FEATURES : 11 July 2018

Post Malone

The Answer That Post Malone Leads Lightly

By Daiki Takaku

FEATURES : 11 July 2018

Post Malone

The Answer That Post Malone Leads Lightly

By Daiki Takaku

The Answer ~ポスト・マローンが軽やかに導くひとつの答え~

ポスト・マローンという23歳の白人の男はラッパーなのか。ロック・スターなのか。昨年リリースされた「rockstar ft.21 Savage」は全米で8週に渡り1位を記録する大ヒット、直近では4月27日にリリースされたアルバム『beerbongs & bentleys』が発売1週間で約4億3130万回のストリーミングを記録し、ドレイクの『More Life』の持つ3億8480万回という歴代記録を塗り替えた。破格のスピードとスケールでスターダムを駆け上がっていく彼は、どこかつかみどころがない。

彼の名が世に広まったのは2015年に「White Iverson」がYouTubeで爆発的に再生されたことがきっかけだろう。この曲は、今はすでに現役を退いたNBAの黒人スター・プレイヤー、アレン・アイバーソンを題材に自らの白人というアイデンティティを重ねられていることがタイトルから想像できる。しかしここで注目したいのは、彼が具体的に言及しているのは、アイバーソン個人の「練習に参加せず試合で結果を出せばいい」という姿勢や、外見的な面でも品行方正が求められるNBAにおいて貫いたコーン・ロウやタトゥーといった奔放なスタイルであることだ。アイバーソンというと、NBA入りを控えた時期に暴力事件の現場に遭遇しただけで黒人であることを理由に裁判に巻き込まれたエピソードも有名だが、その件には触れておらず、敢えて人種差別問題からは距離を取っているようにもみえる。

加えて、白人のラッパーの成功例として名前の挙がることの多いエミネムがしたように黒人ラッパーたちをスキルで圧倒し自分をラッパーとして認めさせたり、自らがヒップホップ・カルチャーにおいてマイノリティーであることをドラマチックに描くこともしない。強いて言うならファッションでも注目を集める黒人の兄弟デュオ、レイ・シュリマーのブレイクのきっかけとなった「Black Beatles」とその構造は似ている(レイ・シュリマーは「White Iverson」のリミックスにも参加している)。こちらの楽曲も”Black”と言う人種を連想させる言葉がタイトルに用いられているが、この曲の中でビートルズは”使いきれないほど金を持っているグループ”としての意味合いが大きい。両曲においてアイバーソンもビートルズもヒップホップでいうところのボースティングに用いられているのみだが、著名人をトピックとすることでキャッチーさが付与されてもいる。

こういったある種のラフさは他の方面でも見られる。日本でも一時期流行した動画投稿サイトVineに投稿したビデオの中で、彼はNワードを口にして問題となるが、すぐさま謝罪をして騒ぎを抑えたり、現在のヒップホップはクソだと牙を剥いたと思えば、「(発言したときは)酔っ払っていただけでヒップホップは大好きだ」と手の平を返してみたりと、その発言に一貫性はなく彼自身のアティチュードが見えてこない。そして何より、彼の作る音楽やショウ・ケースにそれは顕著に現れている。ラップと歌を器用に使い分けながら、トラップからアコースティック・サウンドまで自在に乗りこなす様はラッパーという言葉の範疇に収まっておらず、先日のコーチェラのステージでもタバコを吹かし、アコギを手にとって歌い、さらにはそのアコギを破壊するという、如何にもロック・スター然とした振る舞いで観客を沸かせていた。それは父親の影響でメガデスやメタリカを聴いていた幼少期や、テレビゲーム「ギターヒーロー」にのめり込んだことを機にギターを手に取りバンド活動を始めるという、ラッパーとしては異質とも思える音楽遍歴によるものなのかもしれない。しかしながら彼はN.W.Aやスヌープ・ドッグといったヒップホップ・アーティストもフェイバリットに挙げており、単純にロックばかり聴いていたと言うのも難しい。

これらが私が彼に抱いたつかみどころのなさの正体なのだろう。何かの枠組みに当てはめることや、定義付けることは難しい。だが、その間口は万人に開かれている。そう、そのつかみどころのなさは圧倒的な軽やかさなのだ。そのように考えるとコンシャスネスと一定の距離を取る彼の姿勢は、そもそも人種差別問題への考えの違いに起因する分断をナチュラルに防いでいるようにも思えるし、日本のアイドル、BABYMETALのTシャツを着用していたり、日本の漫画「犬夜叉」のファンと公言するところも多様なカルチャーへの理解を感じさせもする。枠組みに捉われぬその奔放さこそ、その爆発的な人気の理由であり、デジタル・ネイティブとしてインターネットから多様な文化を受け入れ、SNSを通し、常に見られていることやポリティカル・コネクトレスを無自覚に意識して育った若い世代の“答え”なのかもしれない。

そんな彼は今年のフジロックの初日にホワイト・ステージのトリとしての出演が決定している。ヒップホップが好きな方もロックが好きな方も、興味があれば是非フラッと見に行ってみてはいかがだろうか。彼の張り上げると微かにしゃがれる歌声は、誰も拒まずに軽やかな高揚へと導くだろう。(高久大輝)

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■Post Malone オフィシャル・サイト
http://www.postmalone.com/

Text By Daiki Takaku


Post Malone

Beerbongs & Bentleys

LABEL : UNIVERSAL MUSIC
CAT.No : UICU-1296
RELEASE DATE : 2018.06.27


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