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フロントマンよりリズム隊派にオススメな過酷な戦いを描くF1ドキュメンタリー

11 April 2019 | By Hiroko Aizawa

Netflixはオリジナルドラマや映画が次々にリリースされるので、正直時々どれから観ればいいのかわからない!とイライラすることもある。また、ドラマの場合は1シーズンに8話以上はあるし、長いシリーズものだと8シーズンぐらいある上に、全てのシーズンが面白いとは限らないので、テンションを維持するのに疲れることもある。そんな時にオススメなのが、ドキュメンタリーとバラエティ。ながら見するつもりで見始めたのに、ついつい夢中になってしまった3番組を紹介したい。

まず今回は「Formula 1: 栄光のグランプリ」。2018年のF1グランプリをシーズン通して追った内容である。全10話。

F1?おんなじコース何十周もバカみたいな速さで走るあの危ないスポーツ?興味ないわ~、でスルーしたらめちゃくちゃ勿体無い。むしろ興味ない人にこそ見て欲しい。ライブに行くと、ついついドラムとベースを目で追ってしまう、みたいな人向け。多分気づいたら、月2回週末のレースを楽しみにする自分がいるはず。

最初に言っておくと、現状トップ2であるフェラーリとメルセデスはこの番組への参加を拒否したため、その2チームのエピソードはない。え、中堅チームの話?地味じゃん、華やかなストーリーを見たーい、とか思ったらこれまた勿体無い。そもそも、F1は華やかな世界なんかじゃない。毎レース生死を賭けた最高の技術を持つドライバーと研究に研究を重ねてマシンを作り上げ、一切の判断ミスも許されないレースをコントロールするチームスタッフの過酷な戦いである。

その過酷な戦いを十二分に見せつけてくれるこの番組に登場する主なチームは、上位2チームの脅威になっていきたいレッドブル、レッドブルと複雑な関係にあるルノー、F1に参戦しはじめて間もないハース、の3チーム。それぞれのチームに所属するドライバーは、10年同じチームに所属し去就に悩むイケメン、めちゃくちゃ鼻っ柱強いビッグマウス、若い頃から注目され続けているにも関わらず優勝経験なしのドイツ人、思うような成績が出ずメンタル崩壊寸前のベテランなど、さすが時速300キロで走るだけあって、個性派ぞろい。そんな彼らを支え、コントロールし、時にめちゃくちゃ怒るチームスタッフたち。はっきり言って、後者がこの番組の主役である。ドライバーの技術はもちろん超重要なのだが、まず車がその技術を生かしきれていないと結果に繋がらない、というのがよく分かる。そして、車の性能だけじゃなく、タイヤ交換のタイミングなど、あらゆる場面での判断がいちいち命取りになるため、そういった指示を逐一ドライバーとスタッフ間で無線でやりとりするわけだが、まあ言う事聞かない我が強いドライバーが結構おりまして。お前、1レースにどんだけ金と労力費やしてるか分かってる?自信あるのは分かるけどさあ~と観てるこっちが言いたくなることもしばしば。どうしても観ていると、ドライバーよりもチームスタッフに肩入れしたくなる場面が多い。やはり、あからさまに表に立つ者よりも、影に立つ者に自然と惹かれていくのは人間の性だろうか。私だけか?

一番オススメしたい登場人物は、ハースの代表ギュンター・シュタイナー。おそらく、番組を観た人の中でも彼の支持率は高いだろう。歴史が浅く未熟な部分が多いチームスタッフ、キャラが対極と言える2人のドライバーにストレートに苛立ちを見せつつも、全ての責任は自分にある、と腹を括ってるその姿勢。冷静なのかと思いきや、喜怒哀楽は惜しみなく表現するタイプで、可愛げもある。最高。

何度でも観たくなる個人的ハイライトシーンは、あるドライバーの移籍やチーム同士の関係の拗れを巡り、記者会見の直前にとあるチームの代表が、もう一方のチームの専務に超絶イヤミを言う場面。え?このタイミングでそれ言う?という感じで、観てるこっちがワナワナしてしまった。ドラマ的シーンである。

最後に余談だが、部屋の壁が薄くなければ大音量で観ることをオススメする。映像がキレイなので臨場感がハンパない。ちなみにF1は、DAZNで!(相澤宏子)

Text By Hiroko Aizawa

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