Review

Alfie Templeman: Mellow Moon

2022 / Chess Club
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ダンサブルで、メロディックで、ちょっとブルーなデビュー作

10 June 2022 | By Kei Sugiyama

ここ最近、レディオヘッドからの影響を感じられるソングライターが増えているように思う。例えば、Arlo Parks「Eugene」は「Reckoner」、Wallice「Little League」は「Weird Fishes/Arpeggi」、Omar Apollo「Invincible」は「No Suprises」などの90年代的な雰囲気と、「House Of Cards」などの00年代後半以降のロックにおける、ダンスミュージックとしての再定義の雰囲気も感じさせる。本作がデビュー作となる英国ベッドフォードシャー出身のシンガーソングライターAlfie Templemanもレディオヘッドからの影響を公言している一人だ。

彼の場合は、サウンドというより楽曲のコンセプトをモチーフにしている面が強いと思う。そういう意味では、前作のEP『Forever Isn’t Long Enough』あたりから顕著になった、ハッピーとも悲しみとも言えない感情、本作において彼はそれを「ブルー」という言葉で表現していると思う。この言葉は「Colour Me Blue」や「Folding Mountains」の中で歌詞として使われているだけでなく、アートワークの藍い空は、「Galaxy」や「Mellow Moon」、「Just Below The Above」の歌詞とリンクしているように思う。本作の “Blue” には、若さ、成長、ノスタルジア、憂い、空、宇宙など、多義的な意味合いが込められているように思う。こうした所に、ダークでもハッピーでもない、でもポップで美しいと彼が説明するレディオヘッド「No Suprises」の影響が見受けられるのではないだろうか。

こうした一面にも見られるようにデビュー作となる本作は、彼がこれまでに影響を受けた音楽が詰め込まれている。ここからはサウンド面のそういった部分に焦点を当てて見ていく。本作からの先行シングルとなった「Broken」は、コールドプレイ「Adventure of a Lifetime」のギターリフに、ナイル・ロジャースを意識したカッティング・ギターが合わさることで、キラキラしたメロディとダンサブルな推進力が同居した楽曲になっている。ブリッジ部分のワレ気味の音で入ってくるシンセによりちょっぴりブルーな雰囲気とその後の展開がよりセンチメンタルに聴こえ、本作のキラーチューンになっている。この楽曲には、彼にとって重要プロデューサーの一人であるThe VaccinesのJustine Youngと、デュア・リパもプロデュースしたCameron Gower Pooleが参加している。この二人は「3D Feelings」と「Candyfloss」にも参加しており、現行の80年代リバイバルのシーンと共振しているだけでなく、そうしたサウンドが本作のセンチメンタルな雰囲気を醸し出す上で大きな役割を果たしている。さらにJustine Youngが参加している「Galaxy」は、色気のあるギターソロが鳴らされ、シックやボズ・スキャッグス、スティーリー・ダンなど70年代後半の香りがするなど、センチメンタルな表現にも様々な方向からアプローチしている。あとこの曲を聴いていると、楽曲の色気も相まって彼の歌声がフェニックスのトーマ・マースを思わせたりもする。

本作には、VaccinesのJustine Young以外にも2010年代に出てきたバンドマンがプロデューサーとして本作を裏から支えている。本作の中心となる一曲「Colour Me Blue」にはCirca WavesのKieran Shudall、「Do It」にはEasy Lifeなども手がける元Dog Is DeadのRob Milton、「You’re a Liar」と「Leaving Today」にはJungleのTom McFarlandがそれぞれ参加していると同時に、「You’re a Liar」などの楽曲を筆頭に彼らからの影響を確かめることもできる。ここ半世紀ぐらいのサウンドが詰め込まれた本作の音楽的連なりを、一つ前の世代が案内役として関わっていることは、ずっとこのように音楽の歴史も紡がれてきたのだろうと想像力を掻き立てられる。本作の「ブルー」という言葉には、上の世代から下の世代への「若さ」 に対する可能性やノスタルジーなど様々な視線も含まれているのではないだろうか。(杉山慧)


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