BEST TRACKS OF THE MONTH : 07 July 2018

Various Artists

BEST TRACKS OF THE MONTH ~2018.06~

By Shino Okamura / Yuta Sakauchi / Yasuyuki Ono / Nami Igusa / Daichi Yamamoto / Daiki Takaku

BEST TRACKS OF THE MONTH -June, 2018-

TURNライター陣による、2018年6月のベスト・トラック紹介!

BLACKPINK – 「뚜두뚜두 (DDU-DU DDU-DU)」

BTSのニュー・アルバムが先月全米1位を獲得したことを受けて「K-Popももっと聴きたい」と思った人が次に必ずトライすべきはBLACKPINKだ。チケット発売時までに公になっていた曲はわずか5曲ながら、ここ日本でも今夏のアリーナ・ツアーのチケットが即完するなど既に大きな人気と期待を集めている。

ハードなフューチャーベースにトラップを取り入れたトラック。隙の無い完璧なラップに、どのK-Popガールズ・グループよりも激しい振り付けのダンス。BTSと同じようにリリックの大半は韓国語だが、そんなことお構いなしに、彼女たちはそのハイ・クオリティのパフォーマンスで、「欧米産のポップ音楽」のスタイルを血肉化するどころか、自分たち自身が欧米のガールズ・グループのお手本にもなっている。この曲はビルボード・ホット100で初登場55位、EPの方もビルボード200で40位と、どちらもK-Popガールズ・グループでの最高位を記録。「そこら辺の子たちみたいにいい子のフリはしないから」。強気なBLACKPINKの活躍は、アートにおけるパフォーマンスの質の高さというパラメーターの重みを確実に世界中へ訴えかけている。(山本大地)

cero – 「POLY LIFE MULTI SOUL」

6月に観た新作ツアーにて、ceroはこの曲を二回演奏した。本編最終曲とアンコールとして。それは、現在のceroにとって最新作と同じ名前をもったこの曲がツアー・フィナーレを飾るにふさわしい象徴的な意味を持っていることを伝えているようでもあった。

ダンサブルで表情豊かなパーカッションと、冷たさと淡さを兼ねた電子音。詩情あふれる歌詞を携え、歌としての形態を保ちつつ進む前半部分から、徐々にボーカル・パートが減少し、6分30秒付近からドラミングは四つ打ちに、電子音もハードになり、オートチューンのボーカルとメロディー、ビートが溶け合いハウス・ミュージックにすべてが収斂していく。

興味深いのは、曲後半部から最後まで続く「POLY LIFE MULTI SOUL~」という歌詞のリフレインがどこまでも執拗なまでに追いかけてくること。それは、この曲が一見無機質的なダンス・ミュージックへと曲中で展開しつつも、有機的な「うたもの」としてのアイデンティティをどこかで維持しようとしていることを示しているようでもある。

輻輳するリズム、混沌としたダンス・ミュージック、今のceroへ向けられた上記の形容ももちろん正だ。だがこの曲は、いくら前へ進もうとceroは「うた」のバンドであることを微かに、けれど確かに示している。私がceroに魅せられてしまう理由も、きっとそこにあるのだ。(尾野泰幸)

Colin Stetson – 「Charlie」

最近では『レディ・バード』などをサポートする独立系映画制作会社であるA24の新作は、ニューヨーク出身の若手監督、アリ・アスターによる初の長編作「Hereditary」。未見ながらかなり奇妙なホラーのようで、今年1月のサンダンス映画祭でプレミア上映されて大きな注目を集めていた話題作だ。その音楽を手がけているのがコリン・ステットソン。ボン・イヴェールやアーケイド・ファイアなど数多くのバンドのサポートも務めるバス・サックス奏者で、前衛ジャズ〜アヴァンギャルド周辺で優れた作品を多く発表しているカナダ在住の43歳だ。3月に来日公演も実現させた彼は、昨年はエイフェックス・ツインへのオマージュとも言える作品『All This I Do for Glory』をリリースしたが、サントラからの先行となるこの曲は、ドローン的手法の中に不穏な低音と警告を鳴らすような甲高い破裂音を挿入した、不気味ながらも叙情性さえ顔を出す1曲。『エクソシスト』や『オーメン』など過去の名作ホラーの音楽をどの程度参照したかはわからないが、木管楽器のみならずストリングスやエレクトロニクスも柔軟に取り入れた音作りはオヴァルとラフマニノフを同列に捉えるような貪欲な内容だ。(岡村詩野)

(G)I-DLE – LATATA

それはもう60年代の<モータウン>のように、ハイ・パフォーマンスのアイドル・グループ達を毎年量産するK-Popでは、いかにインパクトのある楽曲を残せるかが重要。それは大金をプロモーションへ注ぎ込める巨大事務所でなければ尚更だ。5月の初めにデビューした(G)I-DLEは、”3大事務所”(「SM」、「JYP」、「YG」)の所属でもなければ、グループ名の表記もちょっと覚えづらい。しかし、そんな筆者の言い訳も通用しないほど、本国ではこのデビュー曲がロングヒットを続けている。

メジャー・レイザー「Lean On」を彷彿とさせるムーンバートン・トラップ調のトラックの完成度もさることながら(ソングライターはメンバーのミヨンだ)、曲中には中毒性を持たせる要素が随所に盛り込まれている。入りのヴァースは同じメロの繰り返しでわかりやすい。タイ人メンバーのミニーが歌うブリッジは、優しい声で滑らかに囁かれるのが癖になる。極め付けは聞き手の頭に叩き込むように繰り返される「ラタタ…」というフレーズ。3分あればあなたの耳にこびり付く。 (山本大地)

KIDS SEE GHOSTS (Kanye West, Kid Cudi), Yasiin Bey – 「 Kids See Ghosts」

インダストリアルでサイケデリック。ヘヴィーで、どこか浮遊感もある。この抜群の“ロック”トラックを聴くと、カニエってやっぱり稀代のロック・アーティストでもあるよな、と思う。カニエ・ウェストが、今年6月からの一連のリリースの第二弾として、キッド・カディとの同名デュオとして発表したアルバム、その表題曲。冒頭から淡々と打ち鳴らされる「コンッ・コンッ」というパーカッション。そして、それ以上に冷たく16ビートのリズムを刻むハイハット。曲の進行にしたがって和声感を変え、展開を生み出していくベースラインと、ふわふわとしたアンビエンスを醸し出すシンセサイザー。そこに生まれる幻惑的なグルーヴは、ラップ・ミュージックというより、クラフトワークやノイ!からポストパンク世代を経て受け継がれる、マシーナリーなロック/エレクトロニカの亜種のように聴こえる。モス・デフことヤシーン・ベイを召喚し「子供は時々、幽霊を見る」という象徴的なラインを歌わせながら、カニエは1分間を一気に貫くラップ・パートを、自らの笑い声で締めている。これがもし、ツイストし、引き裂かれた精神からしか生まれない音楽なのだとしたら、僕ら「大人」はどう向き合うべきなのだろう。(坂内優太)

Maggie Rogers – 「Fallingwater」

「あのファレルが絶賛した」という枕詞はもう不要じゃないだろうか。それはマギー・ロジャースの一体何が卓越しているのかを、逆に見えづらくしている。はっきり言おう。彼女の歌は、聴く者の身体を衝き動かす歌だ。

「Fallingwater」はその彼女の声がフィーチャーされた1曲。のっけから楽曲最高音を軽々と歌い上げ、その一音だけで彼女の歌唱力の高さにも改めて気づかされる。だが何より、透明感と力強さを併せ持つ歌声が、大地を踏み鳴らすようなドラム・ループと合わさり、格段にスケール・アップしているのが見事だ。ラストでのハンド・クラップと、幾重にも重なる自身の声によるハーモニーは、さながらゴスペル・クワイヤー。足を鳴らし手を叩き、身体を動かしたくなるような衝動が、否が応でも呼び起こされる。

そんな身体的な祝祭性という共通点でフォークとダンス・ミュージックを結び付けているのが彼女のオリジナリティだ。それを的確に汲み取りレベル・アップさせたのは、この曲のコ・ライター / プロデューサーであり、やはり同じ志を共有する、元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムだろう。抜群に相性が良いこの両者のコラボ、いくらでも聴いていられそうだ。(井草七海)

仙人掌 -「Boy Meets World」

DOWN NORTH CAMP、MONJUのメンバーで、ソロとしても東京の夜を沸かせるラッパー、仙人掌。そんな彼がリリースに先駆けサウンドクラウドに投稿した「Monday Freestyle」に込めたのは、雑誌(ストリート・カルチャー誌6月号)の表紙を飾ってもなおブレずに、自らの目で見たリアルを言葉に変え続けるという誓いだった。

そして彼の2作目の全国流通盤『Boy Meets World』のタイトル・トラックである本曲には、ニューヨーク在住のDJ SCRATCH NICEとCHUCK LA WAYNEによるイルなトラックに、少年が裏社会へ踏み込む姿が綴られている。その道徳の向こう側の世界に冷めた視線を送りながらも、それすらも現実だと受け止めて描く彼のペンは「Monday Freestyle」での宣誓の通り、さらに遡れば2006年のMIX CD『CONCRETE GREEN.3』に収録された「Fact」で、多様な人々が同じ街で生きる意味を問うたときから変わっていない。彼がストリートの信頼を得続ける理由の一つは、吐いた唾を飲み込まず体現し続けることにあるのだと本曲は伝えている。(高久大輝)


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