Review

Mac Demarco: Here Comes The Cowboy

2019 / Mac's Record Label
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更新されたサウンドアプローチが織りなす、亡き友人へのラブ・ソング

20 May 2019 | By Sayuki Yoshida

おなじみハード・オフのギターストラップでコーチェラに出ていた姿も記憶に新しい、マック・デマルコの4枚目。自主レーベル《Mac’s Record Label》を立ち上げての最初のアルバムだ。彼の故郷であるカナダ・エドモントンはカウボーイ文化の根強い地域だが、ここでのカウボーイはそこでロデオ大会に出ている人びと、あるいはアルバム名の類似で話題になったMitskiが『Be The Cowboy』でイメージしたような、ヒーローとして誇張されたカウボーイ像のことではないようだ。曰く、ただ単に彼が“親しい人を呼ぶときに使う愛称”らしい。

【REVIEW】
Mitski『Be The Cowboy』 インディー・ロックを導き解放する“ポップ・コンポーザー=Mitski”の誕生
http://turntokyo.com/reviews/be-the-cowboy/

前作『This Old Dog』はフォーク・ロック寄りのシンプルなバンドサウンドが軸となっていたが、今作はさらにギリギリまで音数が切り詰められている。「Choo Choo」の粒立ちのよいカッティング・ギターが象徴するように、出世作『Salad Days』のころのドリーム・ポップ然としたローファイ感からはすっかり遠ざかっている印象だ。代わりに存在感を増しているのは、「Preoccupied」などいたるところで鳴っている打ち込みのパーカッション、そして「On The Square」のシンセや「Nobody」のリード・ギターなどのチープなサウンド・アプローチだろう。ポコポコと間の抜けたパーカッションは細野晴臣『HOCHONO HOUSE』、FM音源のようなシンセはミツメ『Ghosts』と、奇しくも直近にリリースされた国内の名盤に通じる空気感があるのが面白い。

それら気の抜けたビールのような音たちは、アルバムに愛嬌を添えている一方でどこか空虚な響き方をしてもいる。だから作品そのものの体温は低く、朴訥として、血色の悪さすら窺わせるようだ。「Heart To Heart」の最後でマック・デマルコと笑い合っているのが亡き親友マック・ミラーであることを思えば、なおさらだろう。余白の多い整ったアンサンブルと、その上に乗せられた薄くチープな音像の上モノ。そこには悲しみをくるんだ彼なりのラブ・ソング集としての説得力と、ドリーム・ポップの枠組み自体を上書こうとする気概が備わっている。(吉田紗柚季)

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