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BEST 8 TRACKS OF THE MONTH – December, 2021

2021年12月のBest TracksはTURN編集部のピックアップのみでお届けいたします!


Claire Rousay「sometimes i feel like i have no friends」

テキサス州サンアントニオを拠点とするエクスペリメンタル系音楽家、クレア・ラウジーが28分もの長尺曲を公開した。彼女が去年発表したアルバム『A Softer Focus』(私の年間ベスト・アルバムの1枚!)の延長線上とも言えるフィールド・レコーディング素材のコラージュを中心に、スポークンワードやシンセ、ピアノやヴァイオリンなどを交えて展開。より持続音を生かしたアンビエント色の強い作風になっていることもあり、“友達がいないと感じる時がある”というタイトルとも相まってコロナ禍の孤独を連想させる。クレアは2月にはモア・イーズとのポップなコラボ作をリリースする予定。今年も快調に活動してくれそうで嬉しい。(岡村詩野)



Ethan P. Flynn「Superstiton」

ギルドホール音楽演劇学校出身の音楽家同士の繋がりでブラック・カントリー・ニュー・ロードやジョックストラップらとも関わりながら、けれどソロとしてはマイペースな印象のイギリスのSSWが、Vegynとの共作とプロデュースで《PLZ Make It Ruins》からリリース。生楽器の弾き語りと揺らぎのある歌、そこに厚みのあるビートを半ば強引に混ぜ合わせてしまうのが、この人の面白いところ。その良さは残しつつ、けれど多めにかかった声へのリヴァーブや耳に優しく触れるようなシンセ、ミニマルなビートが全体をアンビエントなサウンドに仕上げている。おそらくVegynからの提案だろうこのアプローチがバランスよく溶け込んだ1曲。(加藤孔紀)

Kevin Morby「I Hear You Calling」

《Dead Oceans》企画によるビル・フェイ・トリビュート7インチ・シリーズの第二弾はケヴィン・モービー(7インチは第一弾だったスティーヴ・ガンによる「Dust Filled Room」の方と同時に1/14発売)。現在78歳のイギリス出身ベテランSSWであるビルの1971年発表のセカンド『Time Of The Last Persecution』収録のこの曲を、ややアンビエントなニュアンスでカヴァー。カップリングはビル自身によるオリジナルなのでぜひ聴き比べてみてほしいが、「長い間探していたものを再発見したような」というケヴィンによるビルへの賛辞さながらに、柔らかな質感の音の彼方から力強い主張を伴ったフレーズが凛々しく浮かび上がる。(岡村詩野)

LSBOYZ , MIKI「AGITATOR」

東京のアンダーグラウンドから、個性豊かなマイクリレーで注目を集めるクルー、LSBOYZがプロデューサーにMIKIを迎え、7曲入りのミニ・アルバム・サイズで新作をリリース。今回はその中からMIKIに加えGood roughがトラックを制作し、LSBOYZからMeta FlowerとPeedogがラップを乗せたこの曲をチョイス。「ラッパーは教唆者であるか?それとも不景気からなる被害者の群れか?悪党を美化する見世物小屋となるか?懐疑心やフラストレーションとガキの戯言か?」というMeta Flowerのリリックは自問だろうか。いや、これは我々の耳へのアジテーションである。先入観の向こう側へ踏み出せ。故febbの参加した「TRYNA」も必聴です。(高久大輝)

Octavian「Skyhigh」

2020年11月、将来を有望視されたラッパー、オクタヴィアンは元パートナーからDVなどの告発を受け予定していたデビュー・アルバム『Alpha』のリリースをキャンセル。所属していたレーベル《Black Butter Records》には契約を打ち切られた。本楽曲はその告発以来のシングルだ。カニエを思い出してもおかしくないサウンド・プロダクションに、美しく完成度の高いMV。復帰作には申し分ない出来である。だが、個人的にはまだもやもやしているというのが正直なところだ。キャンセル・カルチャーの私刑的な面は否定すべきだと思うが、一方でこれまで権力によって有耶無耶にされてきたことの方が多いのも確かだろう。迷い、悩み、考える日々は変わらずに続く。(高久大輝)

Thanks For Coming 「Hard Drive」

昨年に発表されたアルバム『Structure』が各批評メディアで高評価を得たブルックリンを拠点とするエレクトロ・ポップ・デュオ、ウォーター・フロム・ユア・アイズ。そのメンバーのひとりである、レイチェル・ブラウンが自身のソロ名義、サンクス・フォー・カミングとしてセルフ・プロデュースのもとリリースするフル・アルバム『rachel jr.』からのリード・トラック。チージーでヘナヘナとしたエレクトリック・ギター、力感のないドラム、ノイジーに処理されフリーキーに進むボーカルがごちゃごちゃに絡み合うローファイ・エクスペリメンタルという趣の同曲だが飽きのこなさはそこにあるポップネス故か。ガラクタの山から見つけ出したようなパーツを丁寧につなぎ合わせた構築美に魅了される。(尾野泰幸)



Tyondai Braxton「Dia」

この人の前線復帰は大きい。『Oranged Out EP』(2016年)以来約5年ぶりとなる新曲で、もう1曲「Phonolydian」と同時に《Nonesuch》から公開。この間、ダーティー・プロジェクターズらの作品に関わったり、管弦楽作品『Telekinesis』のスタジオ録音制作に腐心するなど活発に動いていたわけだが、NY郊外で一人で制作したというこの曲では電子音楽にフォーカスさせている。歪ではあるけれど、この人らしい人懐こさが規則的なビートやバウンシーな音像に現れていて、しかも点を無理に線へとつなげるのではなく、全てのコードや音の組み合わせを理解するプロセスのように聴こえるのが面白い。解読のポップへの表象の好例だ。(岡村詩野)

Unknown Mortal Orchestra「SB-09」

とりたててファンという訳でもないのだが、アンノウン・モータル・オーケストラの毎年恒例クリスマス・インスト・トラックに惹かれた。今年で9年目になるそうだが、昨年までのトラックがサイバーパンクを思わせるノイズ~サイケデリック風だったのに対し、今年はうって変わってアンビエントなトラックに。ドローン・サウンドと相まって聴こえてくるのは、少しクランチーに歪んだ抜けのいいギター。環境音や誰かの談笑の声をその間に挿し込みながら、約19分、曲が進むにつれハワイアン、ブルーズ、レゲエ……とバラバラなスタイルのプレイが入れ替わり現れる様子は、アイディアの断片を覗き見るようであり、どこかの誰かの暮らしを小窓からそっと覗き見るような感覚にもなる。肩の力がいい意味で抜けていくトラックだ。(井草七海)


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Text By Shino OkamuraNami IgusaDaiki TakakuKoki KatoYasuyuki Ono

MMM

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