Review

Winter: What Kind Of Blue Are You?

2022 / Bar/None
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パーソナルな作品とはそのままの自分でいること

23 October 2022 | By Nana Yoshizawa

サミラ・ウィンターのファミリー・ネームを名付けたプロジェクト、Winter。「音楽を心から愛する家庭で育った」と語る彼女は、ブラジル人の母親とアメリカ人の父親からの影響をごく自然に示している。ブラジルで生まれ育ちボストン〜LAと渡る中で体感的に捉えた出来事を、曲のコードやポルトガル語の歌詞に綴るように。そんな率直な自己表現は、ベッドルームでドラムマシーンを打ち込む作品作りとリスナーの聴く音楽作りに境目はないのかもしれない。なぜなら《Bar/None》よりリリースされた今作『What kind of Blue Are You?』は、彼女の転機となるインスピレーションを与えたシューゲイザーだから。

これまでのドリーム・ポップを基盤にして、歪んだギターを主軸に置いたオルタナティヴ〜シューゲイザー・タッチの『What kind of Blue Are You?』だが、一方で2000年代のguitar『Sunkissed』やスーパーカー『HIGHVISION』を思わせるような、エレクトロニカの側面も感じる。細かいシンセのテクスチャーと物憂げなヴォーカルの重なる「lose you」然り、本作の特徴を顕著に表したのが、Hatchieをフィーチュアした「atonement」だろう。MVは冷たいブルーと黒の二色だけ、飄々と街を行く姿はサウンドそのものを映しているようでもあり、ツイン・ヴォーカルの濃淡は機械的なブレイクビーツから浮き立ち伸びていく。くぐもるギターから響く歌詞は“色に染まっていく/あなたの最も望んだ喜び”。ここでつけ加えると、Winterは曲のイメージを色彩に例えることが多い。前作の『Endless Space(Between You&I)』(2020年)は混沌とするメランコリーをメロディーの揺らぎとサイケなネオンのアートワークにしたように。

サミラは本作を「本当の自分でいるためのインスパイアになれたら」と話している。ボストンに来てドリーム・ポップ~シューゲイザーという夢中になれる音楽に出会い、友人とバンドをすることになった彼女。ひとりで自分のために曲作りをしていた頃が、終盤の「kind of blue」という、巧みにもマイルス・デイヴィスの名作と同じタイトルを開示しているとしたら。今回のアルバム・タイトル『What kind of Blue Are You?』は、彼女の延長線上から私たちリスナーに投げかけられたインスパイアと言えるのではないだろうか。素朴なギター・リフを繰り返す「kind of blue」を聴いて、あなたの感覚はどんな色に染まるのだろう。(吉澤奈々)

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