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「この音楽は決して自分ひとりだけのものじゃない、みんなで作ってるものなんだ」――ジア・マーガレットに訊く新作『Sings』の声、歌、音

24 April 2026 | By Yasuyuki Ono

シカゴを拠点として活動するミュージシャン、ジア・マーガレットにとって4枚目のフル・アルバムとなる本作『Sings』は、そのタイトルから連想されるような“歌”、“声”というジアのクリエイティヴィティの源泉となってきた要素に焦点化した作品だ。

大学で音楽を学びながらも途中で退学し、様々な職業で働きながら音楽活動を続けていたジアは、2017年にアドバンス・ベース/カシオトーン・フォー・ザ・ペインフリー・アローンとして活動するオーウェン・アッシュワースが主宰するシカゴのインディー・レーベル《Orindal Records》のサンプラーを偶然にも手に取る。


そのサンプラーに収録されていた音楽に感動したジアは、同作に名のあったミュージシャンのライブに客として参加しながら周辺シーンで活動するようになり、2018年には《Orindal Records》からファースト・アルバム『There’s Always Glimmer』をリリース。そして、次作の制作にとりかかっていたところ、ジアは突然の病に侵され、声が一時的に出なくなってしまう。その治療の過程で自室で演奏したシンセサイザーや録りためていたフィールド・レコーディング、音声録音などの断片から、自らの病の治癒の軌跡をたどるように構築された淡麗で内省的なアンビエント・フォーク作品『Mia Gargaret』(2020年)を作り上げる。その後、コロナ禍において自宅に隔離された生活を送るなか、久しぶりに触れたピアノにフィーチャーし、パンデミック下の不確かで不安な感情を包み込むように表現したアルバム『Romantic Piano』(2023年)を制作した。昨年には初めてとなる来日公演も実現。長野県で開催されたフェス《EACH STORY》へ出演し、自由学園明日館講堂での高木正勝をゲストに招いたコンサートはソールド・アウトとなった。

前作から2年ぶりとなる本作にはジアが敬愛するエイミー・ミラン(ブロークン・ソーシャル・シーン、スターズ)、デブ・タラン(ザ・ウィーピーズ)、デイヴ・バザン(ペドロ・ザ・ライオン)、ショーン・キャリー(ボン・イヴェール)といった多くのミュージシャンが参加。ジアの作品にファースト・アルバムから関わってきたダグ・サルツマンも引き続きプロデュース/ミックスに携わっている。そのようなさまざまな人たちの“声”、“歌”、“音”が積み重なり、本作は成立している。本インタヴューで言及されたシャーデー、スティーナ・ノルデンスタム、ニック・ドレイクをはじめとした先達から受け取った影響を昇華させ、青葉市子との出会いと共演を経て、いまとむかしをつなぎ合わせながら周囲のコミュニティとともに作り上げた本作について、4月2日(木)、ピンク・ムーンの日に話を訊いた。

(インタヴュー・文/尾野泰幸 通訳/竹澤彩子 トップ写真/Kodai Kobayashi 記事内写真/Graham Tolbert 協力/岡村詩野)


Interview with Gia Margaret


──昨年は日本で公演をしてくださり、ありがとうございました! 仕事での旅でもあったと思うので、限られた時間ではあったと思いますが、日本で過ごしたなかで一番の思い出はどのようなことでしたか?

Gia Margaret(以下G):やっぱり、東京での初のソロ公演になりますよね。まるで夢のような時間でした……。それにフェスも本当に美しくて……。日本のお客さんにも圧倒されちゃいました。集中してじっくりと音に聴き入ってくださっているのがすごく伝わってきて、すごく優しい気持ちに包まれました。

──あなたの作品ではこれまでフィールド・レコーディングや環境音、音声録音が象徴的に用いられてきたと思います。昨年の日本ツアーの時にも、明治神宮で鳥の声を録音したりしていたというインタビューを目にしました。日本ではほかにどのような場所でどのような音や声を録音しましたか?

G:そうですね、電車の中だとか……、目的地に着く前に鳴るアナウンス音があるじゃないですか、あれがすごく好きで。あとは普通に街の音だとか、地下鉄で人々の足音とか……、あちこちで音を収集していましたね。それに今言った明治神宮でも、感動しちゃいました。なるべく目立たないようにしていたんですけど、本当に色んな種類の音が耳に入ってきて、どれも自分が今まで聞いたことのない音で。東京ってすごく静かな街なんだなあと思って、それも印象に残っていますね。

──東京、静かですかね?

G:私はそう感じました。歩きながら自分の足音が聞こえてきたくらいですから……。砂利なのかアスファルトの素材のせいなのか、とにかく音の響きがこれまで自分が歩いてきた街とは全然違って、新しい音に出会ったみたいな感覚でした。それがすごく耳に心地よかったですね。

──インスタグラムには、夜の商店街や渋谷のスクランブル交差点、ホテルの窓から東京の街を映した写真、映像を投稿しているのを目にしました。

G:そうなんですよ。どこまでも高層ビルが並んでいる空という風景に出会うのは人生初めての経験で、びっくりしちゃいました(笑)。 私は小さな街の出身なので、都会とはいえどこからが始まりでどこが終わりなのか全部見渡せるくらいのサイズ感に慣れてるんですけど、東京はそれとは全然違って! ホテルの30階くらいに泊まっていて、そこからは東京の全景が見渡せるってことだったんですけど、その向こうにまだまだ続きがあるように感じられて、「どこまで続いているんだろう?」って……。自分が想像していた以上に大きな都会でしたね……それと予想以上に人が多くて圧倒されました(笑)。

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──では、最新作の話に入りたいと思います。本作はタイトル『Singing』が示すように、歌、ヴォーカルというものに焦点化されたアルバムであると思います。様々な理由がありながら、あなたはセカンド・アルバムの『Mia Gargaret』以降、もちろんヴォーカルがある楽曲も一部あることは事実ですが、そのうえで“声”の存在をあえて捨象して素晴らしいサウンド・スケープを持つ作品を制作してきたミュージシャンであると考えています。そのうえで本作において歌、ヴォーカルというものに焦点化した背景はどのようなものだったのでしょうか。

G:ずっと前から作りたいと思っていた作品なんですよ。本当は『Mia Gargaret』(2020年)のあとに続けて出すつもりだったんですけど、その前にピアノのアルバムに着手してしまったので……。でも、いつか必ずここに戻ってくることを知っていました。しばらく歌えない時期を経験しているので、余計に今回のアルバムを作りたいって気持ちが強まっていきました。と同時に怖さもあって、踏み出すまでに時間がかかったんです。 勇気を出して一歩踏み出すまで、少し時間が必要でした。

──そのなか、一曲目である「Everyone Around Me Dancing」からすでに感じたのですが声がまるで耳元で歌われているかのように、とても距離が近く、親密に感じるような録音がなされていたことが印象的でした。歌声がダブリングされているようにも思います。本作の歌に関する録音で意識、もしくは工夫された点はどのようなものでしょうか。

G:あの曲は夜中に書いたんですよ……。すごく鮮明に覚えています。深夜で、疲れきっていて、あたりがしんと静まり返っていて……。ただ、その静けさの中で歌うのがすごく心地よかったんです。自分の感情がそのまま声に出ている気がして……。あのときは心が弱りきって、心身ともに疲弊しきっていましたから。その音をプロデューサーのガイ・シグスワースに聴かせたら「何も変えなくていい」って言ってくれて。それでそのままのヴォーカルを使って、そこに音を重ねていったんです。エフェクトも使いたくなくて、 自分のそのままの声を残したいと思ったんですね。特別なことはしたくなかったんですよ。他の曲ではヴォーカルを加工してだいぶ遊んじゃってるんですけど、あの曲に限っては、飾らない一切無防備な声のまま出すべきだと思ったんです。ガイがそこで背中を押してくれました、「そのままの声で完璧だよ」って(笑)。

──それ以外で今回ヴォーカルに関して何か工夫したり、意識した点などありましたか。

G:今回はこれまでとはちょっと違うアプローチをしたんです。声で遊ぶというか、もうちょっと実験してみたかったんです。それもあってヴォコーダーやらヴォーカル加工やらハーモナイザーを積極的に使い出したら、どんどん楽しくなって深みにはまってしまって……。そこから自分の素の声と加工した声の両方をミックスして使えないかなって方向性を探っていくようになりました。その二つを使って色んな組み合わせを試していくうちにハーモナイザーのペダルやヴォーカル系の機材を介すことで、自分自身の中にある何かが解放されたみたいな感覚があったんですね。長年自分が味わってなかったような自由な身体感覚が戻ってくるような感じがあったんです……。それと声が、単純に音として好きなんです。すごくエモーショナルな響きを感じるんですよ。

──声の近さ、もしくは生々しさに関連して、いまあったオートチューン、ヴォコーダーを用いたヴォーカル・エフェクトが「Alive Inside」や「E-Motion」などの楽曲で聴こえることもまた本作の特徴だと思います。そのようなヴォーカル録音は、あなたのレーベルの大先輩でもあるボン・イヴェールが象徴的に用い、フォーク・ミュージックにおける抒情性やエモーションの表現をより鮮明にすることに成功したと考えています。あなたが本作でこのようなヴォーカル・エフェクトを用いた理由をもう少し詳細に訊いてみたいです。

G:ヴォコーダー自体は昔から好きだったんですよ。おそらく10代の頃から聴いてたFrou Frouおよびイモージェン・ヒープがきっかけだと思います。昔からファンなんですよね。「Alive Inside」を書いた時点ですでに頭の中でヴォコーダーの音が鳴っていたんですけど、それまで一度も自分の作品に取り入れたことがなかったんですよ。ただ、ようやく実際に使ってみたら、自分の中の知らなかった部分が引き出されるような感覚があって、そこからすっかり憑りつかれてしまいました。ただ純粋に楽しくて、今まで自分の声を使ってここまで遊んだことなかったなあっていう感覚があって。とくに喉の不調で声を失うという経験をしてからは、自分にプレッシャーをかけすぎていたところもあったので……、そうしたものを間に介すことで、そのプレッシャーから自分自身を切り離すみたいな解放感があったということですね。

──続けて“声”という側面から、本作では様々な楽曲でコーラスや会話音声の挿入などあなた以外のひとたちの声も多く用いられた楽曲が散見されることも印象的です。この多面的な声のありかたは、本作においてどのような意図で配置されたものなのでしょうか。

G:今回のアルバムに入っている声は、もう何年も私の心を慰めてくれていた声たちなんですよ。歌えなかった時期にも、彼らの声を聞きながら「また歌いたいな」って夢を見たり、「きっとまた歌えるようになる」って希望を持つことができました……。それくらい大好きな声たちなんです。そんな人たちと繋がっていて、声で参加してもらえるなんて、どれだけ自分は恵まれているんだろう、と。曲に彼らの声が入った瞬間、腹が座るような感覚がありましたね。それと同時に、これに合わせてもっとうまく歌いたいって気持ちが高ぶったのを覚えていますし! これらの声が今回のレコーディングが特別なものにしてくれました。すごくシュールというか……、そもそも自分が歌えていること自体もそうですし、10代の頃から頭の中にあった声の横に自分の声が並んでるなんて……。その極めつけがエイミー・ミランですよね。自分の曲から彼女の声が聞こえるなんて、人生で一番シュールな体験かもしれません。何しろ、高校のとき学校をサボって彼女の音楽を聴いていたくらいですから(笑)。ダイナーでヘッドホンをつけて彼女の音楽を聴きながらノートに色んな言葉を書きつけたり……、そんな15歳とか16歳だったんですよ。それが今、 彼女が嬉々として自分の曲を歌ってくれるなんて……! まさか、そんなこと人生で想像もつきませんから。

──先ほどボン・イヴェールの名前も出しましたが、本作にはショーン・キャリーも参加しています。彼とはどのようにして出会い、本作に参加することとなったのですか?

G:最初はレーベルからの紹介だったんですよ。同じレーベルで、ここ何年かやりとりしていたんですよね。私の喉が不調になった前後からいつか一緒にやりたいなって心のどこかで思っていたんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。今回、ようやく自分もまた歌おうっていう心の準備ができたときに、最初に一緒にレコーディングしたのがショーンだったんですよ。そこから2人で一緒に2曲作りました。彼のプロデュースに対する姿勢はただひたすらリスペクトでしかありません。正直、すごく怖くもあったんです……。何しろ、人と一緒にスタジオに入って作業するのは5年ぶりぐらいでしたから。それでも彼がその緊張をほどいてくれるような環境を作ってくれて、本当に感謝です。

──彼のアプローチのどういうところに共感しましたか?

G:まず、聴くのが上手な人なんです。そもそも彼の持っているサウンド・パレット自体が圧倒的に美しいのもありますし、ハーモニーに対する感性もすごく独特で……すべてを泣きたくなるほど美しくしてしまう魔法を持ってる人です。ごくシンプルな、例えば今回のアルバムの中の「Rotten」ですら……。あの曲の中にちょっといたずらっぽい、なんか笑っちゃうようなパートがあるんですけど、そこに彼の歌声が入るだけで、胸が絞めつけられるほど切ない曲に変身するんですよ。あるいは、「Alive Inside」のアウトロのあの浮遊感のある歌い方もただもう美しくて……。ほんと、彼の声ですよね。あの声こそが私が彼の音楽に惹かれてきた理由なんだと思います。プロダクションとは別に、最初に彼の音楽に惹かれたのはあの声だったんだなあって。

──そのように様々なミュージシャンやエンジニアが参加した本作では、これまでの作品と比較してもよりサウンド・パレットが豊かで、荘厳さと静謐さを兼ねたサウンド・プロダクションとなっていると感じています。あなたは本作を“歌”のアルバムであると言っていましたが、その本作におけるサウンド・ディレクションではどのような部分を意識していましたか?

G:最初、自分の中にこんな感じっていうっていうイメージがあったんですけど、作っていくうちに別の形になっていって……、たぶん、一曲一曲が一つ命のような、それぞれを独立し生命体みたいなものとして扱ってあげたいっていう気持ちだったんでしょうね。なので、ジャンルという概念は手放したんです。特定の枠の中に縛られるのをやめて、完全に自由に実験しながらやっていったみたいな……。ただ、作っていくうちに、信じて任せるしかなくなっていきまましたね。どんな形の曲になったとしても、ぜんぶ自分が歌っているわけで、そのことが作品全体をつないでくれるはずだと。それを信じるしかなかったですね。曲ごとに必要としているものが全然違っていて、それぞれにちゃんと必要なものを提供してあげたいっていう、そういう気持ちでしたね。とはいえ、自分がここから感じたいものとして、親密さみたいなものは大切にしていきました……単純にお楽しみの部分としてサプライズのようなものも用意しました。例えば「Good Friend」とか、「E-Motion」なんて、自分でもこんな音に育っていくなんてって驚いたくらいです。とくにあのビッグで、ラウドになっていく瞬間なんて、自分でもあんな感じの音楽を作るなんて思いもしなかったです。それでも、すごく楽しくて、自分の中で確実に何かが開けたみたいな感覚がありましたね。

──いま話に出たアルバムの最後を飾る「E-Motion」がまさしく本作のハイライトであるように感じます。特に後半のカート・ヴァイルのギター・ソロと、ドラム、ホーンが挿入されサウンドの厚みが増し、ダイナミックに展開していく部分には独特の覚醒感があります。この曲はどのようなテーマやサウンド構築を意識した楽曲なのか、「E-Motion」という印象的な楽曲タイトルの背景も含めて教えてほしいです。

G:Eメールについて考えていたんです。昔からメールの返信をつい後回しにしてしまいがちで(笑)。それって、辛い感情を認めるのを後回しにするのとどこか似ているなって思ったんですね。その結果、その気持ちを自分の中にしまい込んだままにしてしまう人がたくさんいると思うんですよ。ただ、年齢を重ねるごとに、自分の中に抱え込まずにすべて吐き出したほうが、自分にとってもまわりにとっても楽だって気がついたんです。自分が大切に思っている人には自分の正直な気持ちをきちんと伝えるべきだし、自分も相手からもそうしてほしいわけじゃないですか。自分の気持ちを飲み込んでいたり、ないがしろにしているときって、相手にも絶対に伝わってしまうものですから。曲のタイトルに関しては、ちょっとした言葉遊びでもあるんですよね。“Eメール” は事務的なものなのに対して、“Emotion” はすごくパーソナルなものでしょう? その2つを並べたら面白いんじゃないかなって。自分自身にも、自分と一緒にいる相手にも、自分の気持ちをもっと正直に出してほしいっていう、そういう感じですよね。

──サウンド面ではどうでしょうか。特にギター・ソロと、ドラム、ホーンが積み重なっていく覚醒感を生み出していくラストの展開については?

G:あの曲は友人のブレイク(・レイン)と一緒に録った曲なんですけど、彼はドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズというソウル・バンドをやってるんです。そうしたフィーリングが思いがけないかたちで曲に出てる気がして。曲を書いた時点で、エンディングをどうしたいのかまだわかってなくて……。ただ、いま言った覚醒感みたいなイメージは彼にも伝えていたと思います……。気づきが訪れる瞬間というか、長いあいだ自分を縛っていたものから解放されるときの自由な感じを捉えたかったんです。そしたらブレイクがドラムセットに座って、思いっきり大音量であのドラムを叩き始めたんですよ。それが自分の身体に直接響いていく感覚があって、そのまま曲に取り込むことにしたんです。そこに私のこれまでの全作品に関わってくれている、長年のコラボレーターであるダグ・サルツマンにも入ってもらって。彼はヒップホップのプロダクションも多く手掛けていて、あの曲でもヴォーカルを細かく刻んでピッチを変えたりしてくれて……、そこからは私がこれまでずっと好きでも、自分の音楽にはあまり取り入れてこなかった要素が融合していく瞬間を目撃するような感覚がありましたね。それと同時に、彼らの惜しみない才能が自然に姿を現した魔法のような瞬間にも感じられました。さらにザ・ウィーピーズのデブ・タランが歌ってくれているという! あの声を聴いているだけで、感情が高ぶってしまうくらいですから、彼女の声が入っただけで、曲に広がりが生まれた気がして。さらに極めつけがカート・ヴァイルのギター・ソロですよね、ケーキのてっぺんにサクランボを置くみたいな! こんなにワイルドで荒々しいギター・ソロ聴いたことないってくらいの衝撃を受けました(笑)。少なくとも私がこのアルバムの音として描いていた想定パターンにはなかったものです(笑)。でも、だからこそ必要なものだと思ったんです。レコーディング作業の終盤に入ってからは、ただ楽しむことが一つの目的になっていきましたね。自分以外の誰かがこの音楽の中で輝いてもらいたいという気持ちが芽生えていきましたね……。この音楽は決して自分ひとりだけのものじゃない、みんなで作ってるものなんだっていう、それを実感させてくれた曲でしたね。

──本作について、「10代の頃に聴いていた音楽をたくさん聴いていたから、この音楽にもそのノスタルジーが反映されていると思う」とあなたが語っていたインタビューを目にしました。これは単純な興味なのですが、あなたは10代のころどのような音楽を聴いて育ってきたのですか? 以前のインタビューではあなたがファイストやボブ・ディラン、ニック・ドレイク、ヨ・ラ・テンゴ、ブライアン・イーノ、ザ・ポスタル・サーヴィス、デス・キャブ・フォー・キューティー、ダッシュボード・コンフェッショナルなどの名前をあげているのをみました。

G:それで言うなら、ペドロ・ザ・ライオンを聴きまくっていました、あとはエイミー・ミランのスターズもよく聴いていました。それにブロークン・ソーシャル・シーンに夢中で、エミリー・ヘインズのソロプロジェクトのエミリー・ヘインズ・アンド・ザ・ソフト・スケルトンにもハマっていましたし、ファイストもすごく聴いてましたね……。当時「Mushaboom」が出た頃で、あのアルバムの赤いジャケット(筆者注:『Let It Die』)を見たとき、脳の化学反応が変わるぐらいの衝撃を受けたんですよ。それから、先ほどの話もあったデブ・タランのザ・ウィーピーズも愛聴していましたね。10代の頃は本当にそのへんに夢中でした。今でもノスタルジアからではなく、ただ純粋に好きで聴いています。ただもう好きなんです(笑)。

──そのうえで、あなたのルーツにあたるアルバムを3枚選ぶとしたらどのような回答になるか、訊いてみたいです。

G:そうですね……。一番はシャーデーの『Lovers Rock』ですね。二番目は……ああ、究極の選択ですね(笑)……。2枚目はスティーナ・ノルデンスタムの『And She Closed Her Eyes』。三番目は……、ああ、今のこの発言に関して。絶対にあとで後悔するってわかっているんですけど(笑)。自分の人生にとって大切なアルバムがたくさんありすぎて……。ただ、今ここで挙げるとしたら3枚目はニック・ドレイクの『Pink Moon』になるでしょうか。自分のファースト・アルバムに関して言えば、間違いなく『Pink Moon』に導かれたものだと思います。というのも、ファーストの曲に関しては全部ニック・ドレイクのチューニングをもとに書いているので。ギタリストとしてものすごく影響を受けています。だから、今、ここでは3枚挙げていますけど、あと10枚くらい今この場で即思い浮かびます(笑)。そもそも音楽自体が、 私にとってはすべてですから。今だって何かの音楽と出会って突然人生が変わってしまう瞬間が普通にあるし、その感覚は歳を重ねてもあんまり変わっていない気がするんです。 好きな音に出会うと今でも自分でもどうしょうもないくらいときめいちゃうんです。

──それらのルーツとなる音楽のどのような要素が本作において反映されているといえるでしょうか。もし、具体的な楽曲やサウンド、リリックがあれば教えていただきたいです。

G:シャーデーに関しては、ああもう、本当にあんなふうに歌えたらいいのにって思うんですけど……、あのサラっとした脱力感が好きなんですよね。常に目標にしている気がします。それと『Lovers Rock』のプロダクションですね。あの感じも気がついたら自分の音楽にも影響として出ていたってことが何度もありますし……、あのアルバムのサンプルのドラムが好きなんですよね。今回のアルバムでもサンプルのドラムをたくさん使っています。スティーナ・ノルデンスタムの『And She Closed Her Eyes』もそうですよね。グレゴリオ聖歌みたいな声があったり、サックスが入っていたり、すぐそばで囁くような声だったり、彼女のヴォーカル・スタイルにはずっとインスパイアされていますね。ニック・ドレイクに関しては、いわゆるヴォイシングですよね、コードをどのように配置するか。レコーディングされた音の表現域という面で、あの感情の深みにしろ、録音された音を通して感情の響きを操るという点に関して、まさに唯一無二の天性の才能を持っていた人だと思います。私自身はまだまだ全然その領域には辿り着けていませんが、いつでもどこかで追いかけている感じがあります。全体的に暗い雲のようなものに覆われているような雰囲気があるんですけど、その中にも何かしら美しさなり希望なりを感じさせるんですよね、本当に……。すべての感情を一度に感じさせてくれるような圧倒的な感情を呼び起こしてくれるんです。

──本当に勝手な想像なのですが、ザ・ポスタル・サーヴィス、デス・キャブ・フォー・キューティー、ダッシュボード・コンフェッショナルの名前から連想して、あなたの音楽にエモやパンク的な要素があるとすればどこになるのか、ぜひ訊いてみたいです。

G:どうなんでしょう、自分の音楽に関しては、あまりそういう要素がない気が……。ただ、ペドロ・ザ・ライオンのデヴィッド・バザンが関わってくれるだけで、ちょっとパンクになった気がしま……す……(笑)。あるいは、カート・ヴァイルがいるだけで、なんだか自分までクールになったような気持になれるんです(笑)。ただ、自分自身に関してはラウドな音だったり、激しい怒りや焦燥感みたいな感情をまだまだ自分の音楽の中で探索しきれてない気が……。やってみたい気持ちはあるんですけど、まだ自分の中でその準備ができていないというか、そこまで自分を解放しきれていないんでしょうね。だから、激しい怒りや感情に振り切れている表現を見ると、単純に尊敬の念を抱いてしまいますね。今言ったエモやパンクなんてまさにそうで、「ああ、カッコいいなあ」とは思うんですけど、そもそも私はあそこまでクールなタイプじゃないんです(笑)。

──この先、いつかのタイミングで怒りが出てくるかもしれないじゃないですか(笑)。

G:そうですよ! 次のアルバムでひょっとしたら(笑)。ちょうどつい何日か前にデイヴにそういう内容のメッセージを送ったばかりなんですよ。アイダホっていうバンドの「Skyscraper」っていう1993年の曲を初めて聴いて衝撃を受けて! 早速、その曲をデイヴにも転送したんです。「私、ロックを作る心の準備ができたかもしれない」って一言を添えて(笑)。私もいよいよラウドな音でデビューする時期に来てるのかもしれないですね(笑)。

──(笑)。冒頭でも話しましたが、あなたの作品ではこれまでフィールド・レコーディングや環境音、音声録音が象徴的に用いられてきたと思います。本作においては「Rotten Outro」などが印象的な楽曲ですが、あなたにとってフィールド・レコーディングとはどのような意味を持つ制作の手法で、それは本作においてはどのような機能性を持たせて配置されているのですか?

G:フィールド・レコーディングは昔から自分にとってすごく大事な要素で……、それこそファースト・アルバムの頃から一連の母からのボイスメールをそのまま使っているところからも、その断片が垣間見えますね。『Mia Gargaret』でそこをさらに深く探っていって、『Romantic Piano』のときはよく外で音を録っていました。たぶん、単純に音というもの自体が好きなんだと思います。そうやって集めた音の一つ一つが私にとっては大切な思い出なんですよね。あのとき、あの瞬間に戻してくれる、一番近い手がかりが音というか……。だから、どこへ行くでも小さなレコーダーを常に持ち歩いてるんですよ(笑)。(部屋にあった実物を掲げて)これはマイクロカセット・タイプで、こっちは普通のカセット・レコーダーですね。どこに行くにもこの子たちを持ち歩いているんですよ。ふとした瞬間に、友達の話した言葉にハッとしたときなんか、「もう一回ここに向かって今と同じように話してくれない?」ってお願いしたり(笑)、自分の言葉を録音することもあります。ギターもよくこれで録っていますね。そうやって人生の一部を記録するみたいな。自分でもなんでこうしなくちゃならないのか、正直、わからないんですけど、ここに入ってる音を聴いたとき、曲を書いた時の自分に一瞬で戻れる気がするんです。

──今どきのICレコーダーみたいなものじゃないんですね。

G:そうなんですよ(笑)、私はもっぱらこの子たちを愛用していて。何でしょうね……、音として、すごく充足感を感じるんですね。ここから聞こえる音の響き自体が好きなんですよ。これを使って録音した音を再生して聞くのも好きで、例えば友達の声なんかでも、ほんの5分前に起こった出来事でもまるで遠い昔の記憶みたいに感じられるんですよね。

──ちなみにフィールド・レコーディングをするようになったきっかけは何だったんですか?

G:最初は、iPhone のボイスメモ機能がきっかけだったような気がしますね。最初にあの機能が登場したとき画期的だと思って。自分の手元にある小さな機械でいつでもどこでも録音できるって、なんて画期的なんだろうって。何しろ初めてiPhone を手にしたときのことですから、当時は録音機材なんて持ち合わせていなかったし、今みたいにテープ・レコーダーの味わいも知らなくて。それでも、そのiPhoneでちょこちょこ色んな音を録音していました。おばあちゃんと病院にいたときに、医療機器のピッ、ピッ、ピッって音がすごく美しく感じられて、それを録音していた記憶がありますね……。おばあちゃんに「あんた、何してんの?」って訝しがられた思い出があります(笑)、何しろ当時80代でしたからね(笑)、そりゃわからなくて当然ですよね。だから、フィールド・レコーディングを始めたのは10年前くらいになるでしょうか……。いや、10年よりもっと、15年くらい前かもしれません。とにかく気に入った音を発見したら、録音せずにはいられない質なんです(笑)。もはや本能みたいなものかもしれません。

岡村詩野(以下、O):先ほどニック・ドレイクを影響として挙げていましたが、彼のサウンドって無駄のない削ぎ落とされたサウンドだと思うんですね。一方、あなたのサウンドはたしかに無駄のない削ぎ落とされたサウンドではあるんですけど、もうちょっと生々しい感情の機微みたいなものを広げていくような、音のレイヤーをすごく重要視していると思うんですね。ニック・ドレイクの『Pink Moon』ってアルバムからそうした音響的なところで、あなたから見て興味を持てる点や参照している点はありますか?

G:そうですね……、あの音の深度みたいなところでしょうか。彼の曲ってシンプルなように見えて、実はものすごく精巧に作られているんですよ。ギターの弾き方を取っても、すごく緻密で。あるいは、チューニング自体もすごく独特だし。例えば、一番低い弦を丸ごと1音、EをCまで下げていたり、すごく独特で面白いんです。そうしたアプローチ自体がすごく斬新でインスピレーションになります。しかも、当時そういうことをしていた人って他にいなかったと思うんですよ。どこまでも緻密に作り込まれて……、あの曲をライヴで再現するのは本人にとっても相当至難の業だったんじゃないでしょうか。ちなみに私もいままさにその葛藤をしている最中です(笑)。どこまでも大切に緻密に作り上げている音だからこそ、ライヴで再現するのがすごく難しくて、それで暗澹たる気持ちになったりします。ニック・ドレイクもきっと同じような葛藤を抱いていたんだろうなあって、彼のことがより身近に感じられるようになったというか、自分自身が経験しているからこそ、その不安やもどかしさが自分にもすごくよくわかるんです。

それ以前に、単純に曲として豊かですよね。あの豊かな音の響きにしろ、深みのある声にしろ、まるで魂の根源から湧き起こってくるような響きを持っていて……、たとえそれが苦しみみたいなものから発露されたものだとしても、そこには同時に光や希望のみたいなものも感じられて、ただひたすら美しいんですね。圧倒的なまでに純粋な美しさ。もちろん、自分を彼と比較するつもりはさらさらないんですけど、 自分が何かの判断をするときに、型にはまらなくてもいいっていう勇気が必要なときに、心のどこかでニック・ドレイクのことを思い返している自分がいますね……。あるいは、「遠回りしてもいいんだ」って思えることも、今の自分が選んだあり方なんだとか……。例えばじっくり時間をかけて自分のペースでやっていくこととか、自分を大切にすることとか、そういう自分自身にとっておそらく良いと思えるような選択ができるようになったのも、ニック・ドレイクのおかげだと思います。しかも、彼はその機会すら持てなかったかもしれないわけじゃないですか……。あまりにも若くして亡くなってしまいましたから。それもあって年齢を重ねるごとに、尚さらニック・ドレイクに思いを馳せずにはいられないんです、「もし彼が生きていたらどうやって乗り越えていっただろう?」、「もっと良い方法を見つけていたかな?」って。私自身、ものすごく辛いことも厳しいことも落ち込んだ時期も通ってきました。それを乗り越えて今ここにいるわけですよね……。それでも、人生は続いていく。そのことを実体験として知っているわけです。

O:ニック・ドレイクって歌詞も非常に特徴的な人ですよね。非常にシャーマニックというか、森とか木々とか空の比喩を用いて人間の孤独とか疎外感みたいなものを表現してきたわけで。あなたは一時期声の不調により言葉を持たなかった時期を経験しているわけで、ニックの言葉を用いて疎外感を表現するスタイルについて、歌詞の観点からどう捉えていますか?

G:そうですね、今のモチーフってことに関して言えば、自然は私に正気を保たせてくれる数少ないものの一つだと思います(笑)。自然の中に身を置くと、自分がものすごく小さく感じられて……、それが好きなんです。自分なんて取るに足らない存在だなって感じることがいいです。と同時に自然の美しさもこの目に焼きつけて感じたいんです……。自分がいっぱいいっぱいになったとき、どうしようもない感情に襲われたとき、外にダーッと走り出していって、木を眺めたりとか普通にしてなすから(笑)。あるいはうちの猫を見たりします……。猫は存在しているだけで悟ってますよ(笑)。そういうものと私は深く繋がっている気がするんですね。その感覚は今回のアルバムにもあらわれていると思います。例えば「Moon Not Mine」が月に出てる夜に……、あのときはたしかピンク・ムーンの日だったと思うんですけど……、あ!今日、たしかピンク・ムーンじゃなかったでしたっけ!?

──ああ、たしかに! ちょうどピンク・ムーンですね(筆者注:取材が行われたのは日本時間4月2日午前)!

G:なんという奇遇! ピンク・ムーンの日に今のこの一連の話題をしているなんて。「Moon Not Mine」も、その夜、湖に行って、ただ月を見つめて目の前にあるものを全身ですべて受けながら、家に帰って即あの曲を書きました。私にとって自然はダイレクトなインスピレーションですね。

O:あなたは孤独とか孤立を歌っていても、その中に心地良ささえ感じさせるような、孤独の中にある種の希望や、新しい快感を感じさせる要素を今回の歌詞の中にも感じたのですが、孤独とか孤立というのはあなたにとってどういった意味を持つものなのでしょうか?

G:孤独と孤立とはまた別のものだと思うんですね。孤立はなんとなく“隠れる”みたいな感覚というか……、私もこれまで人生を生きてきた中で誰とも話したくない、自分ひとりになりたい、みたいな時期を何度も経験していますから。それでいいと思うんです。ただ自分自身と向き合う時間も必要だと思うので……、むしろ健康的なことのような気がします。ただ、そこには当然バランスも必要なわけで。今回のアルバムなんて、何年かぶりに自分自身の世界の外に飛び出すみたいな感覚があったんですよ。また自分以外の人たちと一緒に音楽を作る世界に戻っていくみたいな感覚が……。その前に、ほぼ完全に一人で2枚のアルバムを作っているくらいですからね。いい加減、外の世界に飛び出す時期に来ていたんですね……。それでも、そこにも孤独があるんです。「よし、自分の殻から抜け出して積極的に人の中に入っていくぞ」と決意して、それを楽しんでいる自分がいる一方で、ただ自分ひとりと向き合う時間を恋しく思っている自分もいたんですね。それもあって今回のアルバムの中には完全に自分ひとりで、いまZOOMを繋いでいるこの家で作っている曲もあるんですよ。積極的に外に出ていった反動として、また自分自身の根っこと繋がり直すみたいな、そんな心地よさがあったんですね。だから、人と共同で何かを作るという体験につま先を浸しながらも、そうでない時間もすごく大事にしていました。実際に、人と一緒にいるときよりも自分ひとりでいる時間からこれまで多くの気づきを得てきたような気がします。まだ若い頃はどこかで「そんなんじゃダメだ、もっと積極的に人と交わらないと」って思っている自分がいたんですけど、年齢を重ねるにつれて、クリエイティヴなことに従事している人間にとって、自分ひとりになる時間を持つことはすごく自然な欲求である、と気づきました。自分自身が何をしようとしているかについて、自分自身がどんなものを創造したいのか知る必要があると……。それは外側ではなく、自分の内側にしか見つけられないものだと思うんですね。

O:もう一つ訊かせていただけますか。あなたの拠点であるシカゴのイリノイ州はブルーステイトとして昔から民主党の強い地域ですが、いまアメリカでは反トランプ的な動きが広まっていると思います。例えば移民への排外主義に対する運動が一般市民の中で高まっている。あなたがシカゴに住みながら、もしくはアメリカをツアーで移動するなかでそのような動きを感じことはありますか。

G:いまのアメリカがめちゃくちゃな状況であることはたしかですよね……。こんなに最悪な状況が起こりうるなんて、まさに自分の想像の範囲外です……。そもそもアメリカは移民によって生まれた国なのに。私の家族のルーツも移民ですから。祖父母はイタリアからの移民です。だから、今、自分の国で起きている現状を前にして理解しがたいというか、「一体どうしてこうなってしまったんだろう?」と、ただただ戸惑うばかりです……。その中でも、シカゴという街についてはすごく誇らしく持っているんです。ここにも ICEの強い基盤があったんですけど、シカゴの一般市民がそれに対して抗議して、追い出してやったわけですよ! そのことについて、本当にこの街の出身であることに誇りに思っています。自分が正しいと思ったことのために立ち上がる強さを持っているのが私の街、シカゴであると。私たちは ICE を支持していないし、ドナルド・トランプを支持しているわけでもないし、今のこの状況を望んでなかったし、誰一人として今のこのようなこんな結果を求めていなかったはずです。

──最後にもう一つ質問をさせてください。本作にはあなたがツアーで共演もした青葉市子の名がついた「Ambient for Ichiko」という楽曲があります。あなたが青葉市子の音楽とどのように出会い、どのようにしてツアーに誘い、どのようにこの楽曲を制作するに至ったかを教えていただきたいです。

G:たしかパンデミックの最中に友達が彼女の作品を教えてくれて、それ以来のファンなんです。そこから2021年に彼女がライヴでパフォーマンスする姿を見て、そこから私もまた人前で音楽をやりたいなって気持ちに傾いていったんですよ……。ステージでの彼女って、すごく自由じゃないですか。ステージのうえですごくオープンに自分を解放しているというか。そのうえで、技術的にすごく優れたミュージシャンでもある。その両方を持っているアーティストは初めて見た気がします。同時に遊び心もあり、目の前のいるオーディエンスとすごく深いレベルで繋がっているように感じられたんですよ。そこにすごくピュアな喜びを受け取って……、そこから彼女の活動をフォローし続けていく中で、シカゴに来ることを知り、「前座が必要ならぜひ!」って打診したところ、嬉しいことに「全米ツアーに同行してくれませんか?」って返していただいて……。長いあいだライヴから遠ざかっていたので、4公演だけ参加させてもらいました。でも、その4回のライヴが本当にすごく良くて……、そのときのライヴのためにアンビエントの曲を作って、全公演で演奏したんですけど、この曲をアルバムにぜひ入れたかったんです……。あのツアーがなかったら、生まれていなかった曲ですから。それで彼女に捧げることにしたんです。ある意味、彼女のおかげで生まれた曲でもありますから。本当に忘れられない経験になりました。こうしてまたステージに上がるきっかけをくれて……、いまこうしてステージに立っていられることも、すべてあの出来事がきっかけなんです。すごく勇気をもらいました。しかも、市子さんもすごく優しくてスイートな人で……。そういうのもすべてひっくるめて、大切な思い出です。

──そのきっかけを作ってくれた青葉市子さんに私たちからも感謝です。

G:本当に素晴らしいアーティストですよね。今までライヴを観た中で一番凄いと思った人かもしれません。本当に単なるファンです(笑)。

──今日はありがとうございました。

G:こちらこそ本当にありがとうございました! 近いうちに日本に行く予定なので。そのときにまたお会いできることを楽しみにしています!

<了>

Text By Yasuyuki Ono

Photo By Kodai Kobayashi / Graham Tolbert

Interpretation By Ayako Takezawa


Gia Margaret

『Singing』

LABEL : Jagjaguwar / BIG NOTHING
RELEASE DATE : 2026.04.24
TOWER RECORDS / HMV/ Amazon / Apple Music

Gia Margaret

『There’s Always Glimmer』(Reissue)

LABEL : Orindal Records / PLANCHA
RELEASE DATE : 2026.04.24(オリジナル・リリースは2018年)
TOWER RECORDS / HMV/ Amazon / Apple Music

Gia Margaret

『Mia Gargaret』

LABEL : Orindal Records / PLANCHA
RELEASE DATE : 2026.04.24(オリジナル・リリースは2020年)
TOWER RECORDS / HMV/ Amazon / Apple Music


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