Back

BEST 12 TRACKS OF THE MONTH – Jul, 2023

Editor’s Choices
まずはTURN編集部が合議でピックアップした楽曲をお届け!

ArrDee & Bugzy Malone – 「ONE DIRECTION」

例えばデイヴとセントラル・シーの同い年によるタッグEP『Spilit Decision』やJ・ハスの再びの帰還となった『Beautiful And Brutal Yard』など、今年もUKのラップ・シーンから夏をさらに熱くする様々な作品が届けられているが、そんな中でも埋もれないホットなコラボレーションの到着だ。ブライトン出身の新鋭としてシーンを騒がせるArrDeeとグライム・シーンのリバイバルにも貢献したマンチェスターの実力者、Bugzy Maloneが派手なホーンのサンプルを乗せたドリル・トラックの上で共演。景気の良いダンス・チューンとなっている。読む価値があるかはさておき、タイトル通り超有名グループに絡めた歌詞にも遊び心が感じられる。(高久大輝)

Mali Velasquez – 「Tore」

ナッシュヴィル拠点のシンガーソングライター、マリ・ヴェラスケスが、10月に《Acrophase Records》よりリリースするデビュー・アルバム『I`m Green』からのリード・トラック。抑揚を落とし、コーラス・エフェクトを効かせたヴォーカルとアコースティック・ギターをベースに、シンセサイザーとエレクトリック・ギターによるノイジーな意匠をまぶした音像が印象的。サミアが4月にリリースしたヤーヤーヤーズとポーチズのカヴァーEPをプロデュースしたジョセフ・クーン(彼も《Acrophase Records》所属)をプロデューサーとして招いており、来る新作が近年続々と意欲作がリリースされているフィメイル・シンガーソングライターの作品群の中でどのようなものとなるかいまから楽しみ。(尾野泰幸)

Prewn – 「But I Want More」

不勉強にも全く知らなかったが、Pelican Movementという、初期アニマル・コレクティヴにも似たNYの実験系サイケ・コレクティヴが面白い。リーダーのKevin McMahonは《Marcata Recording》というレーベル&スタジオを経営していてウォークメンやスワンズを手がけている要人だが、今度はメンバーの一人、Izzy Hagerupによる新たなユニット=Prewnが始動した。8月25日にリリースされるファースト・アルバム『Through The Window』からの最初の先行曲となるこれはサイケ・フォーク〜フリー・フォークをよりエモーショナルに展開したような曲で、パーキンソン病に苦しみつつコロナ禍で老人ホームに隔離されていた父親の目線から書かれたもの。残酷なまでに悲劇的な歌詞だが、ちょっとジョアンナ・スタンバーグにも似た諧謔味ある歌が奇妙なシニシズムを醸し出す。(岡村詩野)

Troye Sivan – 「Rush」

2018年の「My My My!」でも歌われた熱き性愛への切望と祝福は、ハッピーなハウス・ビートと小気味よい打撃音(MVを観よ)によって更新される! 四つ打ちとガラージをミックスしたような拍子に、ファンキーなベースは腰を揺らさせ、スタッカートのピアノ・リフは眩しいほどにお天気に。異なる出自を持ったいくつものダンス・ビートがまぜこぜにされている。そんな軽薄さがひたすら克ちつづける、ディスクロージャーばりに健康的なトラックに、シヴァンはどこまでも伸びやかなファルセットをかさねる。28歳を迎え、『Bloom』でまだ見られた表現やスター性への戸惑いや恐れは消え失せたようにも思える。解放と享楽のサマー・アンセム。(髙橋翔哉)

Tycho – 「Time To Run」

スコット・ハンセンによるソロ・プロジェクト、ティコの新曲はクロスカントリー大会での体験とファンク・ミュージックから着想を得たという律動的なナンバー。すぐにティコが新しい局面に踏み込んだとわかるだろう。粘るシンセ・ベースを短く刻んだり汚した質感のシンバルを分離したりと、リズムへ焦点を向けて、これまでのメロディアスさを控えている。しかし、中盤でEQを曇らせるなどHi-Fiに振り切らない質感は一貫したままだ。どこか『Epoch』(2016年)に通じる鋭さがあるのはベース/ギターのザック・ブラウンの手腕によるものだろうが、ミキシングをグリズリー・ベアのクリス・テイラーが手掛けていることも興味深い。(吉澤奈々)


Writer’s Choices
続いてTURNライター陣がそれぞれの専門分野から聴き逃し厳禁の楽曲をピックアップ!

Anish Kumar – 「Care About Me」

ボリウッド映画のサントラをサンプリングしてモダンなタッチのハウスやディスコに仕立て上げた“Bollywood Super Hits!”が話題を呼んだ、ケンブリッジ大学医学部に在学するUKエイジアンの最新トラック。ハイトーンの女性ヴォーカルをフィーチャーした夏向けのアンセミックなハウスで、ダフト・パンクに通じるところもあるが、この曲を収めたEPにはチルなヒップホップがあったり、ブレンダ・リーの「Is It True」(ちなみにこの曲のギターはジミー・ペイジ)を大胆に使ったブレイクビーツがあったりと、そのプロダクション・スタイルは実に多様だったりする。共演経験もあるバリー・キャント・スイムと共に今後要注目の存在だ。(油納将志)

Anna Luisa – 「Feel Free」

日常の中で最も自分がリラックスしていると感じるのは、無意識にハミング混じりの歌を口ずさんでいる時かもしれない。Anna Luisaの新作に収録されている「Feel Free」で私たちを「自由」に導くのもまた、歌とハミングの間をゆく唱法だ。神秘的なヴィブラフォンのアルペジオにクワイア的なバリトンヴォイス、そしてエンヤを思い起こさせる優美なコーラスが何層にも重なる展開は、身体の緊張をほぐすように陶酔的に広がる。昨年《Leaving Records》から作品を発表したJulius Smack主宰のクイア・アーティストのためのコミュニティレーベル《Practical Records》からリリース。(前田理子)

Mona Yim & Memphis LK – 「Thinkin Of U」

これまでにEPを2作リリースし、今年3月にはカーリー・レイ・ジェプセンのオーストラリア公演でサポートも務めたMamphis LKと、ベルリンを拠点に活動し、グラス・アニマルズやDJ Seinfeldのリミックス・アルバムに参加しているMona Yim。フォー・テットやオーヴァーモノのようなプロデューサー、ロザリアやラナ・デル・レイのようなポップなソングライティングが好きだという二人によるこの曲は、シアーで浮遊感のあるボーカルが心地いいドリーミーなUKガラージ〜2ステップ。ベッドルームミュージック的で「ガーリー」なダンス・ミュージックはplanet rave以降の楽曲とも言えるかも。「Thinkin’ of you lately」という面倒で愛おしいリリックが耳に残る。(佐藤遥)

Natural Wonder Beauty Concept -「Driving」

ババ・スティルツ、スザンヌ・クラフトなど、このところエレクトロニック・ミュージックのクリエイターがインディーやダウンテンポに接近した良作が続いているけれど、このアナ・ロクサーヌとDJパイソンによる“バンド”もそのひとつとして挙げていいかもしれない。なにしろリリースされたファースト・アルバムでは、DJパイソンことブライアン・ピニェイロがヴォーカルをとっている曲も収められている。これは、親交を深めるきっかけになったという、ふたりがあてもなくNY郊外をドライブする場面をそのまま描写したようなアトモスフェリックなナンバーで、夜の闇にどこまでも潜っていけそうになる。(駒井憲嗣)

Ralphie Choo & Mura Masa – 「MÁQUINA CULONA」

『A COLORS SHOW』でのパフォーマンス以降、《Primavera Sound》をはじめ本国の大型フェスに次々と出演しているマドリードのプロデューサー、Ralphie Choo。ベッドルーム・スパニッシュ・ポップを体現する彼が9月にリリースするデビュー作『SUPERNOVA』から、なんとムラ・マサとのコラボ曲が公開された。「クラシカルな要素を残した、2072年直送のインダストリアル・クンビア」と自身が表すように、平衡感覚を剥奪するカットアップが身体をぐいと引っ張る。英訳するなら「BIG ASS MACHINE」、攻殻機動隊のような火照る鋼鉄の交接、今夏のガソリンとして両の耳から装填しよう。(風間一慶)

Yard Act – 「The Trench Coat Museum」

ヨークシャー州リーズ出身の4人組バンドであるヤード・アクトのセカンド・アルバムへの布石となるシングル。本作のサウンドは、ギャング・オブ・フォーやPiL、ケミカル・ブラザーズ、LCDサウンドシステム、そしてフランツ・フェルディナンドなどロックにおけるダンス・ミュージック史を連想させる。歌詞でもトレンチ・コートの博物館を見学する設定が面白いだけでなく、その過程で歴史の対象に向けられていた視線が、気が付けば自分へと向かってくる作りになっている。カルチャーという大きな時間軸の中で、自分自身を捉え直すという作りは、サウンド、映像、コンセプトと全てがクールな一曲。(杉山慧)

見汐麻衣 with Goodfellas (Mai Mishio with Goodfellas) – 「夏の顔たち」

エッセイ集「もう一度 猫と暮らしたい」の余韻に浸っていたところに届いたMai Mishio with Goodfellasの3ヶ月連続リリースのシングル第一弾。夜空に星を一つずつ置いていくようなピアノの音色と、そこに柔らかく絡みついてくるリズムに心をつかまれるイントロ。続く「ずっと不透明なままの顔たちが 夏を迎えて笑いはじめる」という歌詞に、この季節にしか見えない、生まれない何かを写しとった名曲であることを悟った。湿気と冷気が入り混じる空気の中、死者と生者がざわめき交感する夜が、少なくともかつては、この土地の夏にはあったのだ。山田太一の小説『異人たちとの夏』を読み返したくなった。(ドリーミー刑事)


【BEST TRACKS OF THE MONTH】


過去記事(画像をクリックすると一覧ページに飛べます)






Text By Haruka SatoKenji KomaiShoya TakahashiRiko MaedaNana YoshizawaIkkei KazamaDreamy DekaShino OkamuraMasashi YunoKei SugiyamaDaiki TakakuYasuyuki Ono

1 2 3 61