FEATURES : 24 December 2018

Various Artists

THE 25 BEST ALBUMS OF 2018

By Shino Okamura / Masashi Yuno / Kei Sugiyama / Daichi Yamamoto / Yuta Sakauchi / Nami Igusa / Koki Kato / Yasuyuki Ono / Shinpei Horita / Hiroko Aizawa / Daiki Takaku

THE 25 BEST ALBUMS OF 2018

TURNライター陣による2018年ベスト・アルバム25枚

25 Father John Misty

God’s Favorite Customer

Sub Pop / Bella Union

今年初頭の来日公演。奇妙な風貌で観客に説法するかのごとく歌う姿はステージ名通り、まるで神父のようだった。そこで披露された本作収録の「Mr. Tillman」は、最愛の妻との関係に悩む男の奇行録。本作は、自ら作った“ファーザー・ジョン・ミスティ”という存在をも乾いたユーモアで嗤わずにはいられない、ジョシュア・ティルマン自身のシニカルさが極まった1枚なのだ。“神のお得意様”だったのに、困った時にはもう神から忘れられていたーービリー・ジョエルさえ彷彿とさせる、シルキーなポップネスを纏った楽曲から溢れる悲哀は実にパーソナルだが、神に見放されたようなこんな時代にあっては、何よりもその姿にカタルシスを感じてならない。(井草七海)
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24 Sons Of Kemet

Your Queen Is Reptile

Impulse!/Universal

この非常に英国的な作品がアメリカのジャズの名門レーベルであるインパルスからリリースされたという事実に今も驚かされたが、その圧倒的なパフォーマンスを目にした後は大いに納得させられた。2018年9月に行なわれたマーキュリー・プライズで運良く彼らのステージを目にしたのだが、95%までが白人と見受けられた観客が大いに身体を揺らし、賞が発表される前のノミネート作品の紹介でもいちばんの拍手をもらっていたのが目に焼き付いている。ジャズだけでなくロックもポップもヒップホップも関係なく、プリミティヴに訴えかける混沌としたサウンドはまさにロンドンのシティ・ノイズであり、受け入れられるのは当然のことだとも悟ったのだった。(油納将志)
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23 BROCKHAMPTON

iridescence

Question Everything/RCA Records

2018年、最も勢いがあったグループ(自称ボーイバンド)は彼らだろう。ゲイであるKevin Abstractがリーダーであることからもわかる通り多様性を認め合うことを前提する、まさに現代を象徴するグループだが2018年は大きな壁にぶつかった年でもある。中心メンバーのひとりAmeer Vanに性的暴行疑惑が向けられたことは、グループのアイデンティティや今後の活動の意味をも揺るがす問題だった。それを受けてAmeer Vanの脱退を発表。苦渋の決断の後にリリースされた本作は、個性豊かなマイクリレーがまさに虹色に光る。多様性を認めながら最短距離でスターダムを駆け上がろうという意志を貫く1枚だ。(高久大輝)
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22 BTS(防弾少年団)

Love Yourself 轉 ‘Tear’

BIGHIT Entertainment

アジアのアーティストとしての初の全米1位や「踊れてセクシー」という新たなアジア人像を世界に定着させたこと。この「Love Yourself」シリーズでのBTSの功績はあまりにも大きい。だがそれ以上に強調すべきは、彼らが作品を通して世界中の若者世代へ文字通り「自分自身を愛する」ことの大切さを語りかけたことだ。磨き抜かれた超一級品のパフォーマンス。R&Bからトロピカルハウス、ラテンポップまで様々な音が鳴る作品を一つに纏め上げ、メンバーそれぞれの悩みや葛藤とも呼応した「エモ」なムード。それらは彼らのメッセージに強い説得力を与えた。世界中でメンタルヘルスが社会問題になる現代。そのポジティブさ、力強さこそが、BTSを最高のポップ・スターにさせるのだ。(山本大地)
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21 IDLES

Joy as an Act of Resistance.

Partisan / Hostess

今、耳元で聴こえるのは目の前の世界を荒々しくも、真摯に伝えようともがくパンク・ロック。タイトなビート、がなるボーカル、尖るギター・サウンドの背景には移民、ブレグジット、同性愛嫌悪といった社会的テーマへの、体の底から湧き上がる怒りがある。その感情と並走するのは、隣人や家族への愛。ウクライナ移民の友人への愛と連帯を歌う「Danny Nedelko」。ヘミングウェイの6単語小説を引き、今は亡き娘へ捧げるレクイエム「June」。本作の激しく狂うサウンドは、時に私たちを優しく包む。これは本年、誰よりもまっすぐにこの世界に立ち向かい、この世界を信じたロック・ミュージック。怒りと愛。相反する感情と共に、時代を描く傑作。(尾野泰幸)
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20 Pusha T

Daytona

G.O.O.D music / Def Jam / Virgin EMI

もとは『King Push』と命名する予定だった、という逸話も納得の一枚だ。カニエ・ウェストの一連の5部作の中でも、最もサンプリング色の強い王道のヒップホップ・サウンド。そして、聴く者への異論を許さないスキルフルなラップ。ドレイクへの容赦ないビーフや、故ホイットニー・ヒューストン宅の写真のアートワークへの転用などで、リリース後も多くのリスナーの良心を逆撫でしたプッシャ・Tだが、その強気をも肯定したくなるクラシック感が、本作には、たしかにある。最終曲「Infrared」のアウトロ、徐々に音量を上げていくドラムスのサウンドは、戦慄と興奮とともに「キング」への畏敬の念をまざまざと呼び起こす。(坂内優太)
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19 Juice WRLD

Goodbye & Good Riddance

Grade A / Interscope / Universal

本作は「Shape of My Heart」を大胆にサンプリングしロングヒットとなっているリード曲「Lucid Dream」を聴けばわかる通り、ギター・サウンドや内省的リリック、メロディアスなフロウを特徴としたエモ・ラップ作品。しかしLil PeepやXXXTentacionほど刹那的な感覚はない。彼は自分の感情に僅かに距離を置き、若者たちの置かれた現状を俯瞰している。薬物との葛藤を描いた「Lean Wit Me」の中で彼はこう歌う“俺がハイになりすぎるのを君は嫌がるけど、そこが俺のいる場所なんだ”と。鬱屈とした2018年の社会を生きる若者たちの声を掬う1枚を私たちは無視できないはずだ。(高久大輝)
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18 Nathaniel Rateliff & The Night Sweat

Tearing at the Seams

Stax / Hostess

今の時代とは無縁? 冗談じゃないよ。今年のフジロックにも登場したこのナッシュヴィル出身の髭面の男たちほどモダンなロックを聴かせるヤツもいない。というより、彼らはこの2作目でブルーズ、フォーク、ファンクが本質的には田舎臭いどころか、むしろ洒落た音楽ということを鮮やかに証明してみせた。この豪傑なオッサンどもを見事に束ね、ヴィンテージな音作りで粋に南部サウンドに風穴をあけたリチャード・スウィフト(無念のR.I.P.)が、その点では今年の個人的最優秀プロデューサー。ボブ・ディランからケヴィン・モービーあたりまで連なる米ルーツ・モダン・ロックとも言える系譜に、2018年、新たに加わった大傑作だ。(岡村詩野)
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17 Noname

Room 25

(SELF-RELEASED)

前作の成功を受けての世界ツアー、そして自身の女性としての経験。ここ数年の作家の成長を織り込んだ本作は、繊細なストリングス・アレンジと、ジャジーでバリエーション豊かな生演奏、そして、流れ落ちる雫のようにフロウするノーネームのラップが、息を呑むほどに美しい一枚となった。地元シカゴの朋友たちと作り上げた最新のネオソウル・サウンドは、テラス・マーティンら西海岸の俊英たちとも共振しつつ、ソウルクエリアンズが世紀の境目をまたいで生み出した原典のそれとは一線を画す、独自の爽やかさを湛えている。ノーネームは、チャンス・ザ・ラッパーとは全く異なる方法で、彼女たちの世代を輝かせるサウンドを見つけ出したのだ。(坂内優太)
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16 Cardi B

Invasion of Privacy

Atlantic

ストリッパーから一気にラッパーとしてスターへと駆け上がったカーディBのデビュー作。本作は、ゴシップのイメージを巧みに使いながら、自立した強い女性を示す彼女の造語“バッドビッチ”を示した作品だ。先行シングル「Bartier Cardi」の発売時に夫オフセット(ミーゴス)の浮気動画が拡散され、それを受けてか浮気をテーマにした「Thru Your Phone」を収録。ゴシップ的な要素も感じさせつつ、背筋の凍るリリックを披露。このテーマ性はビヨンセ『Lemonade』にも通じる。そして、テレビ番組出演時の妊娠発表など、セルフイメージをコントロールしてきた彼女がタイトルに“プライバシーの侵害”と付ける所がまたニクい。(杉山慧)
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15 折坂悠太

平成

ORISAKAYUTA / Less+ Project.

時代と場所に思いを馳せる歌手だ。サンバのリズム、アイリッシュ・フォークを想起させるマンドリンの旋律、リズムマシンを使ったビートメイクなど、あえて統一感を排した本作には、折坂が越境しながら過ごしてきた時間と記憶がありのままに詰め込まれている。口語でありながら古語的、ときに五七のリズムをなぞる短歌のような詩によって過去から現在、いつの時代を生きる人にも普遍的に響く歌詞。ライブでは街についてエピソードを語り、出身地を交えて合奏メンバーを紹介。場所と人との関わりに目を凝らす。様々な時代や場所、そこに生きる他者に思いを馳せることで、今日までの自身(平成)を時代の移り変わりと共に見つめ直しているようだ。(加藤孔紀)
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14 Yves Tumor

Safe in the Hands of Love

Warp / BEAT

実験的アプローチのノイズやアンビエント、そして私たちを引き付ける絶妙なポップネスが共存。一定ではない不定期の寄せる、返すが連続する。「Licking An Orchid」では混沌世界で自己を喪失し、愛=帰る場所=母の存在に辿り着く様が歌われるが、曲後半ノイズの靄が現れ一瞬にして居場所が不明確に。「Let The Lioness In You Flow Freely」では激しいノイズとリズム主体の楽曲世界に長く浸ることを許されるが、最後の12秒のみ急遽ポップネスに引き戻される。終始表現される不定期のアンビバレンスは安心感と相反するが、何が表れるか分からない暗中の不安にこそ我々人間の好奇心は惹きつけられる。(加藤孔紀)
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13 XXXTentacion

?

Bad Vibes Forever / Hostess

前作『17』に浮かぶ精神的にバラバラに引き裂かれ、コントロールを失っていく彼の姿はティーンを中心に大きな共感を呼んだ。それによって彼に変化が生じたことは本作を聴けばわかるはず。前作の延長線上ともいえる廃退的なムードの漂う楽曲が多いがその中で彼はそんな壊れた自分を受け止め、自分と同じように苦しむ若者のために前を向いて生きていこうという意志が滲む。つまり彼の生前最後の作品となった『?』は信じる者に裏切られ、社会から認めらず、内側へと堕ちていったとしても、自分の存在意義を見出すことが可能であることを証明している。彼の死後も彷徨う若者たちを照らし続ける1枚。(高久大輝)
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12 Robyn

Honey

Konichiwa / Interscope / Universal

スウェーデンの女性シンガーソングライター、ロビン。個性的なビジュアルとファッション・センス、ダンサブルなサウンドとパワフルかつキュートなヴォーカルが彼女の大きな魅力。本作は8年ぶりにリリースされた復帰作である。彼女が不在の間、私小説的な自身の想いを率直に歌う女性シンガーソングライターは数多く登場した。しかし、鮮やかなシンセのアルペジオ、女性らしいサウンドと力強いビート、甘さと切なさが同居するヴォーカルが印象的な、まさにロビンならではのポップ・チューン「Missing U」で幕を開ける今作は、彼女の鮮烈な帰還を印象付ける。本作は自身が経験した悲しみと、それを乗り越える力強さを孕んだ愛に溢れた作品だ。(相澤宏子)
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11 David Byrne

American Utopia

Nonesuch / Todo Mundo

ソロ・キャリアにおいて本作で初めてビルボード最高位3位を獲得。それまでは10位内どころか100位内さえ高い壁だったにも関わらず、ここにきて評価が大きく高まったのはとても示唆的ではある。トーキング・ヘッズ時代から直接的にポリティカルなことを歌にしてこなかった彼が、あからさまにアフリカや中南米のサウンドを取り入れるでも、クラシックへのアプローチに寄り過ぎるでもない、さりげなく多様でポップな歌もの作った。しかもそれをしてトランプ政権下の今“アメリカの理想郷”として掲げた事実。そういう意味でも、アフロの要素とストリングス・アレンジとが交錯した「Doing The Right Thing」が、曲名、歌詞の内容含めて出色だ。(岡村詩野)
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10 Blood Orange

Negro Swan

Domino / Hostess

黒く美しいブラック・スワンか――。デヴ・ハインズはマイノリティのもつ美しさに光を当てたのだ。楽曲はスウィートでモダンなソウルが中心だが、リリックには理不尽な偏見に晒されるマイノリティの不安が付き纏う。「Orland」で綴られるのは、“女の子の格好の黒人男性”であったが故に暴行に遭った、自身の少年時代の凄惨な体験。そんな本作はクイアも含めたブラックの中のグラデーションに寄り添っているのだ。エイサップ・ロッキーはじめ多くのアーティストを本作に客演させたデヴは、住む場所や名前を何度も変えてきた流浪の人。そんな柔軟性を持った彼がラストに甘く歌い上げる、光に満ちた「Smoke」は、あらゆるブラックの希望だろう。(井草七海)
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9 Superorganism

Superorganism

Domino / Hostess

ザ・ブックスのようなサンプリング・ポップであり、フレーミング・リッブスのようなサイケ・ポップであり、フランク・オーシャン以降のアンビエント・R&Bのような浮遊し、まどろむ大文字のポップ・ミュージックでもある。海を、国境線を越えて出会った8人が生み出した実験的でありかつ、メイン・ストリームを見据えた普遍的なポップスの姿がここにある。無数の聴覚的なカット・アップ・コラージュ、重なり合うサウンドの渦に巻き込まれ、もみくちゃにされる中で、天からの声のようにオロノ・ノグチの歌声は甘美に響く。“まあ大丈夫だよ”(「It’s All Good」)。そう歌いながら、飄々と彼らはシリアスな世界を飛び越え進んでいく。(尾野泰幸)
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8 Janelle Monáe

Dirty Computer

Atlantic / Bad boy /Wondaland / Warner Music Japan

『ムーンライト』や『ドリーム』など女優としても大成したジャネール・モネイ。本作は、アメリカ人とは誰かと問う「Americans」を中心に練り上げられている。政治的に無視され続けたことがトランプ政権を生むことになる白人貧困層の問題と、女性や黒人、ラテン系など同じく無視されてきたマイノリティの問題を分断して語るべきではないという本作のテーマ。1時間弱の彼女主演の映画と一緒に見せることでより具体的に見せてくれる。映画での近未来的なイメージ、エロティシズムやサウンドは、Pファンクやプリンスへ通じる所がある。人権を無視した実質上の移民政策が問題となっている日本でも、本作を聴く意義は大きいと思う。(杉山慧)
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7 Kali Uchis

Isolation

Virgin / Universal

LAの現役代表選手から国籍や時代を超えた人脈までもが集結、ラテン・ミュージックや70年代風R&Bといったバラエティ豊かな楽曲をヴィンテージ感たっぷりのサウンドでまとめあげた、紛れもない傑作だ。人種やジャンルを越境した音楽を発信するLAの空気感を体現した1枚とも言えるだろう。その一方で、“独立”を意味するタイトルと、エスケーピズムに満ちたリリックは、コロンビアからアメリカへ移住、その後10代で家出したカリの境遇にも重なる。ただ刹那的なだけだろうか? いや、逃避は生への渇望だ。今まさに中米のキャラバンが目指すカリフォルニアの地で、享楽へ誘う女神=カリ・ウチスは、厳しい現実から逃れる者に手を差し伸べている。(井草七海)
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6 Mitski

Be the Cowboy

Dead Oceans / Hostess

一人の日系インディ・シンガーにして、痛みを味わうあらゆるカラーの人たちをコネクトさせた究極のポップ・アルバムだ。それは孤独や不安感などただ「共感」を可能にした歌のテーマだけから実現されたのではない。自分の境遇を時に第三者的な視点からも捉えるリリックはよりチャーミングでユーモラスになった。トレードマークだったピクシーズ的な歪んだロック・サウンドはほとんどない。その代わりポップの教科書に一切頼らない楽曲たちは、ほとんどが2分半にも満たない短尺ながら予想外な展開ばかりでひたすらスリリングだ。そして、14曲、悲しみのなかで踊り続けた後に訪れる、高揚感、幸福感こそが本作の超越的な魅力を体現している。(山本大地)
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5 Kamasi Washington

Heaven and Earth

Young Turks / BEAT

音楽における創造主はコンポーザーだろう。本作ではコードの決定は優先されず、まず複数のメロディラインをつくり、それらを重ねたハーモニーから曲を形づくるミクロ単位の作曲がなされた。加えてジャズに留まらず、荘厳なコーラスワークとオーケストレーション、ラテンのリズムやR&Bのアレンジを取り入れることでジャンルを飛び越えたマクロ視点のアプローチが光る。ジャズ・ジャイアンツの主体性はプレイに置かれた一方、それとは異なりコンポージング主体の稀有なサックス奏者として作品を構築。一つ一つの命/曲を緻密に生み出し、大小問わず音楽の構成要素に意識的なカマシ、あらゆることを掌握してしまう音楽の創造主たる神々しさが鎮座する。(加藤孔紀)

4 Various Artists

Black Panther The Album

Top Dawg / Aftermath / Interscope / Universal

「誰も俺のために祈ってくれない」。昨年商業的にも批評的にも最も成功を収めたアルバム『DAMN.』の中で、アメリカの声を一身に背負うケンドリック・ラマーはこう嘆いていた。そんな彼が全面プロデュースを手掛けた本作の最終曲は「Pray For Me」。タイトルから想像できるように彼は曲の中で冒頭の嘆きへの回答を導く。「ヒーローを必要としてるのは誰だ?鏡を見ろ、それがヒーローだ」と。これは誰のためでもなくアメリカを背負うという覚悟そのもの。映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックとして物語とリンクするリリックやアフロフューチャリズムを感じる音像も魅力だが、傑作『DAMN.』を完結させるための重要な1枚でもある。(高久大輝)
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3 serpentwithfeet

soil

Secretly Canadian / Tri Angle / Hostess

クィアーだとか異端だとか……もちろんそうした文脈が今年この黒人シンガー・ソングライターの評価を後押ししたのは間違いないが、ただ、年末になって突然来日したイヴ・トゥモアもそうだが、ボルチモア出身のサーペントウィズフィートことジョサイア・ワイズは、体系的にソウルやR&Bを捉えようとする自覚と、トラックやサウンド・プロダクションで大きくメスを入れようとする意識とを併せ持つ柔軟なアーティストだ。その結果、ポップスとしての強度の高い作品となったのが本作の勝因でもある。アデルなどを手がけてきたポール・エプワースがプロデュースを担当したのも、そういう意味で当然のことだったのかもしれない。(岡村詩野)
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2 Travis Scott

Astroworld

Cactus Jack / Epic / Grand Hustle / Sony

複数の意味で、2018年の「顔」に相応しいアルバムだ。全米で今年、最も売れたアルバムの一枚であり、ポスト・トラップ時代の実直なサウンドの進歩を刻んだアルバムでもある。御大スティーヴィー・ワンダーをも含む豪華なゲストが集結した様は「一大サイケデリック・トラップ絵巻」という呼び名すら似合う貫禄がある。だが同時に、一人の青年の成長と葛藤を刻んだ、真摯で切実な一枚でもある。そして、アルバムに遍在する死の存在感。どこまでぶっ飛んでも、世界から逃れることはできない(でも、飛ぶ)。『Astroworld』の、その反語的なリアリティは、多くの死に塗られた2018年の記憶と、今後も結びつき続けるだろう。(坂内優太)
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1 Kacey Musgraves

Golden Hour

MCA Nashville / Universal

オーガニックなカントリーの音をディスコやサイケデリック・ロックの空間美で包むことで、「過去」と「未来」を接続したサウンド。詩的で感動的な言葉を使い、愛の素晴らしさ、タフさについて優しく語りかけた13曲の歌。それらは、誰かともっと対話を重ねてみたり、深呼吸してもう一度目の前を見渡してみないと気付けない、美しくカラフルな景色を見せてくれた。カントリーの牙城、アメリカ南部のホワイトや自由を求めるマイノリティたち。安心して眠ることの出来ない戦地の人々や、そんな現状など想像出来ないように感じる私たち。全てを繫ぎとめるこのアルバムこそが、ポップの可能性を拡張させるのに最も野心的に思えたのだ。(山本大地)
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