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【台湾最新インディー事情】
後編
台北レコードショップで見たインディー音楽界隈

30 March 2023 | By Yo Kurokawa

《LUCfest》への参加と共に、楽しみにしていたのが台湾現地のレコードショップ巡り。特に台南のレコードショップはフェス期間中だからなのか閉店しているところも多かったけれど、台湾のインディー・ミュージックと主に取り扱うショップのレポートをお届けする。

まず、台北でインディー・ミュージックを取り扱う感度の高いレコードショップとして名高いのが《Waiting Room》と《PAR STORE》、そして今回は《LUCfest》主催という事もあり臨時閉店していた《White Wabbit Records》。《Waiting Room》が一番「カルチャー・ショップ」という体を成していて、台湾のインディー・ミュージック以外にも新旧国内外問わずヒップホップやジャズ、レゲエ、ポップスといった中古レコードがバランスよく配置されていた。持ち込みなのか各種ZINEの陳列棚があり、センスの良いアパレルグッズがあり、そこには小さなカルチャーの宇宙がある。《PAR STORE》、《White Wabbit Records》はいずれも台湾のインディー・ミュージックシーンの紹介に最も力を入れていて、効率よく最新シーンにアクセスするならまずはこの2店だろう。《PAR STORE》では更に洒落たロゴをあしらったオリジナルグッズも多数取り揃えており、気の利いたお土産を探すのにも最適だ。

音源紹介のための常設的な場として機能しているレコードショップとリアルの音楽シーンがきちんと連動しているのは台湾の音楽シーンの魅力の一つであると常々感じる。例えば、《Waiting Room》は言わずと知れたロックバンド、透明雑誌のメンバーが運営しているショップだ。そして《PAR STORE》では先日の来日公演も盛況だったDSPSのAmiが店番をしていて(時折ここでアルバイトしているとのこと)、《White Wabbit Records》は前述の通りフェスを開催するほど現行シーンにコミットしている、という風に。

もう少し俯瞰的に広く音楽全般を扱うショップといえば、大型書店《誠品書店》の音楽フロア《誠品音樂》は外せない。日本でいうとHMVやタワーレコードのような雰囲気で、特にベストセラーズのコーナーでは「Asian Pop/亞州流行」「Rock & Pop/西洋」などとジャンル別に売れ筋がランキング形式で並べられている。

2019年9月に訪台した際たまたまメモしていた「Asian Pop」のランキングを今回2022年11月時のものと軽く比較してみたい(*1)。まず2019年も2022年も1位に輝いているのが蘇打緑のリーダー、呉青峰のソロアルバムであることは(もちろん偶然の発売タイミングもあるとはいえ)、彼が台湾音楽シーンにおいて確固たる地位を築いていることの明確な証だろう。

さらに、2019年には見られなかった傾向として大きく目立つのが台湾国外のアーティストのランクインである。BLACKPINK、Adoは上位5位以内に、K-POPグループGOT7の香港出身メンバーであるジャクソンのアルバムも10位に顔を見せている。売り場全体を見てもK-POP、J-POPのスペースはしっかり確保されており、一定の需要がある事を感じさせる。

台湾の国民的バンド、五月天のベストアルバムや20年以上前のファースト・アルバム、今や《Coachella》への出場も決めるなど飛ぶ鳥を落とす勢いの落日飛車の数年前のアルバム・EPなど、同一アーティストの過去作を含めた作品が複数ランクインしていた2019年に比べて、2022年はそういった被りは無くなり、顔ぶれがより多彩になっている。2019年時点で日本でもすでに台湾インディー・ミュージックとして紹介の進んでいた9m88、deca joinsやDSPSがランクインしているのは当時の最新ベストセラーとしても納得の順位だったが、2022年はよりバラエティ豊かになっているのも面白い。

呉青峰も含めたベテラン勢の周杰倫、生祥樂隊、昆蟲白らのニュー・アルバムからRobot Swingとの共演作も多い洪佩瑜の1stアルバム、今最も勢いのあるインディー・バンド、The Chairs(椅子樂團)が台湾政府から補助金を得て制作した『Shangri-La Is Calling(香格里拉的呼喚)』と世代やジャンルを超えた表情豊かなランキングになっているのは、非常に興味深い。

最後にフェス期間中に回った台南レコードショップの中で唯一開店していた《Paripari》を紹介したい。ここはレコードショップというよりも、一棟全体がリノベーションされた複合施設となっていて雑貨店、カフェ、民宿が併設されているなかの一角にレコードも陳列されているという形。もしかしたらフェス期間中、限定的に《大浪漫商店》が間借りしてスペースが設けられていたのかもしれない。《LUCfest》にも以前出演経験のある折坂悠太や、過去には落日飛車とのスプリットEPもリリースしたシャムキャッツのカセットテープが並んでいる様は実に微笑ましかった。(文・写真/Yo Kurokawa)

(*1)

2019年9月、2022年11月のAsian Popベストセラー@誠品音樂
※()内はリリースタイミング
2019年9月
1位 呉青峰『太空人』(2019年9月)
2位 9m88『平庸之上』(2019年8月)
3位 五月天『人生無限公司』(2019年6月)
4位 五月天『五月天第一張創作専輯』(1999年7月)
5位 告五人『我肯定在几百年前就说过爱你』(2019年7月)
6位 落日飛車『Jinji Kikko』(2016年3月)
7位 傻子與白痴『夜長夢少』(2019年8月)
8位 五月天『自傳』(2016年7月)
9位 落日飛車『Cassa Nova』(2018年3月)、落日飛車『Vanilla Villa』(2019年5月)
10位 脆樂團『有多少光就有多少黑』(2019年8月)、陳綺貞『沙發海』(2018年12月)、海豚刑警『豚愛特攻隊』(2019年7月)、DSPS『時間的產物』(2018年11月)、deca joins『Go Slow』(2018年12月)、魏如萱『Maa Wei Milk And Honey 孕期限定演唱會 (Live)』(2018年11月)

2022年11月
1位 呉青峰『馬拉美的星期二』(2022年9月)
2位 G.E.M『啓示錄』(2022年9月)
3位 生祥樂隊『江湖卡夫卡』(2022年10月)
4位 BLACKPINK『BORN PINK』(2022年9月)
5位 Ado『美音之歌』『ウタの歌』(2022年8月)、『狂言』(2022年1月)
6位 昆蟲白『瞬間』(2022年7月)
7位 洪佩瑜『明室』(2022年10月)
8位 梁文音『好好對待她專輯』(2022年10月)
9位 周杰倫『最偉大的作品』(2022年7月)
10位 白安『沒有人寫歌給你過吧』(2022年8月)、韋禮安『明天再見』(2022年9月)、郭靜『So Lucky』(2022年8月)、Jackson Wang『Magic Man』(2022年9月)、椅子樂團『香格里拉的呼喚』(2022年8月)、葉穎『活得像自己的名字』(2022年6月)、曾沛慈『今天陽光就是特別耀眼特別和諧』(2022年8月)、范宗沛・鄧雨賢『望 不忘春風』(2012年8月)


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Text By Yo Kurokawa

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