Review

COMPUMA: A View

2022 / Something About
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眺めよう、音が生成変化していくさまを

18 June 2022 | By Shinpei Horita

DJ/選曲、レコード・バイヤーとして活動してきたCOMPUMAが初のソロ名義アルバム『A View』を自身のレーベル《Something About》からリリースした。文字数にも限りがあるため作者の詳しいプロフィールなどは割愛するが、氏の長年にわたるレコード・バイヤーとしての業績やADS(アステロイド・デザート・ソングス)、スマーフ男組といったユニットやDJポッセ、悪魔の沼での活躍等々、これまでの活動は90年代から現代にかけての国内でのエクスペリメンタルな音楽とクラブミュージックの混交と発展の歴史を知るうえで重要なものばかりだ。そんな長年のキャリアの中でも意外にもソロ名義では初アルバムであるという本作は、北九州の演劇グループ、ブルーエゴナク、からの依頼によって制作された演劇『眺め』の為の楽曲を素材に新たにアルバムとして作り直されたものでオリジナル楽曲9曲+ダブ・ミックス2曲が収録されている。

2曲収録されたダブミックスのうち冒頭を飾る「Vision(Flowmotion In Dub)」はDJの行松陽介がキュレーションを担当したコンピ『Midnight is Comin’』に収録された楽曲「Flowmotion(IN DUB)」の別ヴァージョンであるが、ベース音が不穏に蠢めきエッジィなアレンジが施されているコンピ収録版に比べると、こちらはより緩やかで音が変化していく様をよりまざまざと感じ取ることができる。その後に続く曲もダブやアンビエントなどを基調とした抽象的であるものの、気がつくと繰り返し聴いてしまっているというような没入感のあるサウンドが展開されている。まさに時間の経過とともに音が生成変化していく様を眺めているようだ。それは特に何をするわけでもなくただ風景を眺めているような感覚に近い。時間、空間、音を聴きこむほどに意識させられる本作はアンビエントの概念と正面から向き合ったような作品であると思える。

本作がソロ名義としては初のアルバムであることを“意外にも”と書いたが、それはCOMPUMAがこれまでにミックスCDを中心として多くの作品を残しており、そのどれもがコンセプチュアルでオリジナリティに溢れたものであるから。特に2012年から本作と同じく《Something About》からリリースされているミックスCDシリーズ『Something In The Air』では、アンビエントやジャズ、フィールド・レコーディングなどの音源を中心に深く没入できるサウンドを追求しておりその空気感はオリジナル・アルバムである本作にも共通している。『Somethin In The Air』以降、世界的な環境音楽・ニューエイジ・ブームと並走しながら時に横目にやりつつ、時代も国もジャンルも横断しながら様々な音や音楽を掘ってきたCOMPUMAの探求が結実したものがこの『A View』であるといえるのではないだろうか。(堀田慎平)

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