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Easy Life: MAYBE IN ANOTHER LIFE…

2022 / Geffen / Island / Universal
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成功を手にして失ったモノと得たモノ

16 October 2022 | By Kei Sugiyama

ヒップホップからの影響をロックバンドのフォーマットに落とし込んだレスター出身の5人組バンドeasy life。デビュー作『life’s a beach』(2021年)で全英チャート2位を獲得するなど、一躍スターダムを駆け上がった。コロナ禍によりフェスやライヴが軒並み中止になるなど新人にとってはアピールの場が奪われる難しい中で成功を手にした彼らは、傍から見ると順風満帆に見えていた。それだけに2作目となる本作で見せた姿は少し意外だった。

本作は、大きく2つのテーマがある。一つは”後悔”、もう一つは、成功により周りからの干渉が増えたことへの”不満”ではないだろうか。それはアートワークからも読み取れる。前作は海に沈んでいく車という不穏な雰囲気だったが、本作はミニチュアで作られ整備された可愛らしい世界観。しかし、そこに「別の人生もあったのでは」という意味深なタイトル、さらにこれまで小文字で統一されてきたタイトルが大文字に反転されている点には別バースの世界線を想像させるし、同じようなフォロワーが増えた事への対処でもあるそうだ。本作を聴いた後に振り返ってみると、上記で示したテーマ性を外形的に示唆するモノとなっていると思う。サウンド面では、アルバム全体を通してレコードのノイズが何か所も挿入されていたり、様々な所で音像を歪ませている所などが、本作のテーマである後悔と振り返りによるノスタルジックな雰囲気を示している。

そのノスタルジックな雰囲気を最も顕著に示しているのが「CROCODILE TEARS」だ。ザ・ビーチ・ボーイズのコーラス・ワークを参照点にしているだけでなく、楽し気でありながらどこか寂しさを感じる音像は彼らの代表作『ペット・サウンズ』からの影響を色濃く感じる。この曲の「何を恐れているのか、何から逃げているのか」といった問いかけの後の、「終わりのないスクロール」や「画面を見つめる週末」といったフレーズは印象的だ。コロナ禍においてSNSが社会の窓口として機能した側面はあるが、「BEESWAX」、「BUGGIN’」など過剰な共有と干渉にさらされることへの嫌悪感を示した楽曲を合わせて考えると、SNSに踊らされることの危うさや負の側面、虚偽も含めた噂話などに対する皮肉なども込められているのだろう。そうした振り返り中で語られる「CROCODILE TEARS」での「暗闇は怖くないけど、僕は太陽の方が好き」というフレーズは、楽曲のやさしい雰囲気も相まってあくまでも楽しんで前に進んでいく彼らの姿勢を示しているようだ。

あと本作の特徴として忘れてはならないのが、客演曲である。Arlo Parksが参加した「sangria」(2020年)で示していたように、ボーカリストとのコラボはMurrayとの掛け合いの魅力も含め、彼らにとって大きなアクセントとなる。本作ではKevin Abstract、BENEE、Gus Dappertonの3人が参加している。Kevin Abstractとの「DEAR MISS HOLLOWAY」は、本作の中で一番最初に完成した楽曲であり、本作のサウンドの方向性を決定したという意味でも中心となっている楽曲。BENEEとの「OTT」は、彼女の聴いていて高揚感が刺激されるポップな質感が生かされているだけでなく、アウトロのギターソロのお遊び的な雰囲気など互いのポップな側面が引き出されている。これまでのeasy lifeの中で最も多幸感あふれる楽曲だろう。Gus Dappertonとの「ANTIFREEZE」は二人の憂いを含んだハモリが感情の琴線に触れるような、「OTT」とは全く雰囲気が違う楽曲だが、こちらもGus Dappertonのファルセットを見事に生かした楽曲になっている。バンドがゲスト・ボーカルを迎えた楽曲は得てして、話題性が優先され楽曲のクオリティーやアルバムのテーマ性とは相容れないモノが多いように思う。しかし彼らにとってコラボは、相手の特徴が生かされた楽曲になっているだけでなく、アルバムとしての必然性も担保されている。それは、ヒップホップを下地にしたこのバンドの出自が、サンプリング感覚でゲストの特徴を自分たちのサウンドの中に取り込むのが上手いということなのだろうか。こうしたコラボの妙という点では、ブラーのデーモン・アルバーンによるプロジェクトGorillazに通じるモノがある。Bobby Womackを迎えたGorillaz「Stylo」のように、彼らとソウル・レジェンドのコラボもぜひ聴いてみたい。いずれにせよ、本作によりさらに楽曲の幅の広がった彼らが、今後どんな広がりを見せていくのか期待を込めたくなる、そんな一枚だ。(杉山慧)


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