Review

tofubeats: Keep on Lovin’ You

2019 / Warner Music Japan
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ポップスはギターがお好き

27 May 2019 | By Shino Okamura

この曲の重要なポイントの一つはサンプリングではない生のギターの役割だろう。弾いているのはKASHIF。PanPacificPlayaやJINTANA&EMERALDSなどで活動、最近は一十三十一のバック・バンドでも手腕を発揮しているギタリストだが、彼の弾くファンクとフュージョンとを繋ぐような洒脱なリフと音色が、バウンシーなブレイクビーツから過剰な熱気を奪い取っている。リズミックだがあくまで軽く抜けのいい仕上がりになっているのは、このKASHIFによる肩に力が入っていないカッティングと透明感あるフレーズによるところが大きい。もちろん、特に終盤で“音の温度”をよりチルアウト気味に下げる、ゆnovationのスキャットに近いコーラスも効果的だ。というより、tofubeatsのヴォーカルの質感ととても相性がよくて驚く。

そもそもtofubeatsの作る曲は結果として余分な熱が取り除かれている、もしくはエモっぽさが持ち込まれていないことが多く、そこにポップスとしての現代的な手応えを感じるのだけれど、そのカギの一つがこのように軽やかなギター・サウンドである場合に思い浮かぶのがビビオの存在だ。デジタルとアナログのそれぞれの音色の質感にフラットに接することができる柔軟性で、ジョアン・ジルベルトからボーズ・オブ・カナダまでスタイルのレンジの広さを武器に風通しのいいフレーズを奏でるビビオは、コンポーザー、プロデューサーとしてはもちろんのこと、間違いなく2000年代以降の重要ギタリストの一人。決して派手な抑揚やキメのリフに頼らない、一定の体温を保ちながら淡々とつまびくそんなビビオの奏法は多くの若手に影響を与えているが、この曲でクリーンないい音を聴かせるKASHIFのギターにもその色が表出されていると感じる。鼻からユルくツーンと抜けるようなtofubeatsのヴォーカルと適度な余力を残したようなコンフォタブルなメロディに対して、明らかにKASHIFのギター・プレイがさらなる軽みもたらしているのではないかと。

しかし、そうなるとスタイリスティックスやドニー・エルバートのような70年代ニュー・ソウルの重要性を改めて実感すると同時に、ア・トライブ・コールド・クエストやデ・ラ・ソウルのような存在の大きさを見直したくなる。生演奏だろうとサンプリングだろうと、あくまでギター・サウンドがさりげなく大きな意味を持つポップ・ミュージックとして。攻撃だったり、情緒だったり、エゴだったり、アート性だったりという様々なニュアンスを与えるギターという楽器は、何気ない背景になりえることも、そして背景であってもそれは決して裏方ではないということを、この曲は改めておしえてくれる。(岡村詩野)

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