しているのではなく、どちらかといえば、反応して応答するように新しい作品、時には異なる媒体を創造することに向かっているのです。僕たちは、この2つのバンドが、どのように生成的であるかに関心を持っています。例えば、どのように彼らのアイデアが他のアーティストたちの作品にインスピレーションや情報を与えているのか、と言うことです。現在も、僕たちはこの問いを追い続けているのです。

"ジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダーは、おそらく彼らと同時代の他のアーティストよりも、創造、表現、音楽を広めていくことへの探究心が旺盛だった"

――そうそうたる顔ぶれがこれまでジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダーの作品、活動に対して、デザイン、アートワーク、映像に関わってきています。これらの作品を見ていると、そのまま現代アートのこの半世紀の歴史を見ているようでもありますが、なぜこれほどまでにジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーは多くの芸術家たちを魅了していると思いますか?

 

M:ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーがあらゆる分野の芸術家を魅了し続けているのは、音楽だけではなく、彼らの自己決定と独立心によるものだと思います。おそらく、彼らと同時代の他のアーティストたちよりも、創造、表現、音楽を広めていくことへの探究心が旺盛だったのだと思います。彼らは非常にインディペンデントな精神を持ったレコード・レーベル(ファクトリー・レコーズ)で、ヴィジュアル面で彼らのアイデンティティを形作ったピータ・サヴィルという類い稀な合作者、お金は第一ではないがモチヴェーションとなる力である、という一風変わった立場から音楽ビジネスにアプローチしていくロブ・グレットンというマネージャーとともに作品を作ったのです。1980年代初頭、彼らはマンチェスターに《ハシエンダ》をオープンさせました。それは、他のミュージシャンやDJ、マンチェスターの人々そのものへの舞台を作るためでした。彼らの作品には、並外れたオープンさと寛大さがあるのです。

By Liam Gillick

――ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーは、マンチェスターという工業都市に誕生したからこそ、あのような音楽、あのようなアートワークを纏えたのではないかと思います。彼らとマンチェスターという土地の関係について、あなたはどのように考えますか?

M:マンチェスターは、ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーの歴史の中心で、今回の《True Faith》にとってもそうです。1970年代後半、(政治的、社会的、経済的に)非常に厳しい時代に、驚くような音楽シーンがその都市から現れたのです。これらの外的な力は、ある部分において、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーの音楽をはっきりと形作っていたと思います。しかし、それと同時に、とんでもなく先鋭的な野心が彼らの作品にはあったのです。それは、未来を見据えたものでした。このような緊張感は、過去と現在を通して、彼らの作品の原動力の中心であると思います。

――と同時に、彼らの影響を受け表現活動、創作活動をしている若手の音楽家、芸術家、映像作家は枚挙にいとまがないと思います。

M:ああ、ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーなしに過去30年以上の音楽を想像すのは難し過ぎますね。彼らの影響は、ありとあらゆるところにある。ニュー・オーダーのテクノロジーの包括、1980年代初頭からのダンス・ミュージックへの永続的な関心は、1980年代とそれ以降の音楽、クラブ・カルチャーの双方を形成したのです。マンチェスター、イギリス、ヨーロッパ、そして世界中の後続のミュージシャン、レコーディング・アーティストへの影響を控え目に言うのは困難ですね。

――ちなみに、あなた自身のニュー・オーダー、ジョイ・ディヴィジョンとの出会い、エピソードなどを教えてください。個人的に音楽作品として好きなアルバム、アートワークで好きなアルバムはどれですか?

M:10代だった1970年代に、ジョイ・ディヴィジョンのリハーサルを観る機会が何度かあって、もちろんライヴでの演奏も何度か観ました。彼らのほとんど反抗的とも言える独立意識と、自己決定は、僕自身と僕の友人のティーンエイジャーの想像力を奮い立たせました。今でもニュー・オーダのファースト・アルバム『ムーヴメント』は何度も聴きます。この作品は色々な点において、まさにジョイ・ディヴィジョンからニュー・オーダへの変遷と変容の“記録”であり“証拠”であると言えると思います。だからこそ、このエキシビションが他の国でも開催……旅に出られることを願っています。でも、もし無理だったとしても、自分の作品や、影響を受けたもの、受け継いだもの、といった様々な側面を反映した、その地ならではのジョイ・ディヴィジョン~ニュー・オーダに関連した独自のエキシビションを企画する働きかけになれたら、と思っています。

■Manchester International Festival 公式サイト
http://mif.co.uk/

■True Faith 公式サイト
http://mif.co.uk/mif17-events/true-faith/

Text By Shino Okamura


New Order

Music Complete

LABEL : MUTE / TRAFFIC
CAT.No : TRCP-200
RELEASE DATE : 2015.09.23
PRICE : ¥2,300 + TAX

■amazon商品リンク
http://amzn.asia/05YojgR

VA

Manchester North Of England: A Story Of Independent Music Greater Manchester 1977-1993
(7枚組 CDボックス)

LABEL : DISC UNION / CHERRY RED
CAT.No : CRCDBOX38JP
RELEASE DATE : 2017.07.29予定

■amazon商品リンク
http://amzn.asia/hSbrkmQ

◾️ニュー・オーダー トラフィックHP内 アーティスト情報
http://trafficjpn.com/artists/new-order/

◾️New Order OFFICIAL SITE
http://www.neworder.com/


MORE FEATURES

  • FEATURES : 05 September 2018

    Rex Orange County

    サマソニで見せた、タイムレスなポップ・スターを継承する姿勢

    By Daichi Yamamoto

    東京のサマーソニック、2日目のお昼過ぎのソニック・ステージ。爽やかな青色の背景にアルバム・タイトル通りアプリコット(杏)を描いたバック。そこに登場したのは短パンにタイラー・ザ・クリエイターのブランド<

  • FEATURES : 22 August 2018

    Festival

    《フジロック・フェスティバル2018》を振り返って~
    ヒップホップもソウルもロックもカントリーも……出演アーティストたちが互いに反響し合い補完し合う現在のシーンの理想的な縮図

    By Yasuyuki Ono / Daichi Yamamoto / Daiki Takaku

    台風12号の影響を受けて2日目は荒天に見舞われた《フジロック・フェスティバル2018》。初めてYouTubeでの無料ストリーミング中継も実現させるなど、苗場スキー場での開催も20年という歴史を誇りつつ

  • FEATURES : 27 July 2018

    Kacey Musgraves

    “Follow Your Arrow”~あなた自身の矢を追いかけるだけ 軽やかにクロスオーバーする新時代のカントリー・スターについて

    By Daichi Yamamoto

    ケイシー・マスグレイヴスというアーティストの特性を最も表す曲を挙げるなら、デビュー・アルバムの『Same Trailer Different Park』に収められ、2013年のBillboard誌の「

  • INTERVIEWS : 26 July 2018

    Serpentwithfeet

    今年の最重要アルバム『Soil』を発表したサーペントウィズフィート クィアーかつ純然たるR&Bシンガーの妥協なき葛藤のうた

    By Shino Okamura

    今振り返ると、この人物が2016年にデビューしたのは象徴的だった。2016年、それは、ソランジュ『A Seat At The Table』、フランク・オーシャン『Blonde』、ビヨンセ『Lemona

  • FEATURES : 25 July 2018

    Kendrick Lamar

    念願のヘッドライナー公演まであとわずか!遂にライブを体験するライターが綴った それぞれにとってのケンドリック・ラマー

    By Yuta Sakauchi / Daiki Takaku

    遂にケンドリック・ラマーが日本のフェスにヘッドライナーとしてやってくる!確かに2013年にも今回と同じ《フジロック》に、ホワイト・ステージの夜の時間帯に出演していた。しかし、5年前と今とでは、「ケンド

  • FEATURES : 24 July 2018

    Vampire Weekend

    フジロックで5年ぶりの来日!”北米のインディ”・バンドから”ポップ”シーンの誰もが注目する存在へと進化するまでー 2018年の視点で読み解くオリジナル・アルバム・ガイド

    By Yuta Sakauchi / Yasuyuki Ono / Nami Igusa / Daichi Yamamoto

    ヴァンパイア・ウィークエンドは現在の音楽シーンの中で最も重要なロック・バンドの一組だ。現在でもインディ・ロックのアンセムとして愛されている「A-Punk」を携えたアルバム『Vampire Weeken

  • INTERVIEWS : 24 July 2018

    Superorganism

    フジロックで再来日目前!ソングライティングの柱、エミリーとハリーが語るビートルズやケンドリック・ラマーから、理想の”アルバム”の条件、ポップ音楽観まで

    By Daichi Yamamoto

    スーパーオーガニズムは”限界”を超えてきたバンドだ。筆者がこれまで書いてきた論考でも述べた通り、彼らはDIYな方法でメインストリーム・ポップに挑んだり、どんなジャンルのタグ付け

  • FEATURES : 23 July 2018

    Bob Dylan

    The Young Person’s Guide To Bob Dylan
    ディランこそ時代の革命家で歴史の継承者だ

    By Shino Okamura / Nami Igusa

    15年ほど前のことだが、あるイギリスの若手バンドに取材をした時、そのメンバーはこんなことを話していた。「アメリカにはボブ・ディランがいる。それが何より羨ましいんだ。アメリカ人は……音楽をやっている人じ